【13-1話改稿:サギさんと初めて話しました!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
かれこれ、それなりに時間が過ぎ拳闘会場はお開きになる時間となっていた。まあ拳闘見物と酒場とが合わさった場所なので人の往来はまだまだあるがリングの上は閑散となっていた。
イカルガ伯爵は、ひとまず目的のひとつは達成したのでお連れの彼女を迎えに行っていた。リング上でプラカードを持ち上げて廻っていた時の彼女の姿を想い出せば、それはそれは膝上極限までに短いスカートと身体にピッタリと張り付き、しかもおへそが丸見えのこれも短めの上着を着ていてた。どう見ても身体のラインがそのまま現れるセクシーこの上ないファッションであった事は確かだ。
しばしラリーが見とれていると彼の視線に気づいたのか軽くウインクなんぞ送ってきていたが。まあ彼がイカルガ伯爵と一緒にいたことから、知り合いと思ってくれたものとラリーも深くは考えていないようだった。
そんな事をツラツラ想い出しながらラリーが手持ちぶさたに待っていると、暫くしてイカルガ伯爵が彼女を連れて彼のもとへと戻ってきた。
「ラリー君、お待たせした。紹介しよう、宮廷魔術師のサギーナ・ノーリ嬢だ」
イカルガ伯爵の紹介に合わせて、彼女が微笑みながらこちらに近づいて軽く会釈をする。先ほどのセクシー路線の恰好から既に、薄手のロングローブ風の服装の着替えて清楚な感じの雰囲気に成り代わっていた。
「お初にお目にかかります、サギーナ・ノーリと申します。以後、お見知りおきください……えっっと!」
――あっと先に自己紹介されてしまった、普通は男性の方が先にいわなければならないところだよね、失敗したかな!
彼女に見惚れ過ぎて先に彼からするべき挨拶のタイミングをラリーは逸していた。
「ラリー・M・ウッドと申します。ラリーと呼んでください、こちらこそよろしく!」
「ラリーさんですね!」
彼女はにこやかな微笑みを浮かべながらも、碧眼の瞳を艶めかしく輝やかせて彼をじっと見つめている。
「……俺の顔に何かついておりますか? ……あっと、失礼ながらサギさんとお呼びしてもよろしいですか?」
「あっ、いえ、すみません。サギと呼び捨てにして頂いてよろしいですよ」
「いえいえ、初対面でいきなり、淑女の貴女を呼び捨てになんぞ出来ませんから……」
「うほん! ラリー君もサギもそろそろ、挨拶はよろしいかな!」
イカルガ伯爵がまったりとした雰囲気になりつつある二人の間に割り込んで来た。まあ、このままいっても、なんかほんわかしそうで丁度いい頃合いの助け船になったとラリーも安堵をした思う。
まだ時間には余裕があるからラリーは食事でもして帰ろうかと思っていた所にイカルガ伯爵からお誘いがあった。
「ラリー君にちょっとしたお願いが有るのだが、いいかな?」
「……んっ! 特に問題ないですよイカルガさん、何でしょうか?」
「いきなりで申し訳ないのだが、彼女……サギーナ嬢を宮廷宿舎まで送っていってもらえないだろうか? この後、私は此処で衛兵募集に応募してきた人たちの面接をして行く予定なのだが。そこまで彼女にお付き合いして貰うわけにはいかなのでな。君に逢ったことが実に渡りに舟だったのだよ、引き受けて頂けるかな?」
ちょっとラリーにはドギマギする様なお願いだと思ったがこの後、彼も宮廷宿舎に帰る予定なので一緒の方向だし別段断る要素も無いと快諾することにした。
「いいですよ、このようなお綺麗な淑女の護衛であれば喜んでお引き受けいたします」
「あらっ、ラリーさんはお口が上手なお方なのですね!」
「いえいえ、本音でしか生きておりませんから……」
まあ彼の性格からすれば確実にお世辞でも無く本当に本音だろう。しかし、いきなり絶世の美女の護衛とは、今日は附いているのかとしばし感慨にラリーは耽っていた。
「でもイカルガさん送迎の前に腹拵えでも……夕食はご一緒できますか?」
「おう、そうであった! 夕食はみんなまだであったの、では一緒に食事をしてからか私の面接作業も!」
イカルガ伯爵はそう言いながら側に控えていた部下風な人にその後の仕事の割り振りを相談していた。
一方ラリーの方はと、サギーナ嬢を食事の出来る部屋にエスコートすべくお店の従業員をつかまえて夕食の予約を三人分依頼していた。
ここの拳闘場は食事を取るためのレストランを二階に備えていて貴族関係の人が良く利用する場所でもある。先ほど予約をお願いした従業員が間もなく戻ってきて部屋へ案内をしてくれることとなった。
サギーナ嬢をエスコートしながら三人揃って二階席へ上がっていった。
レストランの円卓に右回りでラリーとサギーナ嬢とイカルガ伯爵が座って、コース料理に舌鼓をうつこととなった。