状態統括者の休業
お久しぶりです
本当は2話同時に投稿したかったんですけど間に合いませんでした。
8月 16日 11時24分
暁羅は松葉杖の先端を使って「散産堂」の扉を思いっ切り押した。ホコリが舞う。
「おい、あの能面について説明してもらうぞ」
暁羅は怒鳴り、慣れない松葉杖を使って部屋へと入っていく。
「それより、その足大丈夫?」
空のカップ麺とゴミ袋の散乱した部屋。その奥の社長椅子に座った女がカップラーメンを片手に業務的に訪ねる。夏にもかかわらずコートを身にしたあの女。
暁羅の足は昨日の戦闘の負傷により包帯が巻かれ、1人で歩くことは出来ない状態になっていた。
「それよりじゃねぇ。早く教えろって言ってんだよ」
「熱心に聞くね。あの能面に心でも奪われちゃった? お茶でもどう? 恋話位は聞いてあげるよ」
囃し立てるように言い、女は床に転がった空の容器を手に取るとお湯を注ごうとした。暁羅も我慢ならず、女の食べているカップラーメンをひったくるとスープを氷に変えた。
「ああ!? なにすんのよ!!」
「ふざけるなよ? あの能面について知ってることを話せ」
女は仕方ないなぁと渋々暁羅の要求に従う。
「ていっても私も詳しくは知らないし、交えたのも1回だけ。巷じゃたまに噂が流れるけど正体は謎。女って言う奴もいれば子供だって人もいるって感じ」
「じゃあ何処に行けば能面に会えるんだよ」
「お前は馬鹿か。正体が分からないのに居場所が分かるわけないじゃん。でも、能力は“人を物に変える”とかだろうね」
暁羅は昨日の岩村が脳裏によぎった。一瞬のうちに扇風機に変えられてしまった彼を。
「それで。 こんなこと聞いてどうするの? 自宅に押しかけて慰謝料でも請求するの?」
「んな訳あるか。このまま負けたことにしとけるかよ。ついでにこの足の借りも返す」
「考えが戦闘民族だ。タキシードなんて着てんだからもっと知的な感じになればいいのに」
そう言い終わると、突然思い出したように机の引き出しの中を探り始め、封筒を暁羅のほうへ向け投げた。
「はい、これ」
「なんだよこの封筒」
「休業手当的なやつ。うちはホワイトだからね。その足じゃまともに働けないでしょ」
「休業? じゃあ仕事は誰がやるんだよ」
女は表情を一切変えず自身を指で指す。
「部下が動けないなら上司が動くしかないでしょ。まあ、なんて理想の上司!」
今まで散々こき使っておきながら何を今更、と暁羅はため息をついた。
「もうすぐでブラックバスの活動期間だぞ。1人でなんとかなるのか? 」
女は馬鹿にしてるのか、と鼻で笑った。
「よゆー、よゆー、だって私、お前より強いし」
挑発するように椅子にもたれかかると、その勢いで回転させて暁羅に背を向けた。
「寝るからもう帰って」
女の無礼な態度に憤りを感じながらも暁羅は封筒をポケットに突っ込んだ。不器用にゆっくりと方向転換をして出口へと進んでいった。
「どこか行くの?」
「お前に聞いても有益な情報が手に入らなかったからな。自分のルートで探ることにした」
「そう……」
女は興味なさげに返事をすると、折り畳まれた新聞紙を暁羅の足元に放り投げた。
「昨日みたいな目立つ行動は慎むように」
新聞紙を拾うと、小さくだが昨日の戦闘についての記事があった。犯人は不明とあったが、能力者同士の戦闘の可能性も示唆されていた。
「能力者に対しての風当たりも弱いわけじゃないんだからさ」
「努力はする」
松葉杖と床が擦れる音が部屋に響いていた。
次回は来週中に投稿します
3ヶ月ぶりに書くと人物は覚えてても部屋の構造とかは覚えてないもんですね。それだけテキトーって事なんですけど。




