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悩み事があるならば、スラちゃんに任せなさい! その二

 日課である散歩をしていたスラちゃんの前に、蹲って頭を抱えるウルガスの姿があった。

  非常にわかりやすく、悩みを抱えている。

 このまま通り過ぎるわけにはいかないので、スラちゃんは近づいてポンポンと肩を叩いてみた。


「どわーー!! って、スラちゃんさんですか」


 朝の挨拶を交わしたあと、いったい何を悩んでいるのかと身振り手振りで聞いてみる。


「あ、えっと、大したことではないのですが」


 ウルガスは素直に、悩みを打ち明けた。


「両親が、ミルさんを紹介しろとうるさくて。ずっとあしらっていたのですが、ここ最近しつこくなって、どうしたものかと悩んでいたのです」


 スラちゃんはお気の毒にとばかりに、ウルガスの肩をぽんぽんと叩く。


「まだ、正式に交際を申し込んでいるわけではない上に、実家に招くとか、重たくないですか? それに実家、築百年でめちゃくちゃボロいんですよ……。女の子をお招きする家じゃないんです」


 スラちゃんは腕を組み、首を傾げて考える。

 ミルは天真爛漫な性格である。たとえ、ウルガスが実家に招いても、深読みせずに普通に楽しみそうだ。

 ウルガスも重たく受け止めず、友達を家に招くような気持ちで誘ってみたらどうか。スラちゃんはそんなアドバイスを、身振り手振りで行った。


「友達を家に招くような気持ち、ですか」


 もしも、真剣に付き合う気があるのならば、ウルガスの育った環境を知ってもらうのも大事だろう。


「たしかに、そうですね。わかりました。一度、ミルさんを誘ってみます」


 スラちゃんは親指をぐっと立て、頑張れとエールを送った。


「スラちゃんさん、ありがとうございます。今日、ミルさんと昼食を食べる予定なので、さっそく話してみますね」


 ウルガスは笑顔を浮かべ、立ち上がる。その表情に、迷いはいっさいなかった。



 昼休みの終わりに、ウルガスがスラちゃんのもとへとやってくる。


「スラちゃんさーん!」


 ウルガスは笑顔だった。どうだったか聞かずともわかるが、一応、成果の報告に耳を傾けた。


「あの、先ほど、ミルさんを誘ってみたのですが、来てくださるそうです」


 スラちゃんは両手を天に突き上げ、喜ぶ仕草を取った。


「スラちゃんさんのおかげです。朝、相談しなかったら、ずっとうじうじ悩んでいたと思います」


 ミルを招くのは、一週間後の休日らしい。頑張れと応援しておいた。


 ◇◇◇


 翌日、もう一人悩める者がいた。


「あ、スラちゃん。お姉ちゃん、来ている?」


 まだ出勤していないと、スラちゃんは首を横に振った。


「困ったな。相談したいことがあったのに」


 メルは時間ギリギリに出勤してくる。あと二十分は待つ必要があるだろう。

 スラちゃんは、「スラちゃんでよかったら、相談に乗るが?」と身振り手振りで提案した。


「あ、いいの? ありがとう!」


 ミルはスラちゃんの前にしゃがみ込み、ヒソヒソ声で話し始める。


「実はね、ジュン君の実家に遊びに来るように誘われたの。どんな服を着て、どんなお土産を持って行ったらいいのかなと思って。せっかくご両親に紹介してもらうんだったら、好印象のほうがいいでしょう?」


 悩みを聞いたスラちゃんは、的確なアドバイスをする。

 まず、服装だが、なるべく丈の長いワンピースなどを選び、リボンやフリルなどがついていない、シンプルなものがいいだろう。


「なるほど、なるほど!」


 ウルガスはミルの実家ほどではないものの、大家族である。少量入った高級菓子よりも、たくさん入ったクッキー缶などを買っていったほうがいいだろう。


「あー、そっか! なんか、オシャレで高いお菓子がいいのかなとか考えてた。そうだね。家族がいっぱいいるのだったら、たくさんあったほうが嬉しいかも」


 スラちゃんは木の枝を握って地図を描き、街にある菓子店で安くておいしい店を紹介してあげた。


「わー、参考になる! スラちゃん、ありがとう!」


 気にするなと、手をぶんぶん振っておく。

 ミルの悩みは、解決したようだ。

 明るい笑顔を見せつつ、第二部隊の騎士舎から去っていった。


 ◇◇◇


 後日、ウルガスとミルがスラちゃんのもとへとやってきた。


「スラちゃんさん、おはようございます」

「スラちゃん、おはよう」


 無事、実家訪問を終えた二人は、以前よりも打ち解けた雰囲気でいた。

 揃ってどうしたのか。問いかけると、ウルガスが説明する。


「スラちゃんさんに、改めてお礼を言いにきまして」


 昨日、お互いスラちゃんに相談していたことに気づいたらしい。


「おかげさまで、ミルさんを両親に紹介できました」

「私も、お土産を喜んでもらえたし、ジュン君のお母さんに、ワンピース素敵ねって、褒めてもらったの」


 スラちゃんのおかげだと、ウルガスとミルは口々に言う。

 スラちゃんは照れつつも、気にするなと手をぶんぶん振った。


 スラちゃんは今回も、悩める少年少女を救う。

 誇らしい気持ちで、第二部隊の敷地内を散歩していた。

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