行方不明者
オレの名前はルッシェ=シャーマン年齢は十六歳。
身長は地球年齢相応160センチ程度正確には計ったことがないのでわからない。
ちなみにシャーマンは義理の母の名乗っている性で孤児院出身で社会に出る者はみんなこの性をなのっている。
オレの容姿は、銀髪に黒い瞳、顔立ちに関しては義理の母が近所に紹介するに、女には困らない爽やかな好青年になるらしい。今こそまともな出会いがないが、母を信じて将来モテると期待するとしよう。
さて、どこから話すべきか悩むものなのだが、現在非常に気まずい空気に包まれている。
訓練場に現れた件の四人が、いきなり俺に抱きついて離れてくれないのだ。
「まさか、お前だけ先にこっちに来ているだなんて。」
そう言って首に抱きついているのは俺より背の高いイケメンだから気持ち悪いったらありゃしない。
「人違い(・・・)だと言っているだろうっ!いい加減放してもらえないだろうか。」
「いやだっ!今度は絶対放さないっ!!」
掻い摘まんで説明すると、なんでも彼らは地球から召喚された勇者で召喚される直前に、地球上で魔物らしき物に遭遇したという。
その時に自らを囮にして彼らから魔物を引き離し行方不明になった幼なじみキヨハラカズサ(♀)が俺だと断言してみせるのだから困ったもんだ。こちとらスラム育ちで初対面もいいところ、地球の記憶となんぞは全くないぞっ!
見知らぬ奴らが再会に涙しながら抱きついてくるのはちょっとした恐怖だ。
「わかった百歩譲ってキヨハラカズサが俺だったとしてだ。
これ(・・)はどう説明する気だ。」
訓練用の制服(支給品)を乱雑に脱いで、鍛えに鍛えた上半身をさらけ出す。
とは言っても筋骨隆々にはほど遠い、背筋をメインに引き締まってはいるのだろうが。
腕力は背筋でカバー出来るが俺流。腕をあまり太くするとパワーは上がるが速度が落ちるから腕に力を入れずに腕立てをして鍛えている。
自らを囮にして仲間を救う女傑が発端とは言え、これではっきり別人とわかるだろう。
「うん、やっぱりカズサちゃんで間違いないよ。」
をい、まてやこら。
「それはないだろ。」
「いたいっ!?」
もう一人背の高いの少年が巻き付き系男子の尻を蹴り飛ばした。
「カズサはもっとボリューミーでしょ。」
「そうだよ、あんなのにカズサが負ける訳がないんだから落ち着きなよ。」
即肯定してみせたイケメンにはびびったが、他の仲間は否定的な答えをかえしてくれたのがありがたい。
とりあえずそのあたりは放置して、話しを先にすすめなければならない。
何しろ教官は先ほど『全て任せた。』と爽やかに言い残して上に報告に行ってしまった。
そう、爽やかに言い残して行ってしまったのだ。
もはや、厄介事の匂いしかしねぇ。
似ていたとしても外見…いやうやいや顔…?だけだしそのうち彼も別人だと理解する事だろう。
…なんか、体重が100キロとかきこえたんだが、それって、女なのかホントに?
「じゃあ、まずは全員の基礎体力をみせて貰えるか?」
わざわざ召喚した勇者だ、下手したら桁違いに強い可能性もある。
もし俺が相手にならないほど強かったりしたら教官のご褒美は諦めるて手を引いた方が彼らのためになるだろう。