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異能力者達の能力事情  作者: チスペレ
8月14日 ~15日
40/83

金髪少女の帰路と猫

20時02分

『ほへ〜今日の勤めも疲れたな〜』

『オマエハ何モシテナイダロ』

辺りの街頭に灯りが灯る頃、私はボロ自転車に乗り、それに負けないくらいボロいアパートへとペダルを漕ぎ始める。

『観てみろよ、綺麗な月だ。あと数日で満月になる。今月はどんな奴にするんだ?』

『……オマエガ決メル事ダロ』

頭の中にあいつの笑い声が響く、決定権の無い私を嘲笑っているのだ。

猫の声がしたのはその時だった。

『オマエカ?』

『冗談きついよ』

自転車を止め、声のした方向を見ると前足に怪我を負った黒猫が出血する傷口を舐めながら地面に寝そべっていた。

その猫は私に気づくと助けを求めるように何度も鳴き続ける。その姿を見て放っておけるほど薄情者ではないので猫へと近づき、傷口から流れる血を指で拭った。

『そんな猫に能力を使う気か?』

『私ノ勝手ダロ』

私は血を拭った指を口に咥えた。

自分の血とは別の物が体に薄く広がっていくのを感じる。

「にゃにゃにゃ!なにするにゃ!」

頭の中に自分でもあいつでもない声が響いた。

「ヤッパリ猫ハ語尾ニ「にゃ」ッテ付ケルンダナ」

「なんと失礼にゃ!僕は猫じゃないにゃ!癖で付いちゃうだけにゃ!ってか、なんで僕の声が聞こえてるにゃ!?」

猫の姿をしながら言われても説得力がない。

会話が成立してるのを見ると能力は発動しているらしい。

私は物の1部を体内に入れることで、それが生き物なら意思の疎通をすることが出来るのだ。

「何デ聞コエルトカ理屈ハイイカラ手当ヲシテヤル」

そう言ったはいいものの都合よく包帯なんて持っていない。仕方なくTシャツの袖を引きちぎり猫の足に巻いてやった。

「おお、優しいお姉さん。感謝するにゃ」

血が収まった訳では無いので包帯代わりの布切れに血が滲んでいたが猫的には感謝に値するらしい。

「ではさらばにゃ」

そう言って猫は立ち上がろうとする。しかし、バランスが上手くとれないのかすぐに転んでしまった。

「……送ロウカ?」

「感謝するにゃ!」

待ってましたと言わんばかり立ち上がると自転車のカゴへと飛び上がった。

カゴに入れるくらい飛べるなら歩くくらいできるだろ…。と思ったが口には出さず私は自転車に股がった。

『おい、耳生えてるぞ』

『当タリ前ダロ。マダ人間ノ形ヲ保ッテルンダカラ』

『違う、頭の方だよ』

あいつの言ってることが分からず、新しい罵倒かと思ったが頭に触れてみる。すると確かに髪の毛が猫の耳のような形に2つ盛り上がっていた。

猫耳が生えたのも能力の影響だ。私の能力は本来、体内に入れた物の性質と見た目をコピー出来るというものだ。もしも、猫でも丸々一匹食べれば私の姿は猫に変わる。猫では試したことが無いからわからないが…。

『人に見られたら博物館送りかもな。もしくは解剖実験だ』

『大丈夫ダ。何時デモ解除出来ル』

解除した場合、猫の声は聞こえなくなってしまうが博物館に行くよりはマシだ。

こうして私は猫のアッシーにされたのだった。




20時22分

「実は僕、この世界の人間じゃないにゃ」

『お前は根本的に人間じゃないだろアホ!』

頭の中であいつが突っ込んだ。聞こえないことを良い事に言いたい放題だ。

「むむ?今人間じゃないとか言ってないかにゃ?確かに今は猫の姿にゃ。でもこれは仮初の姿。本当は人間にゃ」

「ナラ、人間ニナッテミロヨ」

『じゃあ、人間になれよ』

私とあいつが同じような台詞を言うと、猫はわかってないなぁ、とでも言いたげな表情を浮かべた。

「なれるものならなりたいにゃ。でも、人間に戻るためにはマナが必要にゃ。そのマナを僕は毎日探してるにゃ」

『この猫ファンタジー小説でも読みすぎて頭おかしくなったんじゃねーか?』

猫は小説なんて読めないだろ……

「マナはなかなか見つからないにゃ…。でも、この前やっと手掛かりを見つけたにゃ!あ、そこ右にゃ」

家までの経路を伝えながら猫は興奮気味に続ける。

「この世界で言うところの《能力》からマナを感じたんだにゃ!これはパーカー着た男に能力を使われた時に気づいたにゃ。その後死ぬほど追いかけ回されたにゃ」

猫の想像力とは凄いものだと関心し、自転車をこぎ続けた。

「そしてそれ以降、能力を求めてそこらじゅう歩き回ったにゃ。そしたら今日見つけたにゃ。2人の人間が能力を使って戦ってたにゃ。これを逃す手は無いと思った僕は2人の間に飛び出したにゃ。そこまでは良かったけどにゃ、片方の奴が何を思ったか僕を庇ったんだにゃ。全くいい迷惑だにゃ、庇ったせいで足を怪我していい気味だにゃ。僕も怪我したんだけどにゃ……」

その庇った人は怪我したうえに、猫からそう思われてると知ったらどう感じるのだろう……。

「あ、ここにゃ。このマンションにゃ」

そこには三階建てのマンションがあった。

『うちのアパートと比べると天と地の差があるな』

猫はカゴから飛び出して華麗に着地すると、感謝するにゃと礼を言い、自宅へと歩き始めた。

しかし、猫は途中で止まるとこちらを向いた。

「もしかして……、君は……」

『おい、人が来たぞ。耳隠せ』

あいつが言い、急いで能力を解除した。すると、猫の声は本来のニャーという鳴き声に戻る。

「よーし捕まえたー」

猫の後方から来た女が猫を捕まえた。その後に送れて少年が駆けてくる。

「本当に戻ってきましたね優子さん!」

宝の山でも見つけたように嬉々とする2人は私に気づくと、その宝を見せびらかすように近づいてきた。

「誰かと思ったらロマちゃん!パン届けに来てくれたの?」

「イヤ、通リカカッタダケダ」

優子は私を見かける度にパンの事を話す。彼女の中ではロマーヌ=パンという方程式ができているのだろう。

『こいついつもパンのこと言ってるよな』

あいつも同感のようだ。言葉はあいつの方が流暢だが考える事は同じなのかもしれない。

「私ハ帰ル」

そう優子達に別れを告げて、自転車を漕ぎ始める。

猫が最後に言おうとしてた事はなんだったのだろう……。あの猫の事だからくだらないマナとかの事だろう。でも、彼の言った《別世界》という言葉が妙に頭に残り、不思議な親近感を感じた。

空を見上げると、少し欠けた月が私を嘲笑っているようにも見えた。

今回で15日は終了です。岩村の話が中心になっていますが、15日は今後の展開の伏線を貼るという目的もありました。

早く続きを書きたいのですが、別の作品のアイデアがあり、息抜きがてらそっちを書いてみたくなったので少しの間、この作品の更新を休みます。連載をやめる訳では無いので気長に待っててくださればそのうち41話が更新されているとおもいます。

その新しい作品を読もうと思う物好きな方はそこで会いましょう。もしくはこの作品の41話で会いましょう。

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