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エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


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最終決戦! その十九

 見知らぬ森に飛ばされて、食料を失い、シエル様の冑のみ発見する。

 そんな状況の中で出会ったのは、大根に似た不思議生物メルヴ。

 世界樹と蔓で繋がっている生き物のようだが、蔓が切れて、私達と同じように飛ばされてしまったと。

 これからどうすればいいのか。

 隊長が山賊にも負けない険しい表情で、吐き捨てるように言った。


「まず、俺たちがどういう状況に置かれているかはっきり理解しないと、アイスコレッタ卿の捜索も、邪龍退治もできん」


 そうなのだ。最大の問題は、ここがどこかというもの。

 唯一わかっているのは、フォレ・エルフの森ではないということのみ。


「あの、メルヴ。ここは、世界樹がある大森林ではありませんよね?」

『ウン、違ウ……ト、思ウ』


 フォレ・エルフの森でも、大森林でもない。

 そんな中で、遭難でもしたら大変だ。

 いや、もう遭難しているような状態かもしれないが。


「携帯食も、ほしいところだが……」


 食料を確保しつつ、先に進むというのは効率が悪すぎる。


「二手に分かれるのも、合流が面倒だな」


 なんとも悩ましい問題だ。どうしようかと迷っているところに、メルヴがピッと挙手した。


『アノネ、ココノ先ニ、村ガ、アッタヨ』

「なんだと!?」


 隊長が山賊顔でメルヴを振り返った。恐ろしく思ったのか、メルヴは私の足にヒシッとしがみつく。


「メルヴ、大丈夫ですよ。見た目は山賊ですが、根は優しい山賊ですので」

「おい、リスリス! それでは俺がただの山賊じゃないか!」

「根は優しい隊長だと言いましたよ」

「いいや、山賊だった」


 隊長が山賊か否かはひとまず置いておいて。


「メルヴ、森の中に、村があるって言っていましたよね?」

『ウン』

「詳しい話を聞かせてもらえますか?」

『イイヨ!』


 なんでも、メルヴが顔を出した場所からしばらく歩いた先に、村があったらしい。


『デモネ、普通ノ、村ジャナカッタ』

「普通の村じゃないって、どんな村なんですか?」

『ナンテ、言エバイイノカナ……』


 メルヴは転移のさい、記憶が混乱しているようで、上手く説明できないらしい。


『ゴメンネ』

「いいえ、大丈夫ですよ」


 隊長を振り返り、どうするか判断を待つ。


「隊長、普通じゃない村があるそうです」

「何だよ、普通じゃない村って」


 その突っ込みに、ウルガスが反応を示す。


「もしかして、人食いの村とか」


 隊長はすさまじい速さで、ウルガスをジロリと睨んでいた。

 続いて、ランスが意見する。


「森の中の村っていったら、やっぱりエルフだろうが。普通じゃないってことは、ダークエルフかもしれんな」

「ダ、ダークエルフ!」


 人の血肉を啜り、邪悪な魔法を使うエルフである。人里に現れた記録は、ほとんど残っていない。


「おい、フォレ・エルフとダークエルフの関係はどうなんだ?」

「友好なわけないだろうが」


 人食いの村といい、ダークエルフの村といい、想像力が豊かなものだ。


「物語の世界じゃないんですから、そんな村があるわけないでしょう」

「だったらリスリス、お前はどう思う?」

「ドワーフの村とか! 普通じゃないでしょう?」

「ドワーフは地中に住むんじゃないのか?」

「あ……そうでしたね。ザラさんは、どう思います?」

「普通じゃない村、ね。人里離れた場所に住んでいるということは、人ではないことは確かよね。うーん。ごめんなさい、まったく想像できないわ」

「ですよね」


 いったん様子を見に行って、友好的だったら立ち寄ろうか。そう提案したが、隊長の眉間の皺は解れない。


「人食いの村だったら、どうするんだよ。近づいた瞬間、襲われるんだぞ」


 ウルガスが人食いの村だと予想したせいで、隊長は慎重な姿勢を見せていた。

 そんな隊長に意見したのは、リオンさんであった。


「ここでうだうだ悩んでいても、しょうがないだろう。もしも、やられたときは、やり返すまでだ」


 一瞬カッコイイ……! と思ったが、私達は騎士だ。やり返すのはよくないだろう。相手が魔物でない限り、だが。


 悩む様子を見せている隊長を、ベルリー副隊長が説得する。


「隊長、このままでは何も解決しません。遠くから、村の様子を観察に行きませんか?」


 アメリアがいるので、村がある場所が開けていたら、上空から確認もできる。


 可能であれば村人にここがどこか話を聞き、食料を売ってもらいたい。


「あ、そういえば、お金も落としてきましたね。誰か、お金を持っている人はいますか?」


 誰も、挙手しない。全員、もれなく無一文になっていたようだ。

 しかし、リヒテンベルガー侯爵が反応を示す。


「もしものときは、私の装身具と交換すればいい」

「お、おお……!」


 リヒテンベルガー侯爵は指輪や腕輪など、宝石があしらわれた高価な品を身に付けているようだ。さすが、国内で五本指に入る大貴族である。


 隊長は「はーーー……!」と深すぎるため息を一つ落とし、皆に声をかけた。


「あー、では、これから、普通ではない村に、行くとする」


 隊長の命令に、「了解!」と返した。

 果たして、普通ではない村とはどんな場所なのか。


 できれば穏便な村人がいる場所であってほしい。 

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