【12-2話改稿:サギさんと出会いの事件です!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
「あっと、イカルガさん、こんなところで逢うなんて奇遇ですね」
ビールジョッキを片手に、ラリーが彼こと聖剣士のイカルガ・ピネダ伯爵に軽く挨拶をする。
「おや、ラリー君、君こそ珍しい所にいるね、良く来るのかね」
イカルガ伯爵の様相は近衛兵の制服姿、聖騎士の紋章が入ったチョッキと青い鎧の肩当てを羽織って腰には帯剣と、いかにもただいま仕事の真っ最中と言う出で立ちだった。制服姿でジョッキーを片手に拳闘観戦とはなかなか強者だとラリーは心の奥で思ってはいたのだがそれはそれ……。
「自分はここは初めてですが……ちょっと早め帰都できたので……時間つぶしがてら寄ってみました」
「そうか、私は此処の店にちょっと用事があってね、あれ、ちょうどリングの中で今、プラカードを持って立っている娘がいるだろう。あの娘の護衛兼、衛兵募集の仕事だよ」
そう言われてラリーはイカルガ伯爵の指さす方向の娘に目に向けた。
金髪に碧眼の綺麗な娘だった。歳の頃は十六~七歳くらいか。ラリーとそんな変わらないように思える。そんな彼女の持ち上げているプラカードには確かに【公国衛兵募集中……】なる書き込みが大きく書かれていた。それを試合のラウンドの合間にリングの上で持ち歩くのが彼女の仕事のようだった。しかし此処にいる人達のいったいどれだけが字を読めるんだろうか、とラリーは小首を傾げながらボソッと呟いていた、いつの時代も識字率の高さがその国の文化水準を物語っていた。まあ伯爵にはそんな事を面と向かって言えないだろうが……。
「彼女は本当は宮廷魔術師なんだが、何せ人手不足でね、君もよくご存じの通り……まあ、容姿が良い娘だろ、注目されるこの仕事にはピッタリだからちょっと手伝ってもらっているんだ。衛兵募集としてはお似合いの場所だろ。ただ、あまりに目立ち過ぎる娘だから完全護衛がないと危ない所でもあるからね! まあ、本当は護衛なんぞいらない程に魔術力は強い娘だけど……」
「確かに、彼女の魔力闘気は強いですね!」
碧眼の魔術師。これは魔術純血種系統の娘だ。並の強さではないであろう事が良く分かった。
通常、魔力を担う魔術はその血縁が魔力量のレベルを左右する。血縁を見分ける方法が眼の色と言われている。上位から言うと金眼、銀眼、碧眼、琥珀眼……。金眼、銀眼は魔族だけだから、人間で言えば碧眼は最上位クラスとなる。特殊なのはオッドアイの様に左右の色が違う場合は貴重な魔術の得て者だったりすることがある。
「ラリー君は見ただけで彼女の魔力レベルが解るかね、ほっほう、流石だね、やはり公国の近衛師団に入らないか?」
「イカルガさん、その話は勘弁してください。申し訳ありませんが……」
「おっと、そうであったな、これは私としたことが、この話は聞かなかったことにしておいてくれたまえ」
そんなこんなでイカルガ伯爵と話こんでいるところに、案の定あの海坊主が現れた。
「このガキっ! こんな所に逃げ込んでいやがったか!」
海坊主の奴はラリーを見つけると、ドカドカっと周りの人を押しのけて、彼の正面の方へ回り込んでくる、そうなると彼と面と向かっているイカルガ伯爵を真後ろから襲うような形となるわけだ。無闇に聖騎士の真後ろを取るとどうなるか海坊主は知らなかったようだ。
シャキーン――!! イカルガ伯爵は殺気に反応して振り向きざまに抜刀する。
「何者じゃ! この私を聖騎士イカルガと知っての狼藉かぁ!!」
海坊主の奴は鼻先に剣先を突きつけられて、その場で尻餅をつきながら青ざめた顔で、イカルガ伯爵に懇願することとなった。
「……うぇっ! 聖騎士様!」
「…申し訳ありません、人違いでした、どうかご勘弁ください」
地面に鼻面を擦らんかとばかりに土下座して、海坊主は震えながら謝る。
「これ以上の狼藉はこの場で即刻、首を撥ねるぞ! 私の気が変わらないうちに早く立ち去れ! 無礼者!」
海坊主の奴は血の気の抜けた青白い顔のまま、這々の体で逃げ帰っていった。まあ、命があっただけでも良かったと思って欲しい。
「ラリー君、済まない、見苦しいところを見せてしまった」
「いえいえ、イカルガさんそんな貴殿が謝ることではないです」
まあこの要因は彼が招いたものだったが……そんな正直な事は言えはしない。
「まあ、お詫びに一杯奢ろう、もう少し君には付き合って欲しい」
イカルガ伯爵にそうお願いされては無碍にも断れず、拳闘の試合を二人で見ながらもう少し談笑することとした。
(すみません、作者名をちょっといじりました。二→弐へ <(_ _)>)