高校生能力者と車椅子と松葉杖
20時 10分
「痛ってー」
“bar radian”から出て帰路を歩き始めた。夜風に触れただけで傷が痛む。 これが世にいう“痛風”というやつだろうか。
「どうだ? 特訓の成果はでたか?」
僕の横を松葉杖で歩く尭羅さんが訪ねる。
「そんな簡単にでたら苦労しませんよ……」
ボロボロにやられた初戦の後も特訓は続き、全てが終わった今では身体中に包帯が巻かれている。これじゃあハロウィンのミイラ男もいい所だ。
「でも、昔は能力を使えば使うほど嗅げる情報も増えていきましたから……。少しずつは成長してるのかもしれません」
「“昔は……”ってことは最近まで違ったのか?」
「違ったというか父が能力者を嫌ってましたから、僕の能力の使用を禁じてたんです」
「…………なかなかめんどくさい親だな」
父のことを話したからだろうか。ふと、家のことを思い出した。
母さんは割と気楽だから家出のことは気にしていないだろう。問題は父さんだ。もしかしたら血眼になって僕を探してるかもしらない。しかし、ケイタイには着信がないので案外全く気にしていないのかも……。何だかそれはそれで寂しいなあ…………。
「そんな事より腹減ったな。奢ってやるからラーメンでも食いに行こう」
「出来れば冷やし中華みたいな冷たいものが食べたいんですけど……」
「馬鹿野郎! 熱いときに食べる熱いものが上手いんだよ!」
僕の案が聞き入れられる訳もなく、僕達はラーメン屋を求めて繁華街を彷徨いはじめた。
見覚えのある2人を見かけたのは、ちょうど階段を降りきった時だ。車椅子を押しながら僕らの方に掛けてくるのが見える。
「あれ? 真さんと境夏さんじゃないですか」
「あら、光輝くんでしたっけ? こんばんは」
2人は階段まで来て立ち止まると、真さんがすかさず境夏さんを抱きかかえた。
「悪りぃ光輝! この車椅子頼んだ!」
「いいですけど……。そんなに急いでどうしたんですか?」
「“能面”ですよ。ついに現れたんです」
“能面”と言われても何のことか分からない。僕が車椅子に手を掛けたのを確認すると、真さんは安心したように階段を掛けていった。 境夏さんをおぶっているとは思えないほど力強く段を上がっていく。
「どうします尭羅さん。この車椅子のります?」
冗談で言ったつもりだったが、尭羅さんは真剣な眼差しで真さんの背中を見ている。
「光輝、悪いがラーメンはまた今度だ。ついでに松葉杖頼む」
「えぇ!? いきなりどうしたんですか。ていうか歩けるんですか?!」
「別に折れてるわけじゃないからな。じゃあ頼むぞ」
彼は松葉杖を放り投げると、包帯が巻かれた足で真さん達を追っていった。
状況が掴めないままその場に棒立ちになる。
アパートに戻ろうかと思ったが、そうすると尭羅さんに松葉杖を渡せなくなってしまう。……ゆっくり考えようと車椅子に腰を降ろした。
本来なら先週投稿する予定だったつなぎの話です。
だんだんメンバーが集まっていきます




