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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
153/187

【83-4話:聖都テポルトリからの使者!】

 その場に突如として現れた魔女王ことエンマ・イラディエル、何を思ったのか俺の背中越し顔をひょこっと出しながら俺に後ろから抱きつきいていた。

「は~い、エンマです~ぅ。皆さんがなんか私に用がありそうだから出てきちゃったわ――で、ラリーっ! 元気してた?」

「お前な~ぁ、昨日の今日で此の登場かい。其れにほら、サギが真っ赤な顔をして睨んでいるぞ」

 サギの『覇気』が今にも惑乱爆発しそうな雰囲気で銀色の苛烈な輝きが臨界点を越そうかというエネルギーを放っていた。

「あっ! やばっ! まって、サギっ! 休戦協定結ばない? ねっ! ほら、今日はラリーに手出さないからっ!」

「だったら~っ! は・な・れ・ろ! ラリーから、エンマっ!」

 怒髪天を衝いたサギが脱兎の如く俺とエンマの間に入り込んでエンマを俺から引き剥がす。

「エンマ~っ! あんたラリーに何をしようとしてたのか覚えていないの、まさかの再登場? どういう神経してんのさ!」

 マギもエンマの前に躙り寄って彼女の露出の高いドレスの胸元に指を突き立てながら思いっ切りなじった。

「マギ~っ、私だってあの時は其れがいいかな~って思っていたので――今は反省してますから」

 軽快に出てきた割にはマギの勢いに押されてるようにその後は萎縮の一方のエンマである。

 魔界のトップと言えども、サギやマギは意に介さない。傍から見れば凄い絵柄だと思った。

 マギに介入されたお陰でサギの怒りは少しは落ち着いてきたように見えた。でもサギの光銀色の『覇気』は色あせること無くサギを包み込んでいた。

「まあまあ、サギっ、ね・ね……落ち着こうよ。いくら私でも此の間合いで『覇気』はキツイから~ぁ、ね・ね!」

 脂汗を額に浮かべながらサギの様子を伺うように上目がちにエンマが引き攣った顔で見ていた。其れを見ていた俺はなんだか少し可笑しくて何となく苦笑いをしてしまった。そんな俺の様子をウギがボソッとこぼすようにサギに話す。

「サギ~ぃ、ラリーが……のぉ」

「んっ?」

 サギがウギの言葉に反応して俺の方を何気に向いたがまとった『覇気』のオーラはそのままなのでその矛先が俺に向くことになる。と、チャンスとばかりにエンマはその場を回避してヴァルの背後に回った。

「あっ! こら、エンマっ! 逃げるな!」

 自分たちの身の丈よりも大柄なヴァルを間に挟んでサギとエンマの追いかけっこが始まった。

「こら~っ、逃げるなって言うの!」

「ハイそうですかって、止まるものですか」

 そう言う遣り取りをしているとサギの『覇気』も少しづつ波が引くようにぎってきた。

「ハ~ァハ~ァ……いい加減に止まってよハ~ァ」

「ハ~ァゥ……止まったら酷い目に遭いそうでハァ――」

 そんな会話も苦しいかのように目にも止まらぬ早さで回り続けていた。

「――わかったから、もう良いからハ~ァ……止まってエンマ」

 と、二人とも息も絶え絶えになりながらもふらふらとヴァルの周りを回って仕舞いにヴァルの背中にバタンと同時に俯せになって倒れ込んだ。

「『もう~っ……ダメッ~ェ、疲れった――わよ』」

 二人とも倒れながら同じ台詞を吐いた。

 唇が触れ合うほどの距離でお互いの顔を突き合わせながらサギが先に手を出してエンマの顔を両手で挟み込んだ。

「さあ、言えっ! エンマっ! あの時ラリーに何をしようとしていたの」

「ハ~ァゥ……ずるくないことサギっ! もういいって言っていたじゃん!」

「其れと是は別っ~ぅ!」

 お互いに唇を突き出しながらの舌戦に持っていった。唇がほとんどくっつきそうになったが、エンマが頬を朱に染めながら目を逸らす。

「サギっ! 手を離せっ! その綺麗な顔で迫られるとこっちも変な気持ちになる~っ」

「えっ! あっ~っごめん」

 エンマの純朴な照れにビックリしたようにパッとサギはエンマの顔を挟んでいた両手を放した。

「……まぁ、(ラリーが惚れるのも解った気がしたわ)いいわ」

 ムクッとエンマがヴァルの背中から起き上がりながらつぶやくように吐いた。

「話すわよ――でも、その前に良いかしら」

 そう言ってエンマ・イラディエル魔女王はロミルダ・ヴェルトマン嬢の前にすくっ~と立ち上がった。

「ロミって言っていたわね、あなた――違った?」

「はい、そうですが魔女王様……私に何か?」

 いきなりエンマが話しかけてきたのでビックリしたようにロミルダ嬢の顔がひくついていた。

「……あなた――嘘が上手ねっ!」

「えっ! 何を仰っているのか解りませんが」

 目を見開きながらロミがエンマに気丈に答える。其れに構わずエンマは話しを続けていく。

「此処にいる女性は皆、ラリーに何かしらのものを感じて惚れているのにあなたはそうでは無いわよね。まあ、出会ったばかりと言う事を差し引いたとしても、女なら男の優しさだけで無く無類の強さやとてつもない権力――そういうものにそれとなく惹かれていくものなのにね、それならつき合う時間は関係無いでしょう――と言うことはそれ以上のものを今のあなたは手にしているのと言う事かしら~ん?」

「そっ、そんな……それは男性への好みの問題ですか? 私がラリー様をどう思おうと――魔女王様には関係が無いことでは」

 ロミがそう言い逃れようとしていたが。

「そうかしら――じゃあ最後に……あなたの身体からは大公と同じ香りがするの――って言うか逆かな? 大公に出会った時にあなたの移り香が残っていたわ――あなた、大公の何かしら? 愛人? おめかけさん? それとも隠し子?」

 その言葉にロミルダ・ヴェルトマン嬢の顔色から一気に血の気が引いていったのがわかった。

次回【83-5話:聖都テポルトリからの使者!】を掲載いたします。

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