影支配者の仕事 2
誤字脱字があってもお気になさらず読み終わった後にでも指摘してください。
目線変更したいところで話を切っていく予定なので、一つ一つの話はそこまで長くないかと思います。
11時52分
「ま・こ・と!ま・こ・と!起きてるかー?」
優子がリズムよく扉をノックする。すると、扉は開かれ真が顔を出した。
「おはようございます姉御」
「おはよう。と言うよりはこんにちはかな? 突然なんだけどさ何の用だと思う?」
にこやかな顔で優子が言うと、真は少し下を向き顎に手をあててウーンと考え始めた。そして、何か思いついたのか顔を上げた。
「分かりました!ゴキブリがでたんですね!?」
「ゴキブリ出たらこんな、にこやかに来ないわよ!!」
「じゃあ何ですか?」
真が本気で分かっていなさそうで優子はため息をついた。真は天然なのかボケてるのか分からなくなる時がある。
「普通に仕事よ、さっき依頼が来たの」
「久しぶりですね。でも、俺用事があるんですよ。また、今度にでも」
「じゃあ、いこうか」
優子は真の胸ぐらを掴むと自分の元に引っ張りそのまま階段へと向かい始めた。
「え!?ちょっと止めてくださいよ!用事があるんですって」
「仕事は待ってくれないんだよね」
12時09分
「それで、ここはどこなんですか?」
優子と真は住宅街にある三階建てのマンションの前に来ていた。
「依頼してくれた人の自宅」
「もう依頼受けたんですよね?」
「うん。今からは状況整理ってとこかな」
優子はマンションの中へと入っていった。かなり高級そうな内装でフロントには依頼人の女性が立っていた。
「お待ちしておりました」
彼女は礼儀正しくお辞儀をした。育ちの良さがうかがえる。
「立ち話も何ですし、中にお入りください」
「いえ、すぐ探しに行きますので」
優子が慣れない敬語で依頼人からの提案を断ると彼女に質問を始めた。
「確認何ですけど。保健所には連絡したんですよね?」
「はい……。うちの子の様な黒猫はいないそうです」
「そうですか、ならば迷子になったと考えるのが妥当かもしれませんね」
優子は内心、事故にあったという可能性も疑ったが依頼人を不安にさせないためにも黙っておいた。
「猫の行動範囲は約300mと言われています。ふつうなら外に出たとしても他に住処も無いため近所の狭い場所にいると思われます。しかし、今回の場合、度々外に出てるようなのでそれは無いかと思います。戻ってこない理由にもなりませんしね。なので、何らかの理由で300mより外に出てしまったと考えるのが妥当かと思われます」
優子は慣れない敬語を使ったせいか1度息継ぎをする。
「なので、先程述べたように行動範囲の300mより外を捜索します。それでいいでしょうか?」
優子は少し早口気味に言い終わると依頼人と真は口を開けて唖然とする。
「あ…はい。分かりました」
「それでは我々は捜索を始めます」
そう言うと、優子は外に出た。それを追うように真も外に出る。
「姉御、猫についてあんなに詳しかったんですか?」
「いや?お前を迎えに行く前に図書館よって調べただけだよ。私パソコンとかインターネットとか持ってないからさ~」
真は優子が高校時代トップの成績を取っていたことを思い出した。そして、大学には行かずこうして働いていることを再確認した。
「今からでも大学とか行ったらどうですか?」
「嫌だよ。めんどくさいし、お金かかるし、めんどくさいし、勉強嫌いだし、めんどくさいし」
優子の眉をひそめた顔とめんどくさいの数から行く気が全くないのは十分理解出来た。
「そんなことより、お腹空かない?作戦会議がてらお昼食べよ」
12時27分
優子と真は近くの牛丼屋に来ており、窓際の席に座っていた。お昼時のため割と賑わっていた。
「呑気にお昼なんて食べてていいんですか?」
「出来るだけ早くしようと牛丼にしたんだけどね」
真が牛丼を掻き込んでいると、優子はポケットから赤ペンと折りたたまれた紙を取り出した。
「何ですか?それ」
「この辺り一帯の地図」
そして、赤ペンで地図に何やら書き始める。
「今、赤で塗ったのが依頼人の家ね。ここから行動範囲の300mより外だからこの辺りが捜索範囲かな」
優子はペンで記入しながら真に説明し始めた。
「じゃあ今からその捜索範囲で探すんですね?」
「まあまあ、落ち着け。猫は夜行性でしょ?昼間に捜索するよりも夜とかにやった方が見つかるらしいんだよ」
「じゃあ、今からどうするんですか?」
「出来るだけ多くの場所を監視したいから捜索範囲の至るところを光遮物にする。光遮物は数に上限ないけど多ければ多いほど集中力つかうからね~。大変そうだ」
優子はやる気を出すためか伸びをしたり、肩を回すなどの軽い体操を始めた。
「あれ?今影山さん通りませんでした?」
「影山~?」
優子が体操を続けたまま聞き返す。
影山とはアパートの一階に住んでいる男のことで、優子はもちろん真も彼のことをよく知らない。
「なんかめっちゃ走ってました」
「ダイエットでもしてるんじゃない?ていうか、あいつ働いてるの?」
「さあ?俺もほとんど話したことも無いですからね」
お昼を終えた2人は立ち上がり、店から出ていくのであった。
次回は「認識不能者」がタイトルになるかと思います。
今回、タイトルに困ったので2を付けただけです。良いのが思いついたら変更するかもしれません。
次は日曜日に更新するとおもいます。




