第一科目
どうもこんばんは、よしをです。
今回何故か思いついたので2作目を書いてみました。
《THE WORLD 》
それは、2020年において、グローバル化の影響により、小学生の頃から世界史を習うことを義務化した日本の文部科学省によって、世界史をよく知ってもらう為の推奨教材として認定された日本初のトレーディングカードゲーム(通称TCG)型の教材であった。
しかし、その絵のクオリティーやタクティクス要素、国の補助金が出るため低価格で購入出来ることが万人受けしたため、学校のみならず、カードショップで取り扱われたり、漫画化やアニメ化が行われるなど数多くのメディアで取り上げられ、人気に火がつき、現在世界中でプレイヤー人数が50億人を越えるほどに人気を集めるまでに成長した。
これは、そんな一大ムーブメントを作り上げた二人の学生の話である。
――――
「よっしゃ!受かった!」
「やったわ!これで私もこの京東大学に通えるわ!」
「隆くんの合格を祝ってみんなで胴上げだぁ!みんなも手伝え!わーしょい!わーしょい!」
そんな声が聞こえるなか、俺こと田村悠斗は合格者番号の発表掲示板の前で1人うなだれていた。
そこには自分の番号が無かった。
俺が落ちた?そんなバカな!そんなはずはない!絶対にない!
俺は、俺は、今日受かるために毎日毎日友達と遊ぶ時間まで潰して必死に勉強してきたんだぞ!
模試ではいつもA判定。全国順位で毎回トップ10の内に入る俺が…ホントに…ホントに落ちたのか?
この学校の受験に専念するために他の学校を併願でなんて受けてもいないし。
そんな感情が渦巻く中、今とてつもなく話したくない相手から電話がかかってきた、そう親だ。
いつも俺には無関心のくせにこういう時だけ妙に関心がありやがって。
そんなに世間体が大事なのかよ。
そんなことを思いながらも、電話に出ない訳にもいかないので、さっそく電話に出た。
すると、挨拶もなしに向こうからいきなり尋ねられた。
「大学は受かりましたよね?」
俺はなんと答えたらいいのかわからず、少しの時間だけ沈黙してしまった。
電話に出たばかりで、数秒黙っていただけなら、普通の人ならなんとも思わないだろう。
しかし、俺の親は違った。
数秒黙った後、ようやく話し出そうとして俺が声を出し始めようとしたとき、向こう側からこのような音声が耳に流れてきた。
「落ちたのですね。わかりました。
家を出ていき予備校に通うなりフリーターですごすなり好きにしなさい。
学費と最低限の生活費は払ってあげるから安心しなさい。では、こちらから業者に頼んでおきます。」
そして、俺が答えるまでもなく電話は切られた。
はぁ、わかっていたがこれはかなり辛いものだった。
そして、辛い思いをするのはまだまだ続いた。
スマホのアプリを開くと、友達全員から「落ちたんだって?あんなに勉強してたのにね!ざまぁw」
という文章が数百送られれきていた。
それを紛らわすために、帰り道に幼馴染みの女の子が住んでる所に行くと、
「落ちたんだって?掲示板にのってるよ?え、その男は誰だって?悠斗が受験に落ちた時の為にキープしていた男に決まってるでしょ?」
そんなことが…
掲示板にのってるだと。
それに、受験が終わったら付き合おうって約束していたのに。
受験が原因で俺はここまで全てを失うのか。
それは、そうだよな、だって人生の殆どを勉強に費やしてきたんだから。
その殆どを費やした勉強に否定されたら、俺に残るものなんて殆どないんだろうな。
夕陽が沈みかけ道が見えにくくなっている道を俺はとぼとぼと歩き家についた。
家につくと、そこには引越し業者が来ており、
「悠斗、遅かったのですね。業者さんを待たせると悪いでしょ。
さっそく今から新しい住居に行きなさい。
手続きはこちらでしておいたので、気にしなくて大丈夫ですよ。」
引越し業者のトラックに積んである荷物をみてある疑問がうかんだ。
「あの、俺の荷物が少ないように感じるのですが。」
「何を言っているのですか?勉強道具以外必要ないでしょう。
最低限の服以外は全てこちらで処分しておきます。では、新しい住居へおいきなさい。」
俺はもはやなんの感情も浮かばなくなっていた。
そして俺は、引越し業者に連れられて、都内の新しい住居へとやってきった。
見た感じ新築で、一般的なアパートといった感じだ。
それだけは本当にありがたかった。
そして、荷物が部屋に運び込まれるのが終わるとさっそく今後について考え始めた。
「俺はいったいどうすればいいんだ。
とはいえ、勉強するしかないんだろうけどな。
俺にはそれぐらいしかやることがないし。
じゃあ、予備校にでも通うなりなんなりしなくちゃいけないな。
後は、家事をどうするか――――」
そうして、今後のことを一人で全て選択していくしか、俺には道がなかった。
―――
二ヶ月後、俺の姿は某有名予備校の中にあった。
あの後予備校を決めたあとすぐに親に電話をかけ、学費のことを言った。
すると、「振り込んでおく。」とだけ答えられ、電話は切られた。
そんなことを予備校の広場で一人ご飯を食べながら思い出していると、一人変わったやつが俺に声をかけてきた。
「えーと、たしか田村くんやったか?
俺の事覚えてるか〜?ほら、今クラス一緒の関西人おったやろ?そいつがわしやで!」
「あ、あぁ、覚えているよ。たしか、安岡くんだったかな?」
「そうやそうや、覚えとったんやなぁ。ありがたいこっちゃな〜。」
それが、これから一大ムーブメントを起こす俺と安岡義昭との初めての会話だった。
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もう1つの作品、
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