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感覚共有者の依頼 2


 人通りの少ない路地。脳を鈍い痛みが襲ったのは、電柱との“視界共有”を終わらせた所だった。

 

 「もう無理。これ以上はガチで死ぬから……」

 「弱音なんて吐くな。ほら、がんばれがんばれ」

 

 そう言って不知火が手を叩いたが、励ましと言うよりは煽りに感じられた。

 炎天下の中、街の至る所と“視界を共有”させられ、その数は既に100箇所を超えていた。

 一つの目で100っ箇所以上を同時に見るわけだから、その膨大な情報量に脳が悲鳴をあげている。

 

 「頑張りましょう!」

 「そうですよ。真さんなら出来ますよ」

 

 蛍と境夏から送られる声援も今は鬱陶しく感じてしまう。うぅ……、この苦しみは本人にしか分からないのだ。

 

 「それにしても時間かかるわねー。もっと速くならないの?」

 「そんな事言われたって、無機物と“共有”は大体1分くらいかかるんだよ」

 「えー、そろそろ飽きてきたよ。まだまだ半分も終わってないんだからさー」

 

 不知火に文句を言われながら次の共有にとりかかると、境夏が周知の事実でも言うように「怒ると速いんですけどねー」と呟いた。また余計なことを…………。

 もちろん聞き漏らさなかった不知火が、俺の肩に腕をまわして頬を指で押してくる。

 

 「聞きましたよー。怒ると速くなるらしいじゃないの」

 「間違いじゃねーけど。そう簡単に怒れねーぞ」

 「そりゃあそうよ。何をしてないのに怒り始めるのはガチでヤバイやつみたいじゃん。…………でも、これならどう?」


 ガチャという機械音とともに、あろう事か俺のこめかみに拳銃を向けてきた。

 

 「ほら、拳銃向けてるんだぞ怒れよ。怒んないと発砲するぞ〜」

 「拳銃向けられて怒る方がガチでヤバイだろ! っていうか実行してるお前が1番ヤバイ!」 


 その瞬間、不知火の頬をナイフが掠めた。薄皮の切れた彼女の頬から生血が垂れる。

 

 「少々“おいたが過ぎる”のでは? 今すぐその手と拳銃を真さんから離しなさい」 

 

 不知火はきっと睨むと、俺から手を離し境夏に銃口を向け直した。

 

 「なに、今のは。嫉妬? 何にしても喧嘩ならかうわよ」

 「私は構いませんけど。深手を負うのは貴方の方ですから」

 「強がるのもそうそうにしておけよ小娘。お前の能力程度じゃ私にこれ以上の傷をつけることは出来ない」

 「その言葉そのまま返しますよ」


 今にも喧嘩まがいの殺し合いが始まりそうな雰囲気。こんな所で勃発されても困る。俺はすかさず止めに入った。

 

 「おい! 2人ともやめろ。街中で問題起こすんじゃねぇ! それに、境夏の能力は攻撃系じゃないだろ。なんで今日に限って強気なんだよ」

 「たまにはそんな時もあります!」

 

 一瞬だけ俺の方を向いた境夏は、再び不知火と睨み合っている。

 

 この雰囲気を打破するように、蛍の携帯に着信が入った。

 どうやら逢莉が目を覚ましたらしい。

 

 「すいません。1度戻らさて頂いても宜しいですか?」

 「ああ、ついでに境夏も連れてってくれ」

 

 境夏が「嫌です!」と声を張り上げる。

 

 「いきなり拳銃を向けるようなキチガイ女と2人きりにさせるものですか」

 「俺だって出来ればこんな馬鹿みたいな依頼放り出してやりたいけど仕事なんだよ。わかってくれ」

 

 俺は蛍と目を合わせて黙って頷く。すると、蛍も悟ってくれたのか、車椅子のグリップを握って大通りへと進み始めた。

 

 「ちょっ、ちょっと止まってください。まだ話は終わってませんよ!」

 「仕事が片付いたら連絡入れる」

 

 2人は角を曲がって姿が見えなくなっても、境夏の声は未だに聞こえた。

 

 「悪かったわね」

 「別にいいさ。仕事の邪魔になりかねないからな」

 

 コートの内ポケットに拳銃を仕舞い、不知火はふう、とため息をついた。

 

 「ところで、なんで拳銃なんか持ってるんだよ」

 「……殺さないためよ」

 「服装が変だと、言うことも変だな」

 

 ちょうど視覚の“共有”が終わり、自分もため息をついた。

 

 「ほら、まだ半分も終わってないんだから頑張りなさい。 次のポイント行くわよ」

 「ここまでさせるんだ報酬はかなりの額なんだろうな?」

 「ま、君の働き次第ね」

「また短いうえに、話も進んでない」など思うことなかれ。来週からは話も動く(かもしれない)


最近、思いついた単語を並べて小説まがいのモノを、脈略もない“題名”と“あらすじ”で投稿している。このあとがきを読んでて、更にそれも読みたいというマゾ思考の方がいらっしゃればテレパシーを送ってください。届きませんから

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