【77-1話:マギの小太刀への呪術!】
ひとまず二人してマギのところに行くことにした。ウギの手に持っている小太刀の事での相談にだ。
マギの部屋の前でウギが扉を軽くノックして中に声を掛けた。
「ウギであるぞ、ラリーも一緒なのだが……這入っても良いかのぅ?」
「……どうぞ~ぉ」
ひと呼吸遅れて部屋の中からマギの声が返ってくる。
ウギが扉を開けて中に這入った、俺もその後に続く。その時マギは部屋の中でちょうど椅子に腰掛けてお茶を楽しんでいたところだった。
「あら~っ、二人して気難しい顔をして這入ってきたわね」
マギは口に運んでいた茶碗をテーブルの上に置きながらそう言ってきた。気難しい顔だって、俺達の顔がそんな風に見えるのか?
茶碗を置いてマギは俺達の方に向き直りながらスッと立ち上がると部屋の隅の茶器の方に向かいながら訊ねてきた。
「二人ともお茶でいいわよね」
そう言いって、マギはお茶を入れた器を二つお盆に載せて戻ってくる。
「あら、二人とも何を突っ立っているのかしら――さあ椅子に座ったら?」
マギに促されて俺とウギはマギが座っていた場所の両隣に座った。マギがそのテーブルの上に新しく入れたお茶を置いて元の席に座った。
「ふたりして私を訪ねてくるなんて珍しいわよね、何かしらワクワクしちゃうわ」
マギが柔やかに笑いかけながらそう話し出してきた。
其れに応じてウギが早速口を開く。
「マギに教えて貰いたい事があって訊ねたのじゃ、時間取って申し訳ないぞのぅ、でも妾が聞けるのはお主しかおらんと思うてのぉ、たのむ!」
そう言いながらウギは頭を下げてマギに頼んだ――て、何を頼むのかまだ言っていないぞ、順序が違うだろうが? ウギっん。
そう思ったが此処はまず二人のやり取りに任せる事にしていたので口を挟むのはやめておいたよ。案の定マギは疑問符を頭の上に一杯載せているような顔をして小首を傾げながらウギを見ていた。
「まあ、何だかわからないけどウギの頼みを断る訳が無いじゃ無い――水くさいわね~ぇ、良いわよ教えて上げるわ」
えっ、何の質問か聞かずに良いのか? 即決で了承して、マギさん? 俺は心の中で思わず叫んでいたあえて声には出さなかった……が。
「あら、ラリー酷いわね。私がそんな意地悪な女に見えて?」
「あっ、マギっ――いま俺の心を読んだなっ」
「だってラリーったらウギの事を心配しすぎて自分の心に鍵をかけ忘れているでしょう。だから気持ちがダダ漏れだわ~ぁん――気をつけなさいね」
マギがそんな事を言って俺に忠告してきた。以後、マギの前では気を付けようとその場で肝に銘じた。
「まあ、そんな事はどうでも良いから、ウギの質問ね? で、何かな?」
そう言ってウギに話しを振るとウギは大事に抱えていた小太刀を鞘ごとテーブルの上に置いて相談を始めた。
「此に魔力を――妾の『気』を入れ込む方法を教えて欲しいのじゃ。この刀は今さっき妾の為に大厄災魔獣の骨から作って貰った物なのじゃ」
そう言いながらウギはマギの目の前にその小太刀をゆっくりと押し出した。
マギは目の前に押し出されたその小太刀をジッと見つめていた。そうしておもむろに小太刀を手にとって鞘から抜き出して目の前にかざしてみる。
「大厄災魔獣の骨から剣を造るって言うのは――ラリーのアイデアね」
「そうじゃ、ラリーが妾に教えて賜うたことじゃ、其れがどうかしたのかのぅ」
「ううん、たいしたことでは無いわ、ちょっと聞いてみただけよ」
そう言ってマギは俺の方をチラッと横目で見た。その眼は何やら言いたげな目付きをしていたが……俺と目が合うとフッと視線を逸らしてウギの方に向き直った。
「そうね、魔獣の骨だから魔力を受け取る力はあるわよね、でもひとつ先に言っておくわ。どんなことでもメリットとデメリットが必ずあるのウギの魔力を補うことは此の方法で可能よ、でもね其れに伴うリスクが必ずあるの其れを乗り越えることが出来なければ止めた方が身の為よ」
マギが真剣な顔つきでウギに其れを問うた。
確かに魔力を蓄える魔道具は世の中に存在するそれらの力は何らかの魔術を放出する事に役立つが其れを己の力とする場合、時として代償を伴うこともある。例えば己の命を代償として悪魔との契約を結ぶことになるとか……だ。
「それは――どんなことなのじゃ? 妾の操はラリーのものと決まっておるぞ、それ以外に妾に捧げるものはないぞのぉ」
ウギはテーブルの上に頭をコツンと乗せると蹲って小声で呻く様に言った。
いやいやウギそう言う類いのことでは無いし、俺とそんな……決まっていないってば……たぶん。傍らで唖然とした顔をしていながらマギもクスクスと笑い出した。
「ウギってば――バカね。ラリーに操を立てるのは良いけど――此奴は最低のニブチンよ、いいの其れで? それに、まあ今回はその手の代償では無いから心配しないで」
「そうかそれなら妾は何でもいいのじゃ――のぉラリーいつ初夜を迎えようかのぅ?」
「――おいウギっ! 何でそう言う話しに進みたがる?」
俺は此処で初めて言葉を挟んでいった。しかしウギの事だ、わかっているのかいないのか?
「ラリーは妾を抱くと言ったでは無いかのぉ――あれは確かラリーと初めて出会った時の事であるぞ――え~っと」
「ウギっ! もう良いから話しを元に戻してくれ!」
俺はおもわずウギの顔を両手で挟んで顔を近づけながら怒鳴った。
「おやおや、ラリーてば何をそんなに焦っているのかしら、冗談に決まっているでしょ~ねぇ、ウギっ! まあ、ウギの話しも面白そうだけどひとまずはその小太刀の件に戻しましょうか」
傍らでクスクス笑っていたマギがそう言ってくれたお陰で取り敢えず本筋に話しは戻って行く事が出来た。
次回【77-2話:マギの小太刀への呪術!】を掲載いたします。