大雪の日の一日
珍しく王都に雪が降った。
外は一面銀世界。
ただ、喜ぶのは子どもばかりである。
大人達は普段の生活が思うようにいかず、ため息を吐くばかりだ。
ルードティンク隊長とベルリー副隊長、ガルさんにザラさん、リーゼロッテは雪にうんざりしていた。
けれどもウルガスだけは、ワクワクした様子で休憩室にやってきたのである。
「今日雪すごいですねえ! 外で何して遊びますか!?」
子ども達と同じノリでいるようだ。
「ウルガスてめえ、何しにここに来ているんだよ!!」
「うわあ、ルードティンク隊長、休憩室にいたんですか?」
「いて悪いのかよ」
「いえ、普段は執務室にいるので」
執務室は広くて寒いようだ。そのため、ほどよい狭さで温かい休憩室にいたという。
「寒がりだなんて、かわいいところがあるんですね」
「誰がかわいいだ!!」
ウルガスのコメントに笑いそうになった。けれども笑ったら絶対に怒られるので、ぐっと我慢した。
「あー、面倒だが、雪下ろしするぞ」
ザラさんがやり方を教えてくれるらしい。
「リスリス、なんか温かいもんを作っておいてくれ」
「え、温かいものでいいんですか?」
「寒い日は暖かいもんだと決まっているだろうが」
「そうなんだけれど、雪下ろしのあとは温かいものじゃないと思うの」
「どうしてそうなる?」
「雪下ろしは思っていた以上に体力勝負で、汗だくになるのよ」
「そうなのか……」
そうなのだ。全身を使うような作業は、寒い日でも暑くなる。
汗だくで疲れて帰ってきたところに、あつあつの料理なんて食べられるわけがないのだ。
「でしたら、雪を使ってアイスクリームを作りますね。もちろん、温かいスープも」
「アイスクリーム? 雪を食うのか?」
「食べません。任せておいてください。ウルガス、アイスクリーム作りを手伝ってくれますか?」
「ええ、もちろん」
まずはアイスクリーム作りから開始する。
鍋に牛乳と砂糖、卵を入れて混ぜ合わせる。
それを弱火にかけ、とろとろになってきたら粗熱を取って水筒の中へ。
ここから外での作業になる。
「ウルガス、出番ですよ」
「はい!」
まず、蓋突きの金属のバケツに雪と塩を入れてよく混ぜる。
「塩はどうして入れるのですか?」
「塩を入れると、雪がさらに冷たくなるそうです」
フォレ・エルフのお婆ちゃんの知恵なので、詳しい原理はよくわからない。
「アイスクリームのもとを入れた水筒を入れて、塩を混ぜた雪を被せます」
あとはしっかり蓋をして、雪の上を転がすばかりである。
そうすれば水筒の中で攪拌されて、アイスクリームが完成するわけである。
「足でがんがん蹴ってもいいのですが、怒られそうなので、手で回してくれますか?」
「わかりました!」
そんなわけで、アイスクリーム作りはウルガスに任せた。
私は中でスープ作りを開始する。
一時間後――ルードティンク隊長が戻ってきた。
「暑い!!!!」
ザラさんが言っていたとおり、ルードティンク隊長は汗だくで戻ってくる。
そんなルードティンク隊長に、休憩室の暖炉で作ったスープを勧めてみた。
「スープ、できたてですよ!」
「今そんなもん食ったら、息ができなくなる!!」
「大げさねえ、メルちゃん」
「本当に」
ウルガスが雪で作ってくれたアイスクリームがあると言うと、ルードティンク隊長は早くよこせと言う。
ウルガスも一生懸命バケツを雪の上で転がしてくれたので、汗だくだった。
「早く食べたいです!」
「いただきましょう」
みんなの分をお皿に盛り付けて配る。
水筒の中に入れた液は、すっかり凍ってアイスクリームになっていた。
「わあ、本当にアイスクリームになってますねえ」
「ウルガスの頑張りの成果ですね!」
ルードティンク隊長は甘い物が得意ではないのに、真っ先に食べていた。
一気にばくばく食べたら、頭がキーンとしたようだ。
「ううっ!! 頭痛え!!」
「急いで食べるからですよ」
体が冷えたルードティンク隊長には、スープを差しだす。
「やっぱり寒い日は温かいもんだよ」
さっきまで温かいスープを食べたら息ができなくなるとか言っていたのに、この手のひらの返しようである。
ウルガスは幸せそうにアイスクリームを頬張っていた。
そんな彼を、ザラさんは慈愛に満ちた顔で見つめていた。
「ウルガス、あとで雪遊びしましょうね」
「ザラさん、ありがとうございます!」
私も仲間に入れてもらおう。
そんな感じで、雪深い日の一日は過ぎていったのだった。




