【11話改稿:貴女達に百年前のことを教えてもらいました!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
「ラリー~ねぇ~! 覚えてる? 初めての……夜っ!」
「えっ!」
思わず想像してしまうサギの言葉に思考が追いつかないラリーだったが、彼女の口角が微妙につり上がっているのを見て捉えると少し落ち着きを取り戻していた。
――サギ今なんか非常に拙い言い方しませんでしたか。貴女と男と女の一夜なんぞ共にしたこと有りましたっけ?
ウギも結局タンクトップ風の上着の皮ジャケットを暑いからって脱いでしまって、上半身は下着一枚の格好で……サギやラリーにスキンシップ良く絡んでくる。
――Fカップの巨乳じゃポロリってなっても知らないよ。ほんと! 目のやり場の困るんだよな~。お前達見えてしまうって! 言ったって 『……いいのラリーだもん!』ってなんだよ、俺は!
「なっ……、お主らそんなっ――っ、ひど―っい、いつの間に! 妾を差し置いて! 聞いて無いぞ! こらっ!」
残念ながらウギの方の捉え方はそうでも無いかったらしい。
それに対してラリーの方はと言うとサギとウギの方を見てから大きく溜息を付いて身の潔白を話した、とりあえず冷静に……だったはずだが。
「……ふぅ~っ。あのね……夜のって言うのがあっち話しなら、俺は未経験だっつの、あっ!」
――何、こんなところで俺は童貞宣言しているんだっけ? まずぃ!
「ふ~んっ! なんだ、まだですか……!」「お主、やっぱ…未だなのか?」
――また、二人してハモる! いい加減に、幼気な青年をいたぶるのはよしてもらえませんかね! 淑女諸君! て言うか貴女達はどうなの?
そんな戯れ言にひとまず満足したのかサギの方はスッと話題を切り替えてくる。
「夜って、そんな意味じゃ無くて初めて会った日の事なんだけどなぁ~。あれ、聖都ですよね。」
「えっ! そっち! あぁっ……サギと拳闘場帰りで暴漢に絡まれていた時の事ね」
「そうそう、粘っこい嫌らしい目線でじっと見ていたおやじ達が絡んで来た時の事、あの時からラリーひとすじで押してきたのに、いっつも意気地無しなんだから……ふんっ!」
――おいおい、そんな話聞いてないよ、初耳だよ、酔っ払いは怖いものなしだな!
「でもラリーすごかったな~あの時……暴漢達を秒殺ですものね!」
――いやいや、サギさん記憶が……書き換わってますよ! あの時は貴女がひとりで全員を瞬殺しちゃったじゃないですか、魔術闘気で。瞬殺! 秒殺どころじゃ無いっうの俺じゃ無いですよ……言っておきますがね。おいおぃサギさん! なんか眼がトロ~んとして、どっかいっちゃってません! まあ、あの時までは俺は一人の冒険者で旅してたからな…………。
ちょうど百年と少し前ラリーはベッレルモ公国の聖都テポルトリに居たのだった。十五歳から冒険者として一人旅を初めて、いろいろな国々を旅して廻っている時だった。冒険者登録をギルドで行えばその身分証明書が各国間を行き来する通行手形の役割にもなっていた。
彼は幼き頃から十五歳まで当代一の魔術と剣術の其れ其れの師匠のところで一心不乱に術を叩き込まれていた。その時点で人並み以上の強さが既にあったらしい。
その頃は国同士の諍いとか、公国内の紛争とかが、まだまだ頻繁に有って冒険者としては用心棒やら護衛やらで仕事には事欠かなかった。十五歳という歳からか仕事先で、最初はいつも相手に舐められる立場のままだったがそれでも無理矢理、潜り込んで実力を示していたらしい。しかし初回の成果でどこでも直ぐに一人前として認めてもらったものだから特段苦労はなかったと言っていた。たまにドラゴン退治とか魔獣討伐とかの高ランクの仕事も舞い込んでくるし、強さが正義みたいな世の中だったから生き抜くにはさらに強くなるしか無かった時代のようだった。
公国や王国の近衛師団からの誘いも時々もらっていたが、彼としては自由な生き方のほうが好きなため誘いを断っては次の街へと旅するような生き方を繰り返していたらしい。その為、色々な場所を転々とさせてもらっていた。と言うか断ってしまった事から恨まれる場合も有り、一カ所に長く居られないと言う事情も彼の旅を意味づけていたようだ。
――サギが振った話題から、昔の事を思い出していた。そうそう、記憶が蘇ってきたよ、ほんと……。