【64-1話:御令嬢のお忍び巡回警備その後!】
ついにというか何時の間にか投稿100回目となりました。永らくお付き合い頂きありがとうございます。まだまだ……たぶん続きそうですので――今後もご愛読の程よろしくお願いいたします。<(_ _)>
時は一週間戻って俺が新生チームラリーの初仕事を俺とマギと二人だけで終えた日の事。
陽もすっかり沈んだ時間に城に戻ってきた俺達は警邏隊のメンバーと一緒の会食に呼ばれていた。俺はいま自分の部屋から出てマギの部屋へと出向いている。まあ、会食に出向く前にレディーをお迎えと言う訳だが、その時のマギの服装が……である。
「マギっ――そ、その格好で会食に行くのか?」
「あら、どうして? お酒も入る席で眉目秀麗な私がこの様な姿で殿方にサービスすることはチームラリーとしても宜しい事ではないですか」
まあ、マギの言っている事はあながち間違えではないが……そのボンテージ装備礼装のままとは……朝の出がけにも言っておいたがその服装は全てのところで隠し切れていないと言うか隠す気が無いと思うんだが……辛うじて昼間の貞操を形作っていたはずの上に羽織っていたロングコートは部屋に置いて行くらしい。
「まあ、ラリーが止めろと仰るのであれば着替えてきますわよ、でもその時は止めさせる理由をちゃんと仰っていただかないと――ですわよね……ラリーっ!」
そう言いながら俺の腕に絡みついてくるマギの眼は蠱惑に輝いていた。すっかり此方の思惑はお見通しとばかりに。
「わかった、わかった。俺の気持ちとしてマギのその魅惑的な肢体を他の男にむざむざ晒すように見られるのは心証的に嫌なんだ、だから露出を控えて欲しい――と、此で良いだろう」
「そうですね、まあ七十五点と言うところでしょうか。今日のところは其れで良いですわ――うふふっ!」
そう言ってマギは俺の顔を覗き込みながら僅かに微笑んで俺の言質を取ったことで満足したのか踵を返すと部屋に戻っていった、去り際にひと言俺を呪縛する呪いの言葉を残して。
「ふ~ん、ラリーは私の躰に興味があるのね~ぇ、ふふっぅ――サギには内緒にしておいてあげるわよ~ん」
「は~ぁ、マギの奴めっ……いちいち気の滅入る台詞を残していくか? ふつう」
大きくため息を吐くと俺はその場で壁にもたれた。そう言えばサギたちはどうしてるのかな? 今日一日会わなかっただけだけど妙に心が寂しくなった。会食が終わったら部屋を訊ねてみようかな。そう思いながら顔を上げるとそこにはマギの顔があった。
「うわっ!」
「えっ、そんなに驚く事かしら?」
驚くに決まっているだろうがそんなに顔を近くに寄せられてはこっちがドギマギするって……。マギの肢体も魅惑的だが、顔の容姿も美しさを例えたら光彩奪目というか羞月閉花と言うか兎に角、美人この上ない。
「あら、ラリー私の顔に何か付いていて?」
そんな風に言いながらもマギは舌をペロッと出して可愛らしく微笑んでくる。その笑顔も小憎らしい程愛らしい。
「どう、これならラリーの好みに合って?」
マギは俺の前で着替えた服を見せつける様にクルッとひと回りして見せた、着替えた服装は露出を抑えたパーティードレスなんだがそれでもマギが着ると艶麗と言うか凄艶と言うか兎に角、艶めかしい色気が漂っていたしこぼれ落ちる様な胸元は直視に憚られる。
「うん、それなら良いんじゃないかな」
俺はマギの肢体から目を逸らしながらそう言うしかなかった。
「ふ~ん、良く見てはくれないんだ、何かつまんないな~ぁ」
そう言いながらマギは俺の腕を取って躰を絡めてくるから余計に俺は身体を強ばらせる事になってくるし、もう勘弁してくれ。
「マギさん――お願いだからそんなお色気ムンムンで攻めないで下さい、俺も腐っても男だからさっ、ねっ!」
何とかこの場を乗り切る算段を無駄だと思うが一応がんばって見る、多分――間違いなくマギの掌の上で踊っているだけだな俺は……。
「ふ~ん、腐る間際が一番美味しいって言うじゃ無いの……たべちゃいたいな~ぁ――でも、サギが怒るかな~ぁ」
やっぱりそう来るよな~ぁ、俺は顔を真っ赤にしながらしどろもどろで応えた。
「姉さん――勘弁して下さい」
その言葉でマギは満足したのか、スルーッと俺の腕から離れると先に歩き始めた。
「さあ、ラリー皆が待っているから急ぐわよ」
だから、誰のせいで遅くなったと思っているんですか……と言う言葉は胸の奥に飲み込んでおいたのは言うまでも無かった。
警邏隊のメンバーと会食はお城の大広間を使って行われる事になっていた。俺とマギは正面玄関からのメインロビー抜けてお城の奥座敷の方に向かう廊下を歩いていた。
その廊下の両側の壁には所謂肖像画なるものが掲げられていたがそれらはこの城の歴代の城主とのことだった。
「あら、ラリー……この肖像画って何かラリーに似ていない事?」
マギが何を見つけたのか一枚の肖像画に駆け寄っていって其の絵をまじまじと見つめている。少し遅れて俺もマギの真横に立ってその絵を覧た。
「そうかな~ぁ、自分の顔は自分では良くわからないから……そう見えるか?」
正直、俺には良くわからなかったがマギが言うならそうかも知れないと思った。肖像画についてはそれ以上のことは解らなかった、機会があればリアーナお嬢様に聞いてみようかとは思っていたが。
「結構、ラリーのご先祖様だったりしてね」
そう言いながらマギは絵と俺の顔を相互に見比べてうんうんと頷いていた。
「マギ、ほれ行くぞ……時間に遅れているんだから」
そう言って俺はマギを急き立て先に歩き出した。
「あっ、待ってよ~ぅ」
甘い声をまき散らしながらマギが俺のあとを追いかけてきたが其れを無視して俺は先を急いだ。
次回【64-2話:御令嬢のお忍び巡回警備その後!】を掲載いたします。