影支配者の仕事
今回もプロローグみたいなです。
誤字脱字があるかもしれません。
8月12日 午前11時17分
懐中電灯、野球ボール、布団、本棚、携帯電話が置いてあるだけの質素な部屋に軽快な着信音が鳴り響いた。
昼前になっても未だ布団で眠っている携帯電話の持ち主は目を瞑ったまま音の発生源を探し始める。数秒後、その発生源を見つけ、電話に出た。
「……もしもし、こちら大使館……」
眠そうな声で寝ぼけたことを言った。
「なんじゃ優子、まだねとったんか?」
「あ、ばあちゃん?私、大使館で働いててね~、大忙しだったんだ~。何してるのか分からなかったけど」
優子は夢での出来事を祖母に話すと、電話越しからため息が聞こえた。
「そうか、現実でも仕事が来たぞ」
その言葉に優子の目は覚めた。
「本当!?仕事来たの!?」
「ああ、来たとも。依頼任はさっきから待っておる、早く来る…」
優子は電話を最後まで聞かず準備を始めた。
優子のやっている探偵稼業は優子の祖母、優枝の家が事務所となっている。優子の住んでるアパートは能力者でないと認識出来ないため、依頼人は優枝の家に来るのだ。
11時24分
「お待たせしてすいませんね」
優子がちゃぶ台に座る。優子の向かいには依頼人であろう女性が座っていた。髪は茶色のロングヘアーで先端は少しカールがかかっている大学生位の女性で、先程からずっと下を向いている。
「それで、御依頼の内容は?」
「……ネコ…」
「え?」
優子は反射的に聞き返してした。
「私のネコを探してください!」
彼女は優子の顔を見て先程よりもずっと大きな声で言った。
「猫ですか?」
「はい、私の猫です!今日起きてから家にいなくて……。元々夜中にどこかへ出掛けてるのは知っていたんですけど毎回朝には帰ってきてたんです。でも……、でも…、今日起きたらどこにもいなかったんです……」
彼女は涙ぐみながら言った。目は涙がたまり始めている。
「それで、あの子を探し回っていた時にこの能力探偵事務所のチラシを見つけて…、能力者の人ならもしかしたらと思い……」
「ここに来たと」
彼女は首を縦に振った。
「つまり、その猫を探して欲しいんですね?」
「はい……。あの子は私の唯一の家族なんです。お礼ならいくらでもします!だからどうかお願いします」
お礼……。いくらでも……。優子の頭はこの二つの単語でいっぱいになった。優子はお金に執着している訳では無い。むしろ、いつもは千円札が落ちていても気にしないほどお金の事など考えてもいない(5千円札以上なら拾う)。しかし、今月に入ってまだ1度も依頼が来ておらず、バイトもしていない優子は金欠状態なのだ。
「分かりました!何としてもその猫ちゃんを見つけてみせましょう!」
「ありがとうございます……」
そう言うと彼女は鞄から紙切れと写真を取り出した。
「これ、私の連絡先とあの子の写真です。何かあったら連絡してください」
彼女からそれを受け取ると優子も自分の名刺を差し出した。
「こちらが私の名刺になります。電話番号、メールアドレスが載っていますので、そちらも何かあれば」
「はい……わかりました」
彼女はまだ不安そうで、落ち着きもない。
「安心してください。私達の能力で見つけ出しますから」
優子は自信ありげに言った。
優子の話でしたね。前々からふれられてた「昨日の仕事」の話になります。「認識不能者」と「影支配者」の話は互いに関わっているので交互とは言いませんがちょくちょく目線が変わります




