衝撃復元者と逢莉
天井部分にレースの付いた豪華なベッドで眠る少女。黒刃はその少女を腕を組みながら見下ろしていた。
「こんな女の子がね……」
昨晩の“能面”との交戦で、彼女が鳳京の能力を行使していたのは紛れもない事実である。その理由を探るべく、わざわざ偽名を使ってまで馴れ合いに交じり、役に立たない“情報共有”に参加したのだ。
「さて……始めようか」
黒刃はそう呟くと、少女の服をまさぐり始めた。不純な動機の為ではない。この少女が“鳳京の能力”を使えるからには、それなりの理由というものがあると考えたのだ。その“理由”を探るべく、まずは少女の身体から調べることにした。
少々乱暴に調べていたが、彼女が他の人間と違う点、“鳳京の能力”に準ずる点は一向に見つからなかった。
「ん? なんだこれ……」
黒刃の気をとめたのは、シャツを捲った心臓の部分にある火傷痕だった。半径さえ分かれば簡単に面積を求めることができそうな程綺麗な丸形で、自然に付いたものとは思えなかった。
目を覚ました少女と目が合ったのは、その火傷痕に触れようとした時だ。
「ギャアアアアア!!」
屋敷中に響く叫び声。容赦なく黒刃に繰り出される連続の蹴り。
「あ、あんた何してんのよ?! 私を襲うつもりだったんでしょ!挙句の果てにはなんか…………なんか凄いことして! 変なこともするつもりだったんでしょ!!」
少女はシーツで身を隠しながら、性知識の乏しさを露呈するように叫んだ。
「違う! 僕は無実だ。如何わしい事は一切してない」
黒刃の弁解も乏しく、少女は目に涙をうかべながら手元にある物を投げ始めた。
しばらくして、投げる物も無くなったのか少女が大人しくなると何度か深呼吸をしてから落ち着きを取り戻した。
「ごめんなさい。ちょっと取り乱したみたい……。でも! アンタ何してたのよ! っていうか誰よ!」
黒刃と少女は昨晩会っているはずなのだが、少女は目を瞑っていた為、黒刃の容姿は見ていない。
これを好都合だと捉えた黒刃は“情報共有”の時と同じように“矢黒”と偽名を名乗った。
「蛍さんに頼まれて君の看病をしてたんだよ。 さっきのは君があまりにも汗をかいてたもんだから拭いてたんだ」
後半は咄嗟についた嘘だったが、我ながら上手いものだと思った。少女も納得したのか「蛍が……」と呟いていた。
「そういう訳で、話は変わるけど君について少々聞きたいことが―――」
黒刃はそう言いながら少女に近づこうとしたが、少女の「待って!」という声が彼を律した。
「それ以上は近づかないで! どんな理由であろうと女性の服を脱がした事には変わりないわ。 そんな人とは話したくない」
「女性って……。君そんな年でもないだろ……」
「もう24よ! 見た目に反して老けてて悪かったわね!」
「わかったよ。じゃあここから話すから聞いてくれ」
「もう口も聞きたくないわよ!」
少女は布団にくるまってしまった。もうこうなっては話を聞いてくれないだろう。
力ずくで話させることも出来なくはないが、別室には尭羅と名乗る男が居る。偽名までつかって潜入したのだ。ここで行動を起こすのは得策ではない。
「じゃあ、蛍さんに連絡だけ入れておくから……」
少女の返事は無かった。ここにいる理由も無くなった黒刃は、別室にいた尭羅に一言声をかけてから屋敷を後にした。
くっそ短い話でしたね。本来は先週に投稿する予定の話でしたが、忙しくて時間がとれかったんです。
そろそろ話が動く頃だと思うので許して




