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英雄たちの回廊(Ⅱ)  作者: 松本裕弐
【元勇者と仲間達の回想録】
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【80-2話:ウギの太刀?振る舞い修行!】

 抱き締めた手を緩めてサギを解放する、何だかそのままでいたい気もしていたが――是から夜になってウギとの修行の時に先に聞いておきたいことをサギに問うた。

「なあサギ、ウギの小太刀こたちの魔力制御についてどういう風に訓練するつもりなんだ?」

「――ウギばっかり、ラリーの頭の中はウギの事で一杯な~んだ」

 あっ、そう言う意味で聞いたわけでは無いんだがサギの機嫌が一気に悪くなっていったのがわかった。

「ううん、ごめんね。こんな事を言うつもりは無かったのよ――自分で自分が嫌になった来たわ、ふ~ぅ」

 大きい溜息をついてサギがうつむき加減で自嘲混じりに薄笑いをして俺の方に向き直ってきた。その大きな瞳にはうっすらと涙が滲んでいたように見えた。

「私ってバカよね。ラリーの事が好きなのは三人でそれぞれに認め合ってきているはずなのにね、私だけが何か嫉妬深くて嫌になっちゃうわ」

 そう言いながらサギは瞳を拭っていた。

 俺はそんなサギをただ見守っているしか無かった。

「サギ……俺っ――は」

「ラリーっ! 何も言わないでいいの――わかっているのよ是でも頭の中ではね――でもね、心の何処かでラリーが私だけを見ていてくれたらな~ぁ――ってささやくもうひとりの私がいるの、ウギもマギも私は大好きだし皆で一緒にいることが何より大切な事だと思っているのにね」

 そう言いながらもサギはにこやかに笑おうとしている顔がなんだか無性に切なく見えて心の奥に引っかかるものを俺は感じていた。

 俺の事をこんなにも思ってくれているサギに俺は何を与えてあげることが出来るんだろう? そう思うとサギの手を再び握り締めて抱き締めようとしていたが、其れをサギはスルリとかわすと数歩、俺から距離を取った。

「ごめんね、こんな気持ちのままではラリーと相対あいたいしている価値は今の私には無いわ――夜に皆で合う時まで直しておくから――ラリー御免なさい」

 そう言いながらサギは身を翻すと振り返らずにその場から駆け去って行った。其処にはただ呆然としている俺が立ちすくんでいた。


 夜になってウギが俺の部屋に呼びに来た。

「ラリー、これっ! 太刀たちなのじゃ『真徹まてつ』じゃぞ、どうじゃ!」

 満面の笑みで手に取った太刀を俺の目の前に突きつけてそう言い放つウギが其処に居た。

 しかし、『刀剣神楽とうけんかぐら』の刀匠の仕事の速さとその出来映えには舌を巻いた。小太刀こたちの細部にわたる造りも素晴らしかったが、この太刀たちは其れに更に繊細さを融合させた出来映えだった。まさに職人技の集大成とでも言える出来であった。ウギが太刀を手に浮かれているのも仕方の無いことと思えた。

「凄い剣だな、是は!」

「そうであろう、ラリーもそう思うじゃろう、うふふふっ!」

 頬に太刀と小太刀を擦りつけんばかりにウギは二振りの刀を抱き締めていた。

「ところでウギ、その太刀への呪術の儀式はマギに頼んだのか?」

「それなら、速攻でお願いしたのじゃ――でのぅ、そっちはサギに立ち会って貰って既に終わったのじゃぞ――あっ! ラリーも見たかったのかのぉ。其れはすまなんだ我を忘れて先走ってしまったかのぅ、すまん」

 そう言いながらウギが頭を下げてきた。

「あっ、そうでは無いよ。終わったなら其れでいいが――その後マギはどうした?」

「マギなら小太刀こたち時と同じで直ぐにそのまま自分の部屋で寝てしもうたぞ、わらわとサギはそのままもどってきたのじゃ――あっ、そう言えばじゃのサギが心配してマギに回復魔術をしようとしたらその必要は無いってマギが言ってたのじゃぞ、単なる魔力不足状態だって。でのぅ、ラリーに後で頼むからだってすっごい気持ちいいのをって――何のことじゃ? 其れって? 」

 あ~ぁ、やっぱりそうか。此の儀式はマギにとっては結構魔力を消費するらしい。後でまた魔力注入をねだられそうだな――でだその話しをそれもサギにそうわざとく言ったのか! マギらしいもとい、紛らわしいとはこの事だよそう思って俺は掌を額に当てて天を仰いだ。

「サギは其れを聞いてどうだった?」

「――んっ? サギの事が何で気になるのじゃ? まあ良いがのぅ……ん~、そうそうサギは其れを聞いてその後――何も喋らんかったのじゃよ、何か酷く機嫌が悪そうだったぞ――ラリーが何かしたのか?」

 あちゃ~ぁ、サギがそうなったか――後が怖そうだな。しかし、いや~ウギの天然さには救われるわ。

「其れは其れでウギっ! ところで俺を呼びに来たのか?」

「おおっ! そうじゃったぞ、皆仕度がすんだから正面門で待っておるぞ、わらわ達も急ごうぞのぅ」

 そう言うとウギは俺の手を取って引っ張っていこうとする。

「ウギっ! わかったからそうかして引っ張らんでも行くよ」

「じれったいのじゃ――わらわは先に行くぞ」

 そう言い残してウギは部屋から駆けだしていった。腰には二振りの刀を結わえて其れが妙に度にいっていたのは後で気が付いた。

 俺の方はと言えば、是から始まるウギの刀への魔力制御修行について姫御前の三人三葉の立ち振る舞いの暗雲立ちこめる様相にちょっと気が滅入ってきていた。

次回【80-3話:ウギの太刀?振る舞い修行!】を掲載いたします。

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