花火大会に行こう!
年に一度のお楽しみ、王都の花火大会!
今年は初めて、ベルリー副隊長やリーゼロッテと一緒に行くこととなった。
リーゼロッテは花火大会に遊びに行くこと自体が初めてらしい。
「メル、当日はどういう恰好がいいの?」
「とにかく動きやすい装いがいいかと!」
当日は人込みの中でもみくちゃにされる。そのため、露出は最低限にして、可能であるならば外套など、身を守る服装がいい。
「任務をするときと、そう変わらない恰好でいいってことね」
「ええ、それが最適かと」
あとは、財布も注意だ。
「花火大会には巡回任務で関わっていますので、おわかりかと思いますが、とにかくスリが多いです。あまり大金は持ち歩かず、盗まれないよう、警戒しながら行動してください」
「わかったわ」
そんなわけで、わくわくしながら花火大会の当日を迎える。
ザラさんは巡回任務に駆り出されたので、しょんぼりしながら出かけていった。
アメリアを始めとする幻獣組もお留守番である。
アルブムもさすがにこの人込みの中ではついて行こうと名乗り出なかった。
『オ土産、ヨロシクネエー』
「はいはい」
ベルリー副隊長、リーゼロッテと落ち合い、花火大会の会場へ向かう。
「相変わらず、すごい人ですねえ」
「ええ、本当に」
「はぐれないよう、注意するように」
念のため、リーゼロッテと手を繋いでおく。
ベルリー副隊長は私達を守るように、先頭を歩いてくれた。
花火大会でのお楽しみと言えば、出店だろう。
今年もたくさんのお店が夜の街に並んでいる。
「ベルリー副隊長、何かオススメはありますか?」
「そうだな。まずは腹に溜まるものでも食べようか」
そう言って案内してくれたのは、肉せんべいという屋台のお店。
平たく生地の中に、ソースを絡めて焼いた鶏肉と刻み野菜や目玉焼きを挟んだ一品である。
行列ができていたが、次々に提供しているようで、すぐに私達の番になった。
ベルリー副隊長がスマートに注文してくれる。
「肉せんべいを三つ」
「まいど!」
大きな鉄板の上に生地が流し込まれ、きれいな円形になる。
きつね色になるまで、裏、表とひっくり返す。
鉄板の端のほうに卵を割って焼いていき、生地の上に載せた。
さらに、刻んだ野菜と網の上で炙っていた肉を重ね、くるくると具材を包んだら完成である。
「ほら! 熱いから気をつけな」
「ありがとうございます」
人の少ない路地に避け、肉せんべいを頬張る。
生地の表面はカリッカリに香ばしく焼かれ、中はもっちり。
濃い目に味つけされたソースがよく合う。
卵の黄身と合わせると、味わいがマイルドになった。
「ベルリー副隊長、とってもおいしいです」
「こんなにおいしいクレープ、初めてだわ」
「お口に合ったようで、何よりだ」
そのあと、串焼き肉や果物飴、氷菓子など、いろいろ食べ歩く。
アメリア達やザラさんのお土産も購入したあとは、花火が見える会場へと移動した。
なんと今年は、ベルリー副隊長がいい席を用意してくれた。
高台にある一等席で、花火がよく見えるらしい。
私やリーゼロッテがもみくちゃにならないよう、ずいぶん前から予約していたようだ。
「こんなにいい席で花火を見ることができるなんて」
「押しつぶされながら見るものだと思っていたわ」
ありがたいと思いつつ、空を見上げる。
時間になると、夜空に大輪の花が咲いた。
いつ見ても、花火は美しい。
うっとりしながら、みんなで花火鑑賞をしたのだった。




