感覚共有者のデート 2
14時10分
子供たちの決起盛んな声が溢れている昼下がりの公園。俺はベンチに座り境夏はその横にいた。
「じゃあそろそろ始めるか」
「はい……」
スカートの中に手を通し境夏の細い太ももに触れた。
「あぅ……」
「変な声出さないでくれよ、ただでさえ勘違いされそうなんだから」
公共施設で何やってるんだ!とか言われる前に説明しておくと、別にどこぞのバカップルのようにイチャコラしてる訳ではない。これからやることを見てればわかると思うがこれは必要な下準備なのだ。
「そろそろいいかな」
そして、その手をそのまま自分の太ももに当てた。この作業をもう片足でも繰り返す。
「よし、できた。一応確認してみるか」
ゆっくりと自分の右足を伸ばす。すると、境夏も同じように右足を伸ばした。
「成功したみたいですね!」
「そうだな。じゃあ右足からゆっくり立つからな」
言ったとおりに右足を境夏の歩幅に合わせて踏み出し、立ち上がった。
さながら二人の間に鏡があるのかと疑うほど全く同じ体制とタイミング。車椅子の彼女が立ち上がるのは不思議に感じるかもしれないが、タネは簡単なことだ。自分の能力を使い二人の足の役割を共有したのだ。自分が足を動かせば境夏も同じ様に足が動く。こうすれば境夏も歩くことが出来るため「リハビリ」と称してほぼ会う度に行っていることだ。
「おっとっと」
「大丈夫か!?」
境夏が体制を崩し俺の方にもたれかかる。俺は彼女の肩に手を当てて支えた。
「久しぶりで上手く立てない様です……。真さんこのまま支えてください」
そんなことはないと思うんだけど……。境夏が望むのならそれでいいか。
「じゃあ行こうか」
そう言って境夏の歩幅に合わせて歩き始める。
足の動かない境夏はこうして能力の効果を受けている間だけ歩くことができる。でも俺と同じ動きしかできないから俺が転べば境夏も同じ目に遭う。
「折角のデートなのに負担をかけてしまってごめんなさい真さん……」
「いつもの事だろ?こうやって寄り添って歩くのも一興だろ」
「私が自分で歩けるようになれば良いんですけど。……こんな調子ではいつまでたっても……」
「……そんな事無いさ、絶対治るよ」
そのまま公園を何周かしてスタート地点のベンチの前に戻ってきた。
15時00分
不意に俺の携帯のアラーム音がなった。時計を確認すると3時ピッタリだ。
「そろそろバイトの時間みたいだ」
「あら、もう帰ってしまうのですか?まだ一緒に居られると思っていましたのに…」
「ごめんな、駅まで送っていくからさ」
切なそうに顔を俯かせる境夏を車椅子に座らせて再び彼女の太ももに触れた。これで能力は解除され、俺が動いても境夏に影響は無い。
車椅子のグリップを握り集合場所だった駅に向かった。
15時20分
「じゃあ境夏。また今度な」
「ええ、また明日合いましょう」
「明日!?明日は早すぎやしないかな?」
「でも12日にドタキャンされましたし、その分を考えれば妥当だと思いますけど」
12日、そう言えば姉御に仕事が来て手伝わされたんだっけ。
「しかも、待ち合わせの30分前に電話ごしに言われたんですから、それまで胸踊らせていた私の身にもなってくださいよ」
「わかったわかった、悪かったよ。明日も一緒にいよう」
「ふふ、じゃあ真さん。また明日会いましょうね」
そう言うと境夏はUターンをして方向を変え帰っていった。彼女の後ろ姿を見て自分も少し切ない気持ちになりながら改札へと向かと向かった。
今回も短くてすいません。そして、15日に繋げるための話でもあるので内容も薄いです。次回からは元に戻ると思います。
読んでいただきありがとうございました。
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