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状態統括者の決戦


 15時 24分

 

 部屋に響く軽快な着信音が、尭羅の意識を現実に引き戻した。

 

 「もしもし? ……チッなんだよ翔也かよ。仕事用のケイタイに掛けてくんな」

 「テメエ舌打ちしやがったな! いいのか? お前の待ち望んでる情報だぞ?」

 

 眠い目を擦りながら、自分が待ち望んでいるものとは何だったかと思考を巡らしてみる。

 

 「“能面”だよ。うちの店に現れたぞ」

 

 唐突に出てきた“能面”に言葉が詰まった。

 

 「本当か?!」

 「お前の上司じゃないんだ。そこまで性格は悪くない。でも―――」


 気づくと、通話を終了して歩き始めていた。 無駄に広い屋敷である。多少迷いながらも、目に入った階段を全て降り続けて玄関へとたどり着いた。

 

 「あんた、どっか行くの?」

 

 玄関のドアノブに手をかけた瞬間、突然上から降ってきた少女の声。

 声の主は、2階の間から足を出して尭羅を見下ろしていた。

 

 「お前は何してんだよ」

 「蛍が帰ってくるの待ってる。っで、どこ行くの?」

 「知り合いの店に“能面”が現れたんだよ。お前も来るか?」

 

 「はあ?!」と少女が驚嘆の声をあげる。

 

 「そんなの当たり前じゃない……。私だって“能面”(あいつ)にはそれなりの恨みがあるし、聞きたいことなら山ほどあるの!」

 

 少女がすぐさま1階へと降りてくる。

 冗談で誘ったもので、彼女の意外な返事に動揺し、急に不安になった。しかし、少女の瞳にこもった熱い意志を尭羅は感じ取り、その不安は不毛だと気づいた。

 

 

 

 15時 40分

 

 radianの出入口となる公園に尭羅と逢莉がやって来ると、道中で連絡を入れた光輝がこちらに手を振った。

 

 「急に呼び出して悪かったな」

 「片付け手伝ってただけですから、僕の能力が役に立つならどこにでも飛んできますよ」

 「いや、正直お前の能力は必要ない。念のためだ。念のため」

 「ナチュラルに酷いこと言いますね……」

 

 彼らが会話をする中、逢莉は不思議そうに光輝の顔を見上げていた。

 光輝も気づいたのか、軽く会釈をすると優しく話しかけた。

 

 「たしか……逢莉ちゃんだったよね? 良かった目が覚めて」

 

 見知らぬ少年から発せられた自分の名前に、逢莉は後ずさりをする。

 

 「なっ、なんで名前知ってるのよ!」

 「君が寝てる間に、蛍さんから聞いたんだよ。ほら、匂いを嗅いで健康状態を―――」

 「寝ている乙女の“匂いを嗅ぐ”って“さっきのヤツ”並の変態じゃないの!?」

 「へ……、変態まで言わなくても……」

 

 逢莉の心無い言葉に光輝が落ち込んでいると、公園の東口から蛍と境夏がやって来た。

 

 「能面が現れたというのは本当ですか?!」

 「俺の上司じゃあるまいし、そんな嘘つくわけないだろ。それより真はどうした? お前が連絡を入れるはずだろ」

 「一応連絡は入れたのですが、返信がありません……。彼は仕事中電源を切ってますから」 

 

 不安そうにケイタイを握る境夏。

 尭羅は頬を掻きながら少し考えた後、「なら、仕方ないか」と呟いた。

 

 「アイツには悪いが、俺たちだけで先に行く。それでいいか?」

 「仕方の無いことです。私は真さんが来るのを待ってますから皆さんで先に向かってください」

 「それなら僕も待ってますよ」

 

 二つに分かれた集団。光輝と境夏は公園に残留して真を待ち、残る尭羅、逢莉、蛍の3人はradianに向かうことになった。

 

 

 15時 47分

 

 トイレでの窮屈且つ不潔なテレポートを終え、3人はレンガ張りの階段を下っていた。

 

 「こんな所に店があったんですね……」

 「表向きにはやれないからな。わざわざ“面倒な方法”で来るしかない。でもお前ら“組合”とかいう組織なんだろ? なんでradianを知らない」

 「私の能力は攻撃系ではありませんし、発動もほとんどしませんから、そういうのには疎いんです」

 

 尭羅と蛍が話す中、逢莉は昨晩の光景を思い出していた。壁を染める程の赤黒い染みに、床を覆う骸の山。

 今でも鮮明に思い出すことができた。

 

 「着いたぞ」


 気づくと最下層まで来ており、彼らの前には木製の扉。

 この先に待っているであろう“地獄”に逢莉は身構えた。

 

 「行くわよ……鳳京。みんなの仇とってやろうじゃないの……」

 「この先がどうなっているかは俺にも分からない。皆、最悪のケースに備えて準備しておけ」

 

 尭羅がゆっくりと扉を開ける。

 そこに待っていたのは―――

 

 「よう尭羅。遅かったな」


 奥のバーカウンターに座る翔也が挨拶替わりに手を振った。

 

 「ね、ねえ! “能面”が現れたんじゃないの?」

 「俺もそう聞いていたがな」

 

 逢莉の問に尭羅が返事をする。

 

 「それにしては、荒れた形跡も死体もないし。むしろジャズとか流れてて超リラックスした空間じゃないの!」

 「“死体”って……。お前どんなのを想像してたんだよ」

 

 拍子抜けしたように、自身の頬をかく尭羅。

 

 「だがこの子の言う通りだ。“能面”が来たにしては荒らされた形跡が一切ない。翔也、まさかお前騙したのか?」

 「そんな訳ないだろ。今日は定休日だから客はいないんだよ。

 ほら、リングの上。見てみろ」


 翔也が指した先には、白色のローブを纏った誰かが横たわっていた。 

やっと話が動き出したわけです。ここからはキリつける所が難しいんですよね。

一気に書けば解決できるんですけど、どうなるでしょうね



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