【12-1話改稿:サギさんと出会いの事件です!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
ラリーがベッレルモ公国の聖都テポルトリに居たのは公国から貴族の護衛の依頼が舞い込んだときだった
彼としてもあまり気乗りのしない仕事内容だったがベッレルモ公国はその年、豊作年で国全体が潤っていて依頼の報酬が他よりも格段に高かったのが魅力だった、それで思わず飛びついた。武者修行の旅回りもお金が必要だったから仕方なかったと彼自身に言い聞かせていた様だった。そんな状況だから各地の冒険者やらハンター崩れが仕事欲しさに聖都に集まって来ることもあり、夜の酒場や繁華街の雰囲気はあまり良いとは言えなかった。
毎日、公国の王宮とそれぞれの貴族の領地間の移動が頻繁に有って、通常時の護衛騎士団では手が足りず王宮から臨時の護衛要員確保要請が、聖都のギルド本部に発せられていたそうだ。その時の彼は王宮の聖騎士にも既に知り合いが居たことも有って、待遇は聖騎士補佐レベルだったと聞いている。
いつもの事ながら護衛先の貴族を恨んで、その移動中に襲ってきた暴徒とかを粛正して毎日を暮らして居た。暴徒と言っても普通の民衆もいるから、どちらかというと暴徒側に味方したいラリーだったが、仕事は仕事と割り切って護衛に励んでいた。その事が年若い彼の心の傷にもなっていたようだった。
そんな普通に暮らしていたある日のことだった。
ラリーはいつもの様に聖都テポルトリまで護衛の仕事をこなし、少し早いが夕方までには仕事を終えていた。護衛中は特段の問題もなく、まあ森を抜ける際に数匹の野獣退治をやってのける位で済んでたし、一人もんの彼はさっさと宿舎に切り上げ、ひとっ風呂あびてから夜の繁華街へと繰り出していた。
繁華街と言っても食堂やら飲み屋等を、うろうろして時間を潰すくらいだったが、さして用も無いのでその日は拳闘場なる遊技場まで足を延ばしていた。
「おい、坊や……!」
――んっ……坊やって俺のことか? なんか、店の従業員から嫌みな発言を受けたぞ!
「坊やって――俺のことですか?」
「そうだ、ここいらにガキはお前だけだろう! 違うか!」
「まあ、ガキって言えばガキですかね、年齢的には……それで、なんのようですか?」
失礼な言い方をする従業員にむかつきながらもラリーは、まあ穏便に済まそうとその場は下手に出ておくことに決めたようだった。
「坊やが拳闘場に来るのには十年早くないかい? んっ!」
――くそっ! おまえ店の従業員だろ、そんないちゃもんつける立場か! と思いつつも、とりあえず穏便に……と。
「お金なら、ちゃんと入り口で払いましたよ、大人料金で! しかもエールビールも大ジョッキでほら!」
ラリーの方も少し嫌みを入れて返した。たぶん相手は単に絡みたいだけだろうと踏んでいたので。
――なぁ……まあ穏便にはいかないかな!
ラリーはそう思いながら相手を見据えていた。
「てめぇ~! いい根性してやがるじゃないかぇ! ちょっとツラ貸せや! おいっ!」
――ほら、きたきた!
ラリーはめんどくさいな~っと思いつつあたりを見渡して逃げる算段を考えていた。
その時ちょうど拳闘場の中央に設置されているリングの向こう側に、知り合いの聖騎士の姿が見えた。これは渡りに船とばかりに彼はニヤリとほくそ笑んだ。
絡んできた従業員はラリーよりもふた回りはガタイが大きく厳つい海坊主みたいな顔した奴で、体中に入れ墨なんぞをしていた。早速そいつ……いや、海坊主と呼ばせて貰うことにするが。その海坊主はラリーの太腿ぐらいある右腕を振り回して彼の顔めがけて殴りかかってきた。まあ当たれば威力はそこそこ有りそうだと思うが、なにせ……遅かった。
海坊主は自分自身では会心の右ストレートだと思ったんだろう、ラリーの顔に当たる瞬間にニタッとその口角が上がったのが見えた。が、次の瞬間ラリーはその右手で瞬時にフィンガースナップをした。『パッチンッ』と響音だけを残して彼の姿は海坊主の前から綺麗に消えていた。
「……んっ、あれ、ガキは……どこだ?」
殴り飛ばしたものだと思い込んでるいるため、海坊主の奴は自分の前の方しか探しはしない、そう言うラリー自身は既にリングを挟んで真反対側のイカルガ騎士の前に移動していたのに……。まあしばらくはこの人混みに紛れて時間稼ぎにはなるだろと彼はふんで、海坊主の事は無視と決めたらしい。
次回は【12-2話:サギさんと出会いの事件です!】を掲載予定です。