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19時04分 後編(孤児院)

2話同時投稿です。


前編後編とかいう大層な題名ですが、正直後編から読んでもなんの問題もありません。


ただ、“同時刻に起きたこと”みたいにしたかったのです。


“ワカサギ孤児院”で昼食をご馳走になり、その後もゆっくりと過ごしていたが時計も19時に近づいてくると流石に帰ることになった。

 

 19時02分

 

 「あの馬鹿に次は顔出すよう言っときな」

 「…………伝えておきます」

 

 結局、鳳京が行方不明だということは伝えなかったのか、蛍は立華から目を逸す。

 見送りに来た立華を横目に見ながら車のドアにもたれ掛かった。


 「逢莉ちゃん!」

 

 急に名前を呼ばれビクッと肩を震わせる。見ると、薄手のパーカーを羽織った絢七がサンダルを履いて立っていた。お風呂上がりなのだろうか髪が少し湿っている。

 

 「どうしたの?」と問いかけると、絢七はすこし尻込みをしてから「あのね……」と話し始めた。

 

 「私、友達になった子の名前は全部覚えたいと思ってるの……。だから、逢莉ちゃんの名字もおしえてくれない?」 

 

 昼間の活発さは太陽と共に沈んでしまったのか、彼女は照れくさそうに言ったのだ。

 

 「五月女さおとめ。五月女逢莉よ 」

 

 こちらまで恥ずかしくなってくる本日2度目の自己紹介を終えると、絢七の顔も明るくなり、私の両手を包み込む形で手を握ってきた。

 

 「逢莉ちゃんの名前にも数字が入ってるんだね! もしかしたら私達の“仲間”……かもね」

 「仲間?」

 「え……? あ、ごめんね……。私変な癖があってさ。たまに不思議な事言っちゃうんだ。だから気にしないで! しゃっくりみたいなものだと思ってさ」

 

 本当に変な癖だと思いながらも特に問い詰めることはしなかった。

 いつの間にか蛍が車に乗り込んでいて、車内から私を呼んだ。

 

 「今度はいつ会えるかな」

 「さあ、どうでしょうね。私の意思で来れるわけじゃないし」

 

 窓を開け、シートベルトを閉めながら答えると、丁度車のエンジンがかかった。

 

 「そう……。でも、次来る時は鳳京さんも連れてきてね。早くお母さんのこと聞きたいからさ」

 「分ったわ、伝えとく。 それよりも貴方の名字は何ていうのよ」

 

 彼女の言った“友達”という言葉が心に残ったのだ。

 

 「私? 私は不知火しらぬい。不知火 絢七だよ」

 「そう。難しい名前ね……」

 「逢莉さん。そろそろ出発しますよ」

  「分かったわ」

 

 その返事が合図となり、リズミカルなエンジン音をたてながら車が夕暮れに照らされた道を進み始めた。

 手を振る絢七に窓から身を取り出して手を振り返した。

 

 

 

 

 19時11分

 

 「なかなか楽しんでいましたね」

 

 出発してからしばらく経った頃に蛍が口を開いた。

 

 「外見だけ子供の大人が本物の子供に混じっていただけよ……」

 「その割には絢七さんと仲良くしていたみたいですね。初めてのお友達ですか?」

 

 なんだか馬鹿にされてるみたいでムカついたが、「別に初めてじゃないわよ」と丁寧に否定した。

 

 「ずっと病院で暮らしてたって言っても友達位は自ずとできるわ。結構沢山いたのよ? ……今はどうしてるか分からないけど」

 「…………それは失礼しました」

 「なんか恐ろしい方向を考えてない? 確かに蛍が想像してるであろう子もいたけど、元気に退院して行った子もいる。でも、悲しいのは…………」

 

 口ごもったが続きがないわけではない。悲しいのは…………その子達の名前を私が忘れかけていること。 彼ら彼女らとの思い出は確かに覚えているのに名前を正確に言い当てることの出来ない私がいる。

 だからこそ絢七の名字まで聞いたのかもしれない。

 

 「…………逢莉さんが遊ぶ姿が見れて安心しましたよ」

 

 私が黙ってしまったからか、蛍が話を逸らしてくれた。逸らした先がなかなか恥ずかしい話題という点は許そう。

 

 「普通に遊べるわよ。私の能力は“ 目を開いてる時は身体の時間が止まる”とかいう呪いみたいなもんだから今みたいにある程度体が成長していれば特に問題はないわ。怪我とかしたら最悪だけどね」

 「大変というと?」

 「体の時間が止まるってことは怪我の治りも止まるってこと。つまり、治すためにずっと目を瞑ってなきゃいけないの。骨折とか気が狂うほど長いわよ?」

 「それはキツイですね……」


 蛍の携帯電話に着信が入る。

 

 「すいません。逢莉さんが出て頂けますか?」

 「ええ……。自分で出なさいよ」

 「運転中に電話してるのがバレたら罰金になるじゃないですか!!」

 「拳銃持ってるようなやつがよく言えるわね」

 

 蛍がゴールド免許の話まで持ち出して来たので渋々出ることにした。

 

 「『“メガネ”さんからの着信です』って書いてあるけど……誰のことよ」

 「ああ、羽田慈さんですね」

 「意外と毒吐くよね……」

 

 羽田慈とは組合に所属している「まあ、」が口癖で眼鏡を掛けた青年である。彼が電話してきたということは“能面”の件で発展があったのだろうか。

 しかし、電話に出ても彼の声が聞こえてくることはない。

 

 「出るのが遅いから怒ったんですかね?」

 

 電話の向こうからは何か聞こえるがハッキリと聞き取れない。ただ、人間の声でないのは確かだ。

 

 「間違えてかけてしまったのでしょう。もう切っていいですよ」

 「言われなくても……」

 

 通話を切ったが、好奇心に耐えきれなくなり、登録された通話帳を覗いてみることにした。『短気なアホ』『せっかく取っていたアイスを理も入れずに食べた奴』などなかなか闇の深い内容になっている。

 見なかった事にして蛍に返した。

 

 「蛍もストレス溜まってるのね」


 誰にでも敬語を使っているがやはり蛍も人間。世の中には抱えきれなかったストレスを爆発させてしまう哀れな人間がいるのに比べて、なんて可愛らしいものだろうか。

 

 「どちらにせよもうすぐ本部に到着しますからそこで聞いても遅くはないでしょう」

 

 蛍のアクセルを踏む力が強まる。 


ここまで読んでくれる貴方は優しい人なんでしょう。そんなことはどうだっていいのです。裏話というか設定みたいなことを犯人が独白していくように書いていこうとおもいます。


と思っていざ書き始めたら本編より長くなりそうなので完結後にでもやります。(裏切ってくスタイル)

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