感覚共有者と写真
15日に負傷してからの2日間は、境夏の勧めもあって、彼女の屋敷で良い言い方をするなら看病、悪く言うならヒモ生活を送った。
19時45分
「看病してもらって悪かったな」
「いいんですよ。真さんがお怪我をなされたんですから、当然のことです」
境夏の熱心な看病のおかげか背中の傷はだいぶ塞がり、自分のアパートへと帰ることにした。
「ご希望なら屋敷に暮らしても良かったんですよ?」
「魅力的だけど遠慮しておくよ。ここにいるとダメ人間になりそうだ」
ベッドに寝ているだけで何もしなくていい。食事もあるし、娯楽もある(排便用にバケツを渡されたが流石に断った)。そんな生活を送っていれば誰だって生きる為の機能を失うだろう。
玄関の扉を開けると夏の夜風が室内に吹き込んだ。夏の夜にしては少し涼しい方だろう。
「大変有意義な2日間でしたね」
「あ……ああ、俺は寝てただけなんだけどな……」
境夏も四六時中俺の隣にいたのでお世辞にも有意義とは言えないと思うのだが…………。
「別れは寂しいですが、なかなかレアな物が手に入りましたから、それを糧に次回会う時まで凌いでみせましょう」
「その“レアな物”には触れないことにしておくよ……」
二日ぶりに出る外はいつもと代わり映えが無くて少し安心した。傷が痛まない程度に伸びをする。
「じゃあ、またこん―――」
境夏の異変に気づいたのは別れを告げようとしたその時だ。
顔を苦痛に歪ませ、上半身を捻りながら“何か”を取り出そうとしている。
「熱つ!」
境夏が反射的に手を離した“物”は羽毛のように空中を舞いながら床へと落下していく。
「大丈夫か!?」
境夏へと駆け寄る。火傷はしていなさそうだが、まだ苦しそうだ。
「大丈夫です……。それよりもその写真を……」
境夏の言う写真を拾いあげる。未だに熱を持ったそれは、二日前に能力物で“能面”を撮影したの写真である。しかし不思議なことに、その写真のインクがそれぞれ動き始め、何かの地図のような配置になった。
「なんだよこれ? どこの地図だ?」
「本来その写真は、探している人物の居場所を撮すものです。“能面”は何かしらの方法で居場所が特定されるのを妨害していたのでしょう。でも、何故か今はその妨害が出来ない……」
「つまり、この地図の場所に“能面”の野郎がいるってことだよな!?」
「その通りです」
境夏の呼吸は自然と荒くなり、彼女は自身の顔を両手で覆った。
「4年ですよ? 4年。 4年間もこの日を待ちわびていました。もう少し……、もう少しですよ?兄さん。もう少しで何もかも元に戻りますから…………」
両手で覆われた顔には、彼女の愉悦で緩んだ口元だけが微かに見えるのだった。
本来の予定だと二話同時投稿だったのですが、予想より忙しくなってしまいました。 そのうち投稿すると思います




