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高校生能力者と嘘


 07時 21分


 ひらひらのレースが付いたベッドで眠る少女。“逢莉”という名前らしい。

 

 「それで、僕は何をしたらいいんですか……?」

 

 昨夜、路上に車椅子と松葉杖を持って2時間待機したかと思えば、今は境夏さんの城並みにデカイ家に来ていた。

 ベッドの側には境夏さんと、眠っている逢莉を不安そうに見つめる、蛍という女性がいた。 

 

 「たしか、光輝さんの能力は“健康診断”みたいなことが出来るんでしたよね?」

 「“みたい”というか……、そのまんま健康診断ですね」

 「それをこの女の子にやってもらいたいのです。昨夜の火事から意識がないらしくて……」

 「私からもお願いします!」


 境夏さんと蛍さんにお願いされて断る理由もない。誰に頼まれても断る理由は無いけど…………。

 逢莉の手に鼻を近づけ、息を深く吸い込む。

 

 「なんだか白雪姫みたいなシチュエーションですね……」 

 「見てるこっちが緊張しますよ」

 「……少し黙っててください」

 

 外野は無視、逢莉の匂いから得た情報を整理してから顔を上げた。

 

 「凄い不思議な匂いがいくつか有りましたが、火事が原因と思われる“匂い”は無いですね。そのうち起きると思いますよ」

 

 僕からの報告を受けると、蛍さんが「よかったぁ……」とその場に膝をおった。

 

 「光輝さんの能力は正確だと思いますから、蛍さんも安心していいと思いますよ。……多分」

 「境夏さんは曖昧な感じに言ってますが……、今まではずれた事無いので大丈夫です。僕が保証します」

 「お二人ともありがとうございました。それにしても、光輝くんの能力凄いですね! 将来はお医者さんになれますよ!」

 「…………ありがとうございます」

 

 医者になれると言われても素直に喜べない。確かに僕の能力は、こういった使い方が正しいのだろう。でも、“医者”と聞いて真っ先に想像してしまう人物。それの後追いをしているみたいじゃないか。

 

 「逢莉ちゃんの無事が分かったところで、向かいましょうか」

 「向かうといいますと……?」

 

 境夏さんが何の事を言い出したのか分からない。何かイベントでもあるのだろうか。

 

 「昨夜の件で、“能面”に関わっている人間が増えましたからね、情報共有の為にも会議を開くことになりました。 蛍さんも、逢莉ちゃんが気になるかと思いますが参加して頂きたいです」

 「なるほどー、能面ですねー」

 

 適当に返事をしてみたものの、“能面”が何なのか全く分からない……。なんだろう皆で舞台でも見るのだろうか。

 

 

 

 07時31分

 

 リビングルーム。と言っても家が広すぎて正確には違うのかもしれないが、大分広い部屋に縦長の机と上質な椅子が設置されていた。そこに真さん、尭羅さん、そして誰だか分からないが目にかかる位の黒髪で整った顔立ちの青年も座っている。

 

 「それでは始めましょうか」

 

 境夏さんに座るよう促され、知らない青年の横に腰掛けた。

 

 「ここに居る人間は“能面”と何かしらの関わりがあると思います。まずは、皆さんがどうして奴を追うのかを聞きたいのですが……」

 「……それなら俺から話そう」


 バッと尭羅さんが立ち上がった。松葉杖もいつの間にか持たなくなっていたが大丈夫だろうか……。

 

 「俺が“能面”を初めて観たのは三日前だ。仕事中にいきなり現れやがった。不意打ちってこともあってコテンパンにやられたよ。やられっぱなしってのは大っ嫌いでね。そこの光輝を使ってどうにか“能面”を探し出そうとしてて、真達に合流したわけだ」 

 「え? ちょっと待ってください。僕は、そのよく分からない“能面”を探し出すために“あの”過酷な訓練を受けさせられたんですか!?」

 「そうだよ。でも体が鍛えられてちょうど良かっただろ?」

 

 なんの謝罪もなく尭羅さんは椅子に座り直した。鍛えるとかのレベル超えてボロボロなんですけどね……。

 

 「次は僕が……」

 

 立ち上がったのは隣に座る青年だ。

 

 「僕、矢黒と言います……。特に“能面”と関わりは無いんですけど、奴の正体を暴きたいと考えていました。そんな時に昨夜の火事で皆さんに遭遇したわけです……」

 

 丁寧な口調に静かな声だと視覚は認識したが、僕の嗅覚はそれにNO!を突き付けた。

 この男、“嘘の臭い”がする……。

 一見大人しそうに見える彼だが、今の発言の中に嘘が潜んでいるのだ。情報共有の場で嘘をつくメリットはなんだ? 僕には想像もつかないが、彼には“裏”がある。

 そう思った瞬間、僕には矢黒が、誠実そうな皮を被ったバケモノに見えてしまった。

 

 この不信感を本人に問い詰めようとした瞬間、室内にケイタイの着信音が響いた。

 

 「お? 悪いな」

 

 真さんが電話に出る。しばらくの間、室内にある音が真さんの電話への返答だけになる。

 

 「悪い。バイト先から電話で、今すぐ向かわなきゃ行けなくなった」

 「急がなきゃいけない用事なんですか?」

 

 境夏さんが心配そうに真さんを観る。

 

 「社長から直接呼び出されたからな。悪い、境夏。今はバイトなんて行ってる場合じゃないのは承知してるが、どうしても行かなきゃいけないんだ」

 「……私と真さんを裂くのはいつもその“バイト”ですね」

 

 頬を軽く膨らませた境夏さんが「もう知りません」と目を逸らした。

 

 「まあまあ、そんな怒らないでくれよ……。それじゃあ行くか光輝」

 「え?」

 

 唐突に現れた自分の名前に動揺を隠せない。

 

 「だってお前、“能面”なんて知らないだろ? 俺が送ってくからアパートに帰ろうぜ」

 「でも、いいんですかね?」

 

 こういう場面は、居るのも緊張するが、途中で帰るのはもっと緊張する。しかし、境夏さんも「そう言えばそうですね」と納得しているし、尭羅さんも帰れと言わんばかりに手を振ってくる。

 というわけで、この場にいる理由が無くなった僕は、真さんと一緒に帰ることになった。

 

 

 

 07時 52分

 

 「ところで、真さん。ちょっといいですか?」

 「何だよ」

 

 帰りの電車に揺られながら、真さんに尋ねる。

 

 「逢莉ちゃんっているじゃないですか。どんな子なんですか?」

 「なんだよ。恋しちゃったのか?」

 「いえ、そういう話ではなく。さっきあの子の匂いを嗅いだんですけど、何故か僕と同じ匂いがしたんですよ」

 「そんな不思議に思うことか? 柔軟剤が同じとかだろ」

 

 真さんは「呆れた……」と大きな欠伸をする。昨夜は殆ど眠れていないのだろう。それにつられて僕も欠伸をした。

 

 「違うんですよ。何ていうか、能力関係の匂いが同じなんです。能力者によって匂いが違うはずなのに、僕とあの子は同じような匂いなんですよ」

 「逢莉もお前と似たような能力なんだろ? 起きたら聞いてみろよ」

 「…………そうしてみます」


 既にだいぶ登っている夏の朝日が電車内の僕達を照らしていた。 

 

 「あ、それとですね」

 「今完全に終わる流れだっただろ……」

 「あの矢黒っていう人には気をつけてください。何か裏がありますよ。きっと」

 「…………覚えとくよ」

ゴールデンウィークだし二話投稿しようとか考えていましたが、結局無理でした。


知り合いに「能力が分かりづらい」と指摘されたので、既に終盤ですが能力の設定とかを投稿しようかと思ってますね

修正もまともにやってないのでどうなるか分かんないですけどね

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