高校生能力者の新居
急いで書いたのでいつもより誤字脱字は多そうです。そしていつもより短いです。
8時02分
大家さんの家を出て、今はアパートの階段を優子さんについて行くかたちで登っている。
僕は優子さんの腰についた懐中電灯を見ていた。どこにでもあるようなデザイン。しかし、長年使われているのか、この距離でも傷が見えた。
「優子さん、その懐中電灯、いつから使ってるんですか?」
優子さんが振り返り、懐中電灯を
手に取る。
「これ?どうだろうね〜、ばあちゃんから貰ったのは覚えてるけど、いつ貰ったのかまでは思い出せないかな」
そう言うと、再び階段を登り始め、二階まで登りきった。
「じゃあ、ここが光輝くんの部屋ね」
言い渡されたのは階段に近い手前の部屋。
優子さんはポケットから鍵を取り出し、扉を開けた。その瞬間、熟製されたカビの臭いが漂う。僕は堪らず鼻を手で覆った。
「優子さん、ここの部屋、どのくらい空いてたんですか?」
優子さんは臭いなど気にしてない様子だ。
「少なくとも半年以上は誰も入ってないね、臭いとか大丈夫?」
半年でここまでなるとは、このアパート自体も古そうなので、無理も無いのかもしれない。
「ま、まぁ、耐えられます」
はっきり言って、入る前からだいぶキツイ。しかし、人間は慣れていく生き物だ。いつか慣れるだろう多分………。
「じゃあ、入りますね」
僕は玄関で靴を脱ぎ、奥へと進んでいく。内装は優子さんの部屋とほとんど変わらない。違った点は家具が無いことくらいだろうか。
いつの間にか臭いも気にならなくなってきた。やはり、人間は慣れるものなんだな。
「光輝くーん」
玄関から優子さんの声がした。
「自分の部屋を手に入れたところ悪いんだけどさ、仕事仲間を紹介をたいから出てきてもらえる?」
「わかりました」
僕は玄関へと戻り、靴をはいた。
「仕事仲間ですか?」
「うん、ていっても、私の高校時代の後輩で、私の隣に住んでるんだけどね」
ということは、階段から一番離れたあの部屋に住んでいるということになる。
優子さんはその仕事仲間が住んでいる部屋へと向かい、ドアをノックした。しかし、返事はない。
「あれ?おっかしいな。流石にいると思うんだけど」
優子さんはさっきよりも強くノックした。
「おーい真、まだ寝てんの?早く出てこーい!」
しばらくして、ドアがゆっくりと開かれた。
「誰ですか?」
そこにいたのは髪がボサボサで眠そうな目をした青年だ。黒色の髪を掻きながら、大きなアクビをしている。
「おはよう、真。昨日ぶりだね」
真と呼ばれている青年が優子さんに気づく。すると、真の態度は一変して、眠そうだった目は一瞬で起きた。
「あ、姉御でしたか!おはようございます!」
真は深々とお辞儀をして、顔を上げた。
「何のご用ですか?」
「仕事仲間と住居人が増えたからね、紹介しに来たよ」
優子さんは僕の方を見た。自己紹介しろ、ということだろう。
「一ノ瀬光輝です。今日からこのアパートにお世話になり、優子さんの元で働かせてもらいます。これからよろしくお願いします」
僕もお辞儀をする。
「ご丁寧にどうも。杉山真、大学生です。姉御とは高校時代に知り合いました。あの時の姉御は今と変わらず美しく、そして可愛かったです。今でも毎日、姉御可愛い、姉御可愛い、と思いながら姉御の元で働いています」
後半から優子さんの話になっていた気がするけど…。
「真は変わった奴だから気にしないでよ」
ちょっと変わりすぎてる気もする。
「それで真、ロマーヌちゃんも紹介したいんだけど、まだいるかな?」
優子さんは首をかしげた。
「うーん、流石に仕事じゃないですかね」
知らない名前が出てきた。
「あの、ロマーヌちゃんって誰のことですか?」
優子さんに聞いてみる。
「ロマーヌちゃんはね、一階に住んでて、本業はパン屋なんだけど探偵の仕事もたまに手伝ってくれる娘だよ」
どうやらここの住人のことらしい。パン屋で働きながら、優子さんの手伝いもするなんてなかなか凄い人だ。
「まあ、仕事なら仕方ないか」
優子さんはため息混じりで言い、顔を俯かせる。しかし、何か閃いたように顔を上げた。
「そうだ、光輝くんの歓迎会をしよう。このアパートの住人全員呼んでさ」
僕の歓迎会?別にそんな事しなくてもいいのに。
「遠慮なんてしなくてもいいよ」
しかし、優子さんが僕の気持ちを見透かしたように言った。別にやって欲しくない理由もないのでここは優子さんに合わせておこう。
「真、私の部屋に集合ってことで全員呼んでおいてね」
「全員って言っても俺らとロマーヌを除いたらあと1人しかいないじゃないですか」
真が鼻で笑う。
「じゃあ、光輝くん。歓迎会の時にみんなを紹介するから、その時までに面白い自己紹介でも考えておいてね。と言うことで一時解散!」
優子さんはたまにむちゃブリを言う。しかも、冗談なのか本気なのかわからない。
8時23分
あれから、僕は優子さんの部屋から荷物を取ると、時間まで自由にしてて。と言われたので、今は自分の部屋で天井を見上げている。
ほぼタダで貸してもらってるとはいえ、高校生で自分の家を持っているというのはなんだか誇らしげに感じていた。優子さんの時間とは何時の事なんだろうか、聞いておけば良かった………。
午後4時15分
窓から入る夕焼けの光と蝉の鳴き声で目が覚めた。携帯の時計を見ると4時過ぎだ。完全に寝ていたらしい。大体8時間程寝ている。自分でも気づかないうちに疲れが溜まっているのかもしれない。
優子さん達は何をしているのだろうか?僕の歓迎会の準備だろうか?僕もなにかした方がいいのかもしれない。優子さんにやる事があるか聞きに行った方が良さそうだ。僕は玄関へと向かい外へ出た。
夏のこの時間はほとんど昼間と明るさが変わらない。アブラゼミのジーっという音が耳に入ってきた。夏のこういう雰囲気はとても好きだ。僕は優子さんの部屋へと向かった。
優子さんの部屋のドアをノックする。すると、すぐにドアは開かれた。
「あ、光輝くんか。歓迎会ならもうちょっと後だよ」
ドアの間から食べ物の香りが漂ってくる。料理をつくっているようだ。
「いえ、何か仕事はあるかと思いまして」
優子さんは顎に手を当て、うーんと考える。
「じゃあ、お使いに行ってきてもらおうかな。飲み物とか足りないし」
初めての仕事はお使いに決定した。
杉山真 の真。これの読み方は「まこと」が正解です。
読み仮名の付け方が分からなかったのでここに書いておきます。後書きまで読む人もいないとおもいますけどね。