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エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


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挿話 ザラとリーゼロッテの送別会をするために その一

 ザラさんとリーゼロッテの送別会を行うこととなった。


「開催はザラの謹慎が解ける一週間後だ」


 遠征部隊の総隊長の許可をもらい、騎士舎で開かれることとなる。

 当日は料理を持ち込み、休憩室を飾り立て、賑やかなパーティーをするのだ。

 てっきり私が料理担当かと思ったけれど──違った。


「役割はくじで決める」


 紙に書かれていたのは、材料調達、料理、贈り物、部屋の飾りつけ、お楽しみ係の五つ。隊長はそれを折り曲げ、革袋に入れて混ぜる。

 ウルガスが挙手して質問した。


「隊長、お楽しみ係ってなんですか?」

「出し物をするんだ」

「ええ~~!」


 罰ゲームのような役割があるなんて……。絶対に当たりたくない。


「ほら、つべこべ言わずに一人ずつ取っていけ」


 ベルリー副隊長が私とウルガスに先に取るよう、革袋を差し出してくれた。


「お楽しみ係は嫌だ……お楽しみ係は嫌だ……」


 ウルガスはブツブツと呪文のように唱えながらくじを引く。

 私も同様に「お楽しみ係は嫌だ……お楽しみ係は嫌だ……」の呪文を呟いた。


「リスリス衛生兵、一緒に開けましょう」

「そうですね」


 ウルガスと「いっせ~の~で!」と声を合わせ、くじを開いた。


「ぎゃあ!」


 ウルガスが悲鳴を上げ、床に倒れ込む。どうやら、お楽しみ係を引いてしまったらしい。


「うわあああ~……なんで、こんなことに……!」


 手と手を合わせ、ウルガスの健闘を祈る。

 私は材料調達係だった。料理担当との打ち合わせが重要になりそう。

 続いて、隊長、ベルリー副隊長、ガルさんがくじを引く。


「私は、贈り物係だな」

「俺は飾りつけだ」


 ということは、ガルさんが料理係か。料理経験のないガルさんは、目を丸くしている。


「というわけで、解散!」


 みんなが立ち去ったあと、窓際で呆然とし、スラちゃんが慰めているガルさんに声をかけた。


「あの、ガルさん。よろしかったら、なんですけれど、パーティーの準備、一緒にしません?」


 ガルさんと材料調達をし、料理も一緒に作る。そうしたら、より良い物が完成しそうだ。

 そんな話を持ちかけたら、ガルさんは安堵した表情で頷いてくれた。


「では、次の休日に、材料調達に行きましょう」


 お世話になったザラさんとリーゼロッテのため、とっておきの食材を探さなければ。


 ◇◇◇


 休日──私とアメリア、ステラ、エスメラルダ、ガルさんとスラちゃん、おまけにアルブムは幻の食材を求めて王都近くの森にある川に来ていた。

 送別会は明日なので、今日中に食材を得なければならない。


「今の時季、ルビー海老が旬だそうで」


 高級海老として名を馳せるルビー海老は、ルビーのように美しい殻を持っていることから名づけられた。貴族御用達の食材店では、一匹金貨二枚で買い取ってくれるらしい。


「アルブム、この前の遠征帰りに、ルビー海老を見かけたのですよね?」

『ウン! 半メトルクライノ、大キナヤツ』

「かなりでかすぎますが……」


 拳二個分ほどの大型の海老だが、アルブムが見かけたものはそれよりも大きい。

 きっと、食べ応えがあるだろう。


「そんなわけで、ルビー海老探しを始めます。みなさん、水辺は気を付けてくださいね!」

『ハ~イ!』

『クエ!』

『クウ』

『……』


 返事がバラバラだが、気にしないことにした。メンバーのほとんどが幻獣だし。

 エスメラルダは、当然ルビー海老探しなんかしない。

 天鵞絨の布が入った籠の中で、優雅にお昼寝である。


『キュッフ!』

「あ、はいはい」


 太陽の日差しが眩しいというので、その辺に生えていた大きな葉っぱを籠に差して陰を作ってあげた。相変わらずの、女王様ぶりである。


 アルブムは尻尾を振りながら、川を覗き込んでいた。アメリアは上空から探し、ステラは身軽な様子で岩から岩へと音もなく跳び移って探してくれている。

 ガルさんとスラちゃんは、驚きの探索方法だった。

 なんと、ガルさんの槍にスラちゃんが巻き付き、体を伸ばして川の中へと飛び込む。

 釣りのような方法で、水中を探すようだ。

 私はどうやって探そうか

 普通の海老ならば、岩間にいそうだけれど。アルブムが見かけたルビー海老は半メトルほどの大きさだというので、姿を隠す場所はないだろう。


 とりあえず、持ってきていた竿で海老釣りを行うことにした。

 餌を付け、川の水面に垂らす。すぐに、獲物はかかった。


「おお!」


 感触は軽い。お目当てのルビー海老でないことは確かだが、それでも私は竿を引く。

 釣れたのは、川魚だ。

 すぐさま、針を取って水を張った桶に入れる。

 ここは穴場だったのか、どんどん川魚を釣ってしまった。


『パンケーキノ娘ェ、タクサン釣レタネエ』

「本当に。遠征の時は、ほとんど釣れないのに」


 なんだろう。遠征の時は「食材確保!!」みたいな使命感に燃えているのがダメなのか。

 人数分釣れたので、この場で焼くことにした。

 石を積んで簡易かまどを作り、木の枝と枯れ葉を使って火を熾す。

 川魚を鉄串に刺し、塩をパッパと振って炙り焼きにした。

 じわり、じわりとほどよい焼き色が付いたら完成だ。


「みなさ~ん、休憩にしましょう」


 火の近くに集まって、焼き魚を食べながら結果を報告しあう。

 ガルさんとスラちゃんは、水中を探したがルビー海老らしき姿の発見はならず。

 アメリアと、ステラとアルブムも同様に。

 エスメラルダは眠っていたようなので、聞くまでもないだろう。


『パンケーキノ娘、魚、食ベテモイイ?』

「あ、冷めないうちに、どうぞ!」


 アルブムは嬉しそうに、魚にかぶりついていた。私も食べてみる。

 魚の皮はパリパリと香ばしく、白身は脂が乗っていて噛むとじゅわっと滴った。


「うう、おいしい……!」


 新鮮な魚は、本当においしい。自然がもたらしてくれるごちそうに、心から感謝した。


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