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エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


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謎の遺跡 その二

 翌日、ミルを連れて遺跡へ向けて出発することになった。

 第二部隊の隊舎の前でミルを待つ。今日は早めに出勤していたのだ。

 アメリアとステラを従え、アルブムとエスメラルダに見守られながら腕を組んで待っていると、ミルが小走りでやって来た。


「お姉ちゃん、おはよう!」

「おはよう、ミル」


 騎士隊の制服の上から遠征用のマントを着用し、杖を持つ姿はそれとなくキリッとして見える。

 以前は装備を身に着けた姿に違和感があったけれど、今はしっくりきていた。

 きっと、騎士隊の訓練の中で、いろいろと揉まれてきたのだろう。


『オ~、パンケーキノ妹ジャン!』


 アルブムは手を上げ、気安くミルに挨拶をする。


「わ~、アルブムちゃんだ! 久しぶり!」


 ミルとアルブムは手と手を合わせ、再会を喜んでいる。そんなに仲が良かったのか。


「アメリアとステラも久しぶり!」

『クエ~!』

『クウ』


 以前会った時、ステラはアメリアの後ろに隠れていたけれど、今日はしっかり向かい合って挨拶することができた。


「ミル、今回はステラに騎乗した状態で付いて来てもらうから」

「分かった」


 ミルはまだ、見習い騎士だ。そのため、ステラに乗った状態で付いて来てもらうことを隊長が決めた。


「私、魔法の勉強もして、四大属性の低位魔法も習得したから」

「そうなんだ。すごいね!」


 回復魔法の他に、四大属性──火、水、風、土魔法を使えるようになったらしい。

 普通、魔法使いは一つの属性しか使えない。

 かなり将来有望な騎士だ。


「それで、ジト目で私を見ているウサギちゃんはどうしたの?」

「ああ、あれは、魔石獣(カーバンクル)のエスメラルダなんだけど」

「カ、カーバンクルって、物語の中の生き物じゃないの?」

「違ったみたい」


 絶滅種だったけれど、この度発見できた。

 幻獣保護局の局長こと、侯爵様は鼻血を噴くほど興奮していたので、すごいことなのだろう。


「わ~~、かわい」

「あ、ミル、ダメ。この子、狂暴だから」

『キュッフ!!』


 ミルが触ろうとしたので、エスメラルダは毛を逆立てて威嚇する。


「うわっ、危なっ!」


 指先に噛みつこうとしたので、ミルは慌てて手を引っ込める。


「もしかして、この子もお姉ちゃんと契約しているの?」

「まあ、一応」

「す、すごい」


 ミルは私から距離を取って、しみじみと言った。


「なんか、お姉ちゃんの周囲だけ物語の世界だよ」

「いやいや、ミルだって、四大属性使えるとか、ありえないから」


 周囲に珍しい幻獣とか、精霊とか、妖精に大英雄とかがいるだけで、私自身は普通のエルフだ。

 魔法を扱えるミルには敵わない。


「……いや、俺から見たら、二人共物語の住人感半端ないですよ」

「あ、ジュン君だ! おはよう」

「おはようございます。リスリス見習い兵」


 いつの間にか、ウルガスがやって来ていたようだ。


「あれ、ジュン君、しばらく見ないうちに、背が伸びた?」

「あ、はい。ちょっとだけ」

「いいな~、羨ましい」


 ミルはウルガスと年が近いこともあって、話が合うようだ。

 いや、私のほうが近いけれど。

 年上(わたし)と年下(ミル)では、ミルのほうが話しやすいのかもしれない。


 続いて、ガルさんとスラちゃん、ザラさん、リーゼロッテがやって来る。

 途中で偶然会ったらしい。


「ザラお姉(ね)……お兄さん、久しぶり!」

「ミルちゃん、お久しぶりね。元気そうでよかったわ」

「うん!」


 ミルったら、一瞬「お姉さん」と呼びかけたような。気のせいだと思いたい。

 ガルさんとスラちゃんとも再会し、嬉しそうだ。


 始業までもうしばらくあるので、ステラに鞍を付けて騎乗訓練をしてみた。


「わ~~!!」


 大丈夫か心配していたけれど、難なく乗れたようだ。

 馬より乗り心地がいいらしい。


「ステラちゃん、私、重くない?」

『クウクウ!』

「ミル、ぜんぜん重くないって」

「良かった~!」


 そうこうしているうちに、朝礼の時間となる。


 隊長は今日も険しい顔で、遠征の指示を出した。


「昨日も言っていたが、今日は王都西部にある遺跡の調査を行う」


 魔法保護局の局員が同行したいと言ってきたらしいが、隊長は速攻却下したようだ。


「あいつら、勝手なことしそうで怖いんだよ」


 確かに……。

 そんなわけで、第二部隊にミルを加えた状態で遺跡探索へ向かうことになった。


 ◇◇◇


 王都の裏にある森をかき分け、三十分ほど歩いた先に遺跡があるらしい。

 最初に聞いた時は信じられない気分だったけれど──。


「あ、あれです!」


 ミルが指差した先に、石造りの小屋みたいな物がひっそりと佇んでいた。

 近づくと、かなり古びた建築物であるということが分かる。

 ここが出入り口となっていて、地下の階段を降りるようになっているようだ。


「おい、仔リスリス。この扉、魔法使いの魔力に反応するわけじゃないんだよな?」

「う~ん、魔力量かなと思っています」


 村の精霊の巫女だったミルは、家族の中でもかなり魔力が多い。それに反応したのではと推測しているようだ。


「だったら、大リスリスにも扉は反応するんじゃないのか」


 大リスリスって、もしかして私のこと? 仔リスリスに比べたら、可愛くない……。そんなことはさて置いて。


「どんなふうに開くんだ?」

「え~っと、実際に開いてみますね」


 ミルは小屋の前に立ち、扉に在る魔法陣に触れる。すると、石の扉がゴゴゴゴゴゴゴ! と重たい音を立てて開いた。


 手を離してしばらくすると、扉は閉まる。


「なるほど。そういう仕組みなのか。これって、フォレ・エルフに反応しているんじゃないよな?」

「う~ん、どうでしょう?」

「おい、大リスリス、お前もやってみろよ」

「わかりました」


 石の扉の前に立って、深呼吸する。魔法陣に触れる前に、ミルを振り返って質問した。


「あの、ミル」

「何、お姉ちゃん?」

「これ、触った瞬間、ビリっとしないよね?」

「大丈夫、しないから」

「よかった」


 気を取り直して、扉に触れた。

 魔法陣は光り、ミルと同じようにゴゴゴと重たい音を鳴らしながら扉が開いたが──。


「んん?」


 開ききるまえに、止まってしまった。

 なんというか、開いたのはかろうじて足が入るくらいの狭い隙間だった。

 手を離すと、数秒と待たずにしまっていく。


「え~っと、お姉ちゃんのは……」

「フォレ・エルフだけが開閉できるわけではないようだな」


 ミルが言葉を選んでいるうちに、隊長がはっきりと言ってくれた。

 本当にありがとうございました。


「お姉ちゃんは、ほら、魔術医の先生の封印とかあるから」

「そうだね」


 また、妹に気を使わせてしまった……。

 あとでこっそり、お小遣いを渡そう。


 再びミルが扉を開いて中へと入ると、出入り口の扉は閉まっていく。

 なんだか、緊張する。


「──あ!!」


 ミルが大きな声を上げたかと思えば、足元に魔法陣が浮かび上がる。


「ミル、何これ!」

「転移陣!!」


 なんということだ。

 突然転移陣が出現するなんて。


「うわあああああ!!」


 私達は散り散りとなって、飛ばされてしまった。


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