【82-9話:聖都テポルトリへの帰還!】
エンマ・イラディエル魔女王が立ち去った後は三人に囲まれて俺は質問攻めに遭っていた。
「ラリーっ! あのエンマがなんでラリーの所に突然来たのかしら?」
「妾の話しに何かおかしなところがあったのかのぅ? マギの愛人の後は何と言えばよいのじゃ?」
「エンマはあなたに呪術を掛けようとしていたわ、其れがわからなかったの? ラリーっ?」
三人に同時に詰問されて俺も閉口していた。
「あ~ぁ、もう三人一遍に質問するなよ~ぉ――俺だってわからんしぃ」
取り敢えず三人の質問に共通する模範解答を吐露しておく。その上で俺自身確認しておきたいことの最優先はマギの質問と共通だった。
「マギはエンマの呪術がわかったのか? あれはどういう『呪』が入っていた? 唇が触れそうな所までは微かに記憶にあるんだがその先の――覚えていないんだ」
「あら、そうしたら接吻の前に既に序術に入っていたのかもね――危なかったわよそれじゃ、さすが魔女王だわね」
しらっとエンマのことを持ち上げているところは魔界の仕来りというところだろうか。そんなマギにサギが食いついてくる。
「エンマの事を褒めてどうするのよ、まあマギの機転で今回は事なきを得たとしても予断を許さない状況であることは確かなんでしょう」
「そうねサギの言う通りだわ。ラリーがそういう状態と言う事は――寝込みを襲われたら一発ね!」
なんか軽く言われているような気がするが――俺!
確かに寝床に転位されてそのまま死の接吻て言うのは洒落にならんし。そうは言ってもさっきのエンマの呪術には気が付かなかったのは確かだった。
「さてとどうするかな?」
ひとまず朝食を片付けてから考えますか――そう思うと何かやけに腹が空いてきたので残りの朝食を一気にたいらげ始めた。
「兎に角、なんでエンマ魔女王が此処に来たのかしら? それはラリーのことが目的だと思うけど何で転生させる必要があるの?」
サギが尤もな質問を訊いてきた。其れに応えたのは勿論マギだった。
「エンマがラリーを連れて行きたいことは確かよ。ただ確かに転生させる必要はわからないわね」
「そうね、転位が出来るなら連れて行くことは出来るはずだものね――なぜ転生なのかしら? と言うよりもマギっ? 本当に転生魔法だったの?」
「たぶん確かだと思う。まあ、しっかり発動はしていないからもしかしたら別の魔法だった可能性は否定は出来ないわね」
サギとマギが二人でエンマの呪術について真剣に考えていた。
「ラリーの唇に残っている残留魔力でも見てみたらどうじゃのぅ」
ウギがぽろっと今日尤もな発言をしてきた。
「そうね、其れはいいかも――ラリーいいかしら?」
そう言いながらマギが俺の唇にそっと手を当てて何やら魔気を照らし合わせてきた。
「んっ? 食べながらでも良いのか?」
俺は口に詰め込んだ朝食をモグモグとしながらもマギに唇をもって行かれている。
「まあ、あんまり見た目は良くないけど仕方ないでしょう」
小さくも溜息を付きながらマギが投げやりにそう言ってきた。マギの手が俺の唇に触れたところで簡単に観測は終わったようだった。
「ん~、正確にはわかりにくいわね、ただし何らかの転生に近い魔法と言えるわ、やはり」
マギの見立ては予想通りだったようだ。そうするとやはり何故に転生をと言うことが皆の疑問になってくる。
「やっぱり是は本人に訊くのが一番だな」
脳天気に俺が喋るとウギもサギも半眼で俺の事を睨み付けながら怒鳴ってきた。
「『訊く相手がいたら聞くわよ――もういないからでしょ、なに言ってるのラリーっ!』」
二人の言葉が重なる。
そう言ってもやっぱり本人に聞いてみないと最後まではわからないだろうに。そう思いつつもその言葉はいったん胸に仕舞い込んでおいた。ただ、エンマには遠からずまた会うような気がしていたのは俺だけでは無かったはずだ。
次回【82-10話:聖都テポルトリへの帰還!】を掲載いたします。