認識不能者の失敗
今回はプロローグ的な話なのでとても短いです。しかし、誤字脱字にはご注意ください。
8月12日 午前6時50分
薄暗い路地裏。そこにいるのは俺と1匹の猫だけ。
俺は半袖のパーカーにフードを被って、レンガの上に腰を下ろしていた。そして、猫は真っ黒な毛並みをしていて、黄色の目で俺の顔を見つめている。
「ニャー」
猫が俺の顔を見ながら鳴くと、顔を俺の足に擦り付けてくる。
「よしよし、可愛いな。今日もやるよ」
俺はポケットから猫缶を取り出すと、それを開けて猫の前に置く。すると、猫はそれを待っていたかのように猫缶へと顔をうずくめた。これが俺の毎朝の日課だ。朝の散歩の後にいつもここで、この猫に餌をやる。
猫は餌をもらってから俺の事など全く気にすることもなくひたすらに食べ続けていた。
「ほんとに可愛いやつだな」
俺は猫の頭を撫で始める。食事中の今は触りたい放題だ。 俺が触りたい放題していると、猫缶の匂いに釣られてきたのか、もう1匹猫が現れた。案の定、猫缶へと向かっていく。2匹が仲良く食べてくれればいいのだが、そんなに上手くいくわけもなくすぐに喧嘩がはじまった。
これが本当のキャットファイトだ!なんてことを考えたが、とりあえずは2匹の喧嘩を止めた方が良さそうだ。しかし、普通に止めても面白くない。ここは俺の能力を使って止めてみよう。
「おい!」
俺が強めの声を出すと、二匹はビクッと小さく痙攣してこちらを睨んだ。
その瞬間、俺は黒猫の方に手の平を向ける。これで黒猫の方が勝つだろう。
しかし、当の黒猫は敵が余所見をしているうちに猫缶をもって逃げ出した。もう片方もそれを追いかける。
………不味いことになった。
俺の能力は「認識をしにくくする」というもので、持ってる能力が100%だとすると70%は自分の住んでるアパートを能力者以外認識出来ないようにしている。なので、俺が使えるのは残りの30%。せいぜい周りから見えなくする程度なのだ。そして、先程俺はあの黒猫に能力の20%を使って認識しにくくして、喧嘩に勝たせようとした。しかし、あの猫は戦わずして逃げてしまったのだ。つまり、俺が能力を解除しない限りあの猫に能力の20%を取られたままになる。今解除出来ればなんの問題もないのだが、俺が能力を使ったり、解除出来るのは自分から3mまで、しかも能力を使う対象に手の平を向けないといけない。今の状態はどちも条件に合っていないため解除することができない。
あの黒猫を見つけて解除しないかぎり俺は能力の20%分が使えないままだ。只でさえアパートに70%も取られているのに、これ以上減るのは非常に困る。死活問題のレベルだ。
……本当に不味いことになったなぁ……。
新章に入りましたね。そして、題名も変わりましたね。
「高校生能力者」からは当分おさらばになるでしょう。
「認識不能者」とかそういう二つ名っていうんですか?そういうの考えるのが1番時間取られます。
そして、名前も書かれてない今回の登場人物は誰なんでしょうね、今までの話を読んでる人は予想がつくかもしれません。
彼の能力は「認識しにくくする」というものですが、深く考えず、影がうすなる。存在感がなくなる、みたいな感じです。




