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自己時間停止少女の起床

久しぶりに愛莉の話になります。既存のキャラで14、15日に登場しなかった2人の8月16日が始まります。


 草の茂った荒地に私は立っていた。

 「こんにちは。お嬢さん」

 背後から声がする。見ると、1人の青年が立っていた。髪はオールバックで、髭は薄く、高校生と言われても違和感はない。

 「いやー、なかなか上手に扱えたね。僕は初めての時もっと暴れてたけど」

 「なんの話?」

 「君と僕の話さ。記憶には無いかもしれないけど、君は超絶カッコよく炎を纏ってさ、見事蛍を救ったわけだ」

 青年の話が一向に掴めない。根本的に彼は誰なんだ。そして、この場所はどこだ。

 「ここはどこ? とか考えてるんだろ。そして、この目の前にいるお喋りなハンサムガイは誰とも考えてる。なんで分かるかって? そりゃそうだよ僕は君の中にいるんだから。心情くらい分かるさ」

 相変わらず訳が分からない。心情が分かるという割には彼の事をハンサムなんて少しも考えていなかった。

 「あ、今の君の中にいるって言うのは、いやらしい意味ではないよ。ただ純粋になんの比喩もなく、事実を述べたんだ」

 「結局何が言いたいの?」

 その時サイレンの音が荒野に響いた。聞いていて心地の良いものではない。

 「そろそろ時間みたいだ」

 青年は右腕につけた腕時計を覗いて言った。

 「じゃあね愛莉ちゃん。怖くなったら 目を瞑りな。そしたら僕が助けに行くから」

 「さっきから訳わかんな―――」

 浮遊感を感じたのはその時だ。微温いお湯に入った感じと似ている。

 

 目が覚めて初めて、さっき迄のが夢だと察した。

 「どこよ……ここ」

 目が覚めても自分がどこにいるのかわからない。白いシーツに、白い布団。これだけなら病院に戻ったのかと考えたが、部屋の内装がその考えを阻んだ。壁は白色で塗られてはいるものの、ムラがありヒビも入っている。部屋の淵にもゴミや本が散乱していた。

 「あ、目が覚めたんですね。愛莉さん」

 聞き覚えのある声だと思ったら蛍だ。手には器の載ったトレイを持っている。

 「良かったですよ。愛莉さんずっと寝てるから一生このままなのかと」

 「ずっと? 私何時間寝てたの?」

 「だいたい2日間まるまるですから……48時間以上は寝てますね」

 「48時間!?」

 自分が気づかないうちにまる2日も時間が進んでいた。そんな事言われたってすぐに理解できるわけがない。

 お腹が鳴ったのはその時だ。獣が威嚇するような音。愛莉は恥ずかしくなり顔を少し赤らめる。

 「それよりお腹空いてるでしょ。食事を持ってきましたから食べながら話しましょう」 

 

 

 

 8月16日 9時29分

 愛莉はおかゆを啜りながら、隣に座る蛍の話に耳を傾ける。

 「寝る前の事はどのくらい覚えていますか?」

 愛莉は三日前、13日の事を思い出す。

 「たしか、蛍と病院をぬけだしたら地下鉄に乗って、そしたらなんかが襲って来て…………。あっ! その浮浪者はどうなったの?」

 「……やっぱり覚えてないんですね。あの方なら愛梨さんが組長の能力で追い返しましたよ」

 愛莉の手にもっていたスプーンが落ちた。思考が追いつかない。まともな人間にすら劣る私がどうやってあの浮浪者を追い返したというのだ。組長の能力を使った。なんて信じれるはずが無い。

 「それからは私がここまで運んでこのベッドに寝かせました」

 「じゃあここは……」

 「組合の本部です」

 そうかここが……、と愛莉はもう1度部屋の中を見回す。……やはり何度観てもボロボロで、物置のような部屋だ。この部屋だけボロという訳では無いだろう。

 「それで、起きてすぐにで悪いんですが、会議に参加して頂きます」

 「会議? 私、大人数の前で話すのとか嫌よ」

 「その点は心配いりません。話すと言っても幹部数人の前です。それにみんな優しい方ですよ。……普段なら」

 「え、今は普段じゃないの?」

 「前にも話しましたが、組長が殺されたんですよ。正確にいうと行方不明なんですが、犯人探しで皆さんイライラしているんです」

 「えぇ……」

 そんな殺伐としていそうな空間に連れていかれると思うと身がすくんだ。いきなりナイフで刺されたりしたらどうしようと子供じみた妄想が次々浮かぶ。

 蛍は空になった食器を受け取ると席を立った。

 「それじゃあ行きましょうか」

 「ほんとに行かなきゃダメ?」

 「……この部屋から出たくないならいいですよ」

 「ほんと?」

 「皆さんがこの部屋に連れてこられてイライラが増すだけですけど」

 「じゃあ行きます。行かせて頂きます」

 

 

 

 「ここが会議室になります」

 蛍に案内されるままに付いていくと、大きな扉の前に到着した。愛莉の寝ていた部屋から数分歩いたが、誰かとすれ違うことはなかった。組長が殺されたと言っていたし、皆犯人を探しに外に出ているのかもしれない。

 「気が重いなあ。痛い事とかされないよね?」

 「それは無いかと思いますけど……」

 蛍がゆっくりとドアノブを回す。

 本当に優しい人達だといわいなあ……。愛莉は少し身構えた。

もうちょっと書く予定だったのですが、時間がとれなくて2000字程で今回は終りです。


前書きでも書きましたが、14、15日に参加してなかった2人ですが、もう1人登場してない男がいますね。影山は忘れられた訳ではありません。近いうちにスポットライトがあたると思います



来週は投稿を休むかもしれません。

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