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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【13-2話改稿:サギさんと初めて話しました!】

前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。

 メインディッシュの鴨肉の燻製の載った皿が三人の前にそれぞれ出される、それを小ぶりのナイフで小分けに切り分けながらフォークにさして口に運ぶ、たった其れだけの動きでもサギーナ嬢の優雅な振る舞いは際だって見えた。

「美味しい料理ですね、お誘い頂きありがとうございます。イカルガ伯爵、ラリー様」

 ラリーはそんなサギーナの表情を眺めながら、本当に美味しそうに食べるだなと思っていたようだった。

「ラリー様、失礼ながらお尋ねしてもよろしいですか?――今は何をされているのでしょうか?」

 ――んっ! 今ってめし食ってるよっ!


 と、思わずのり突っ込みをしたくなる心持ちを彼は押さえて、まさにちょうど鴨肉を口いっぱいに頬張ったところでしゃべれなかったため、彼女の問いに対する許可がわりに軽く相づちをうって答える。それでも、なかなか鴨肉を飲み込み切れなかったのを横でみていて哀れに思ったのかイカルガ伯爵が代わりに答えてくれた。

「ラリー君は、Sランクの冒険者なのだよ、今回は聖都本部のギルド経由で護衛の招集に応えてくれたのだ」

「そうなのですか? Sランク冒険者様とお会いできるなんて初めてですわ、それでは、お若そうに見えられますがそれなりのお歳になられておられるのですね」

 ラリーはやっとのことで鴨肉を飲み込みワインで口を潤してから、サギーナの問いに答えることが出来た。

「ご希望に添えない様で申し訳ありませんが、若干、十七歳です。冒険者になったのは十五の時ですから……約二年目です、イカルガさんとお会いしたのも一年前くらいですよね?」

「おう、そうであったのラリー君、あの時は助かったよ」

「えっ、十七歳なんですか? 私と同い年じゃないですか……! 私はまだCランクです…十年かかって……それをたった二年でSランクってどうやったらそうなれるんですか?」

 サギーナの目が完全に点になって『嘘でしょ』と言いたげな疑いのまなこになっていた。

 まあ確かに普通はFランクから入って、ギルドの依頼を順々にこなして階級を上げていくのだが。ランクに合わせて依頼難度も上がり成功報酬も上がる。しかし失敗時の罰金・罰則レベルも上がるので、そう簡単にはランク上昇は見込めないのが通例である。

「サギさんも、Cランクと言われましたが、先ほど見せて頂いたリング上での魔力闘気はなかなかのものとお見受けいたしましたが」

「お褒め頂きありがとうございます。でも、まだ闘気レベルしか出せませんもの……覇気レベルになるにはまだまだ、修行が足りないところですわ」

 サギーナは謙遜するが淑女魔術師で魔力覇気なんてレベルはまずいない。ランクCっていったが、これもギルドの依頼項目を厳選し過ぎているだけなのではとラリーは考えていた。ギルドの依頼を拒むと、なかなか上位には認定されにくくなる暗黙のルールが確かに存在する。

 冒険者のレベルランクも最高をSとしてAからFまでギルドが認定をする。まあ最上位にSSランクなる英雄レベルの番外編があるが、これはギルド認定外ランクで国家元首認定ランクとなっていた。なのでそんな御仁には、まずお目に掛かることはない、其れに国が公開するのを拒む風習があった。

 しかし魔術師の才能はその発生する魔力レベルの『気』で決まると言って良い。普通は九割がた『黒気』レベルであるが、その上の残り九割で『白気』があり、その上の残り九割で『闘気』が存在する。その上が『覇気』で言うなれば千人に一人の割合しかない。言い換えれば各ランクの一割しか上位ランクには存在しないのだった。また伝説的な存在でその覇気の中でも百万人に一人と言われる『覇王気』なるものが存在するらしいと言われている。

 視る人が見ればオーラの色で解る、黒気、白気はまさしくその色を示し、闘気は赤、覇気は銀色、覇王気は黄金色に視える。ラリーにはそれらが良く視えていた。

「貴女の闘気はまさしく、真紅のオーラでしたから闘気の中でも最も強きオーラではないですか」

「あら、そう視えました? そう言って頂いたのは初めてですわ!」

「ラリー君の魔術師匠はあの、ニネット・M・フェレーリ候なのですよ。」 

「えっ! まさか、あの英雄ニネット候様? なんですか?」

 ――サギがなんだか俺の事をじ~っと見つめてる、その宝石の様な碧眼へきがんのお目々がキラキラ光っているんですが……どうされました? 英雄ニネット候っていいますが、俺からすれば、只の口うるさい爺さんでしかないんですけど! 


 と心の中でひとり毒づいたラリーであった。そんな彼の気持ちはつゆ知らず伯爵がそのまま説明を続ける。

「そんなラリー君だから本当は公国の重鎮として近衛師団にお迎えしたいところなのだが、何せ各国が指触を延ばしているのでギルド連合からは非任官指定協定書が発行されているのだよ、だから冒険者で有る限りどの国にも属せないきまりなのだ」

 ――いやいやイカルガ伯爵さん、あまりバラされると……ほら、貴女の眼の色がまた、変わってきましたよ……まったく! 帰りは宮廷宿舎まで送る役なんだから、俺が! ……個人情報は秘密にお願いしますよ!


 まあイカルガ伯爵の褒め言葉にはラリーも苦笑いするしか無かったが、彼を取り巻く政治的立場は若いながらも複雑で合った事は否めない。


 美味しかったメインディッシュを三人とも綺麗にたいらげ食後の紅茶をたしなみながら、これからの予定の摺り合わせをおこなっていた。

「ラリー君、申し訳ないが、先ほどお願いしたように、サギーナ嬢を送ってもらえるかな? サギーナ嬢はれでよろしいかね?」

 さすが聖騎士たるイカルガ伯爵、最終確認は怠りはしない。

「私はラリーさんが宜しければ、喜んでお願いしたいですけど」

 一方ラリーの方には断る理由は全く無かったようだ、むしろ率先して立候補する勢いだった。

「もちろん、こちらこそ是非ともお願いしたいぐらいですから」

「それじゃラリー君、私はこれでおいとまするからサギーナ嬢のことくれぐれもよろしくお願いするよ」

 イカルガ伯爵は含みのある笑みを浮かべながら、席を立って下の階へと降りていった。無論、此処ここの夕食の支払いはイカルガ伯爵が実にスマートに済ませていたのは言うまでも無かった。

 レストランの出口の方に向かうイカルガ伯爵が軽く右手を後ろ手に挙げて挨拶をしてくる、実に絵になる姿だった。そんな立ち去る後ろ姿にラリー達ふたりは揃って頭を下げていた。

 ――伯爵……ゴチになります!


 こうべを垂れながらラリーは心の中でそっと呟いていた。


 イカルガ伯爵が颯爽と立ち去った後、残ったふたりは揃ってその場を後にした。

「ラリーさん、其れではよろしくお願いします」

「サギさん、此方こちらこそよろしく!」

 美味しい夕食のお陰で機嫌良くふたりは店を後にして宮廷宿舎までの帰路についた。この拳闘場付きレストランから宮廷宿舎まではさほど距離は無い。二人は並んで月明かりに照らされた町並みを眺めながら、ゆっくりと歩いて行くことにした。

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