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高校生能力者と閑話


 08時12分

 

 「あー、なんか腹痛くなってきた……」

 

 アパートの敷地に入ると同時に、真さんが腹をさすり始める。

 

 「いきなりどうしたんですか……」

 「よく分かんないけどさ、突然痛くなることってあるだろ?」

 

 腹を抑えて前かがみになりながら、

ゆっくり進む真さん。少しでも刺激を与えれば暴発してしまいそうだ。

 

 「腹痛の時って何故か妙に興奮するんだけど、俺だけかな?」

 「…………少なくとも僕はありませんよ」

 「なら俺だけか……」

 

 境夏さんといる時は“真面目な青年”といった雰囲気だが、僕の歓迎会の時や、今のようにアパートにいる時は何処か抜けた間抜けな面が目立つ気がする。

 

 「ほら、あと階段登るだけですよ」

 「いや……、現状態での上下運動は危険だ。1階の住人のトイレを借りる」

 

 腹をおさえ、壁に伝いながら進む姿は、腹部を打たれてもどうにか逃げようとする某国のスパイを連想させる。…………さながら分かりづらいたとえだ。

 しかし、1階には誰が住んでいただろうか。真さんから1番近い左端は空き部屋のはずだ。つまり、トイレを借りられる部屋は真ん中の―――

 

 「ロマーヌ!! ロマーヌ!! 助けて!? お願いしますお願いしますから開けてください!」

 

 ドアを太鼓のように連打する姿は哀れだったが、助けを求めている相手が犬猿の仲の少女だと思うと可笑しくも感じた。

 数秒叩き続けた後に、ドアが少しだけ開き、その間からロマーヌが顔を出した。

 

 「何ダヨ。五月蝿インダヨ」

 「頼むよ!一生に1度のお願いなんだよ。俺にトイレを貸してくれないか?!」

 

 ロマーヌが半眼でジーッと真を睨んだ後、呟いた。

 

 「…………死ネ」

 「待って!閉めないで! 初登場から数十話経ってるのに未だにトイレ行く描写がないんだよ!」

 

 真さんの願いも虚しく、扉は閉ざされ、鍵を占める音とついでにチェーンを掛ける音まで聞こえた。

 

 「ちくしょう……。人間がこんな非道な出来るはずない。アイツは悪魔だ……」

 「落ち込んでるより、頑張って二階まで行きましょうよ」

 「いや、ここで漏らしてやる……。復讐……、復讐だよ……」

 

 今にも高笑いを始めそうな真は不適な笑みを浮かべ、ベルトに手をかけた。

 

 「何してんのよ真……」

 「ああ、姉御ですか。こんな時間に起きてるなんて珍しいですね」

 「あれ? もしかして馬鹿にしてる?」

 

 突然現れた優子さんは首にタオルをかけ、手には軍手をはめていた。

 

 「何してるんですか? 優子さんの部屋は2階ですよね?」

 「なんか、昨日の晩に影山が急に引っ越したんだってさ。それで私が空っぽになった部屋の掃除をさせられてるわけ。ばあちゃんにね」

 

 影山……。たしか一階の右端に住んでいた人だ。結局顔を合わすことは無かった。

 

 「で、トイレ行きたいなら影山の部屋のやつ使っていいよ」

 「本当ですか?!」

 

 真さんの顔がパッと明るくなり、すぐさま影山の部屋に吸い込まれるようにして入っていった。

 

 「掃除大変そうですね」

 

 真さんの姿が見えなくなると、僕は優子さんに声をかける。

 

 「そうでもないよ。荷物も無いし、そんなに汚れてないからね。でも、面白いもの見つけたよ」

 

 優子さんはポケットを探り、1枚の写真を僕に渡した。

 

 「部屋の中に落ちてたんだ。多分影山の若い頃じゃないかな」

 

 写真には、少し不良っぽい見た目をした2人の少年が写っていた。2人は仲良しそうに肩を組み合ってピースをしている。

 

 「影山って不思議な奴でさ。仕事して無さそうなのに家賃は払えてたんだよね。あと、このアパートは能力者じゃないと認識出来ないって言ったじゃん? あれも影山が自分の能力でやったんだよね」

 「へー、1度会ってみたかったですね」

 「まあ会ったら会ったで、無口で無愛想なつまんない奴なんだけどね」

 

 無口で無愛想? 写真の少年からそういった印象は受けない。写真の当時から何があったのだろうか。

 

 しばらくして、真さんがトイレから戻ってきた。その表情はマラソンを終えたような、いい汗かいたとでも言いたげな清々しいものだった。

 

 「じゃあ自分、バイト行ってくるんで」

 

 そう言うと真さんは階段を駆け上がって自室へと向かった。足取りも軽い。

 

 「そう言えば、真さんのバイトって何なんですか」

 「さあ? 私も何度か聞いたけど、いつも適当に誤魔化されるんだよね」

 

 優子さんは首を傾げると、部屋の中に入っていった。

 確か、まともな収入はあると言っていたが何をしているのだろうか。

 

 「ところで、光輝くん暇?」

 

 優子さんの声が部屋の中から響いてきた。

 

 「まあ、これといった予定はありませんね」

 「じゃあ、掃除手伝ってよ。ばあちゃんから日給でるよ」

 

 その時、嗅覚が違和感で覆われるような感じがした。

 

 「日給は嘘ですね。匂いで分かりますよ」

 「あれ? 結構離れてるけどこの距離でも匂い嗅げたの?」

 

 …………そう言えばそうだ。今までは至近距離まで近づかないと能力は発動しないはずだったが、今のは“至近距離”の範囲を超えていた。

 

 「もしかしたら、特訓の成果が出たのかもしれませんね」

 

 昨日の“bar radian”での尭羅さんによる特訓。思い出しただけでも傷が痛む気がした。

 

 「まあ、日給はともかく手伝いますよ」

 

 玄関で靴を脱ぐと、半袖の袖の部分を肩までまくった。

こういう話書いてるからテンポが悪いって言われるんですかね。


でも今回の話は割と重要なんですよ

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