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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
145/187

【82-10話:聖都テポルトリへの帰還!】

 朝食を終えて食堂から戻ってきた俺達はひとまず中庭に集まっていた。リアーナお嬢様の言葉によると数日後に此処へ聖都からラリー達を迎えに使者が来ることになっている。そうして今日、俺達の目の前にエンマ・イラディエル魔女王が現れたわけだが。

「聖都テポルトリからの使者って言う事は何らかの外力が働いたって事だわよね。しかもエンマはベッレルモ公国での大きな魔力の確認にとも言ってたし、其れってエンマが公国に何らかの取引を持ちかけてきたとも考えられないかしら?」

 とサギが自分の考えを話し出してきた。確かにサギの予想は以前マギ達が俺に言ったちまたの噂って言う内容にも合致しているし、信憑性はあるかも知れないね、そう俺も思った。

「でも、それならどうしてエンマは直接、此処に来たのかしら? しかもラリーを転生魔法なんかで連れ去ろうとまでしていたし――単に連れて行くにしても少し焦りすぎと思うし」

 サギの意見に対してマギは先程まで皆で悩んでいた疑問を繰り返してきた。

「そう其処そこなんじゃがのぅ、転生させる理由が解らない事には次の一手にわらわ達の対応も踏み出せないと思うのじゃが」

「そうよねウギの言う通りだわ」

 そうサギもウギの久しぶりのまともな発言にうなずくように首肯しゅこうしていた。場所を変えての話し合いだったがやはりエンマの意図には俺達の想像が辿り着かないようだ。

「ラリーはやっぱりエンマの思惑に心当たり無いのかしら?」

 サギが俺に話しを振ってきたが其処そこはそれ、さっきの出会いが自分にとっても想定外で何も思いつかない。だいたい幼い頃の思い出しか無い相手にいきなり今の自分を必要としている理由が解るはずも無かった。

「さっきも言ったが、全く予想も出来ない事だよ。エンマの考えは」

 そうサギに俺は言い返していた。結局、此の時点で何ら進展する考えには到底及ばず、取り敢えず各自それぞれの部屋に戻って一息付くことにしてその場は解散となった。


 俺は自分の部屋に戻ってベットに身体投げ出すように横たわった。天井を見つめながらさっきまでの事を思いだしていた。笑顔のエンマと最後に俺にキスをしてこようとしていた時のエンマ。どちらも同じ彼女であるが何か違和感があった。其れがなんなのか此の時点では俺にはわからなかった。

 その時、俺の部屋の扉を叩く音で現実に戻された。

「ラリーいるの? わたし」

 扉の向こうからサギの声が聞こえてきた。

「ああ、鍵は開いているよ」

 その答えに応じて扉を開けてサギが入ってきた。

「ねえ、ラリーひとりで部屋にいるなんてエンマにどうぞいらっしゃいって言っているようなものじゃ無い――リアーナお嬢様にさっきの件を話しして大部屋をひとつ空けて貰ったわ、其処に移動しましょう」

 そう言うが早いか俺の荷物をまとめ始めていた。そう言う行動力は素直に凄いな~ぁと感心していた。と、はたと気が付いたが……。

「待て待てサギっ! 大部屋に一緒って誰とだ?」

「ん~っね、私とラリーだけって言うと他のふたりに悪いでしょう、そうかと言って他の誰かとラリーが一緒って言うのも私が嫉妬するから、結局皆で話し合った結果――チームラリー全員よ!」

「は~ぁ? それってさ男の俺が女性陣と一部屋で暮らすって事か? まずいだろう、さすがに其れは」

「そうね、最大の懸案はお嬢様も一緒になりたいって言っていた事ね――さすがに其れは相手がエンマ・イラディエル魔女王だからリアーナお嬢様の身の安全に保証は出来ないって言ってメイラーさんも含め反対したので何とか収まったわよ」

 いやいやサギさんそう言うことでは無いだろう――うら若き乙女達の花園の中で数日とは言え俺の身が持たないと思うんだが……。

「あっ、ラリーは日替わりで三人のうち誰かと一緒に寝てね――ベットが三つしか無いのよね、まあ其れもラリーの事をエンマから守るって考えるとその方が都合が良かったしね。ちなみに今日はわたしよ!」

 え~ぇっ! と、俺の叫びにも誰ひとり気にするものは居そうも無い事は――言うまでも無い。

 サギの荷物まとめはもともと俺の持っている物も特に多くは無いので直ぐに終わっていた。

「さっ! ラリー部屋を移動するわよ、ほらっぐずぐずして無いの! 男の子でしょ! 腹をくくりなさいよ」

 サギにそうかされて俺は惚けたままサギの後に続いて部屋を出た。

 皆が待っているらしい大部屋は今の建屋から少し離れていた。ちょうど中庭を挟んで反対側の棟にその部屋は並んでいた、その内のひとつを借りることになったらしい。

 新しく割り当てられた部屋の前に俺とサギが着いた、サギが部屋の扉を開けて中に案内してくれたがはたして其処にはウギとマギとヴァルが既に自分たちの荷物を運び込んでいて部屋の中央に設けられたテーブルセットに座ってくつろいでいた。

「サギっ! 遅かったわね、ラリーとふたりでイチャイチャしていたのはわかっているけど――順番ね」

 マギが真顔でそんな事を言ってきた。その傍でウギも縦に首を振りながら俺達を凝視している。

「そんな暇なんか無かったわよ、失礼ね! 躊躇ちゅうちょしてたラリーを強引に連れてきたんだから、んっもう! あなた達に其れが出来て?」

 その言葉に二人が無言で頭を横にブルブルと振っていた。

 強引にサギに連れてこられたが確かに何処にでも現れることが可能なエンマのあの魔力を目の当たりにすると彼女達に見守られているのは安心出来る環境であるとは思ったが……。

「俺は身が持つのか?」

 賑やかにガールズトークに花を咲かしている彼女等を見ながら、ひとり静かにボソッとうなっていた。

次回【82-11話:聖都テポルトリへの帰還!】を掲載いたします。


※今まで定期的に掲載していましたが、そろそろ不定期掲載に移行する状況に陥ってきました。

出先がネット環境の思わしくないところも有る為ご了承下さい。m(_ _)m

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