表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
261/414

大森林にて その十一

 しんしん、しんしんと雪が降る。

 こうして大自然の中にいると、感覚が研ぎ澄まされるようで、雪の降る音が聞こえるような気がした。


 スープで体が温まったあと、活動再開させる。


「コメルヴ、大丈夫ですか?」

『うん、ダイジョブ』


 コメルヴは『大丈夫ダイジョブ』と言ったものの、ガタガタと震えていた。

 温かい蜂蜜水も、半分ほどしか飲めなかったのだ。


『クウクウ』

「あ、そうですね」


 ステラが毛皮でコメルヴを温めてくれるらしい。私が抱いているより、ずっといいだろう。

 コメルヴにアルブムを巻きつけ、革袋の中に入れる。顔を出した状態で、紐で軽く縛る。

 それを、ステラの首元にあるふわふわの毛に埋め、落ちないようリボンで結んだ。


『温かい……』

「よかったです」

『アルブムチャンモ、温カイヨ!』


 私は首に巻いていたアルブムがいなくなって、首元がすーすー冷えるけれど我慢するしかない。


「リスリス、問題ないか?」

「はい、行きましょう!」


 風が強くなってきた。降る雪と混ざり合い、吹雪いているようだ。

 険しい道のりを、ゆっくりゆっくりと歩いていく。


 険しい道のりを越え、強力な魔物との戦闘を繰り返し、急激な斜面を下りて行く。

 消耗が激しく、みんな疲労困憊だ。


『もう少しだ。頑張ってくれ』


 猫の大精霊様の応援を受けつつ、先へ、先へと急いだ。

 そして──大森林にそびえ立つ世界樹のもとに到着した。


 天を衝くような巨大な樹だと聞いていたので、遠くからでも見えると思っていた。

 しかし、霧が深かったので、世界樹は急に姿を現す。


 威圧感というか、空気が重たい気がする。これが、世界樹の威厳なのか。


「それにしても、すごいですね……!」


 みんなも驚いているだろう。そう思っていたが──隣を歩いていたリーゼロッテが突然倒れる。


「リ、リーゼロッテ!?」

「どうした!?」

「隊長、リーゼロッテが倒れました!!」

「なんだと!?」


 リーゼロッテだけではない。ザラさん、ガルさん、ベルリー副隊長、ウルガスと、どんどん意識を失っている。


「え、な、なんで!?」


 その疑問に、猫の大精霊様が答えてくれた。


『世界樹が、魔力を吸収しているんだ!』

「え!?」


 猫の大精霊様は、世界樹のほうへと駆けて行く。

 大本である大メルヴがいなくなったから、周囲にある魔力を吸収しはじめたのだろうか。


 私はきっと、他の人より魔力量が多いので、昏倒しないのだろう。

 特に違和感は覚えない。

 アメリアとステラも、平気なようだ。アルブムも同様に。

 コメルヴは変化なし。震えは収まっているようだけれど。

 スラちゃんは心配そうにガルさんを覗き込んでいる。

 妖精鞄ニクスは『空気がぐわんぐわんするのん』と呑気に呟いていた。

 隊長は魔力がもともと少ないので、平気なのか。それか、山賊力のおかげだろう。


「リスリス、敷物を」

「はい」


 倒れたみんなを、雪の上から敷物の上に運んで寝かせる。


 作業をしているうちに、威圧感のようなものが薄くなる。

 世界樹の前に、巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。


『すまなかった!』


 すぐに、猫の大精霊様が戻ってきた。


『世界樹が魔力を集めるために、暴走していたようだ』


 猫の大精霊様のお母さんと共に、世界樹を鎮めることに成功したようだ。


 ……ん? お母さん?

 ちょっと前に、『母を氷漬けにしてしまい』と遠い目をしていたような気がしたが。


「あの、大精霊様のお母様って、その、氷漬けになったとおっしゃっていましたよね?」

『ああ。妻のおかげで、今は元気だ』

「そ、そうだったのですね」


 てっきり、お亡くなりになられたのかと。ホッとした。


『勘違いをさせて、すまなかった。母は私が幼い頃、魔力を暴走させて氷漬けにしたと思っていたんだが──』


 実際には違ったようだ。なんでも、猫の大精霊様の魔力の暴走を防ぐために、自らが封印の拠点となるため、氷柱となっていたらしい。


「なんていうか、愛ですね」

『そう、だな。なかなか、衝撃的な出来事だったが』

「ですよね」


 霧もだんだん薄くなっていく。

 だが、よかったとは言えない。みんな、魔力を失って倒れてしまったし。

 世界樹も、このまま封印の状態を保つことは難しいだろう。


『おい、連れてきたぞ!』


 凛とした女性の声が聞こえる。目を凝らすと、小さな姿を捉えた。

 それは──白い猫だ。


『母上!』


 猫の大精霊様は、やってきた猫を「母」と呼んだ。

 ということは、あれは母猫の大精霊様なのだ。


 母猫の大精霊様は、十個ほどの小さな光球を従えている。


『彼女らが、魔力を分けてくれるらしい』

『助かる』


 赤や黄色、青と、色とりどりの光球は『花の妖精』らしい。

 私達の危機を聞いて、助けてくれるのだという。


『彼女らも、魔力を奪われて力が通常の半分以下なのに、助けてくれるらしい』

「うう、ありがとうございます!」


 隊長も立ち上がって、花の妖精さんに深々と頭を下げていた。


『花の妖精は、普段は二メトル近くあるのだが……こんなに小さくなってしまって』

「け、けっこう、大きいのですね」

『ああ。頼りになる存在だ』


 コメルヴが大きくなった感じを想像してみる。

 二メトルもあったら、かなりの迫力だ。


 花の妖精さんは、みんなに魔力を分け与えてくれた。

 口元に飛んで行き、光の粒のようなものを唇に注いでいる。


「うっ……!」


 最初に目を覚ましたのは、ウルガスだった。


「あ、頭、割れるように痛いです」

「大丈夫ですか?」


 すぐに起き上がらないほうがいいだろう。


 続いて、ベルリー副隊長、ガルさん、ザラさん、リーゼロッテの順に目覚めた。


「あ~、もう、最悪」

「ザラさん……!」

「メルちゃん、大丈夫よ。しばらくしたら、元気になるから」

「ええ」


 目覚めたガルさんを、スラちゃんが抱きしめていた。

 ベルリー副隊長はゆっくり起き上がり、リーゼロッテの心配をしていた。


「ベルリー副隊長、まだ、寝転がっていてください」

「そう、だな」


 リーゼロッテは顔色が悪かったが、アメリアとステラが覗き込んだら嬉しそうにしていた。


 ひとまず、みんな大丈夫そうなので、ホッと一安心だ。


『エノク第二部隊の遠征ごはん』4巻より、口絵の一部をお届けします。

挿絵(By みてみん)

第二部隊いちのイケメン、ベルリー副隊長です。

見開きカラーはなんと、女性陣の入浴シーンとなっております。さらに、浴槽にはスラちゃんのセクシー(?)な姿もございます。

そして、もう一枚のカラーは、男性陣の入浴シーンです。

隊長のバッキバキの筋肉美をご堪能ください。

前髪下ろしたウルガスはイケメンですよ!

オール書下ろしの4巻は、10月30日発売です(/・ω・)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ