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SS成人?乾杯

「…ぐぬぬぬぬっ」


少年の指先から放たれる霧しぶき。霧がコップに付着して水滴になりコップの中を真水で満たしていく様を大人達が固唾をのんで見守っていた。


同様にコップ一杯の水を生み出した少年少女も我が事のように拳を握りしめていた。


水適性のない少年が風を集めて生み出す水。


分解された時に生まれた無駄・・なエネルギーが電気に変換され紫電として指先の霧の中を駆け巡る。


熱を奪われた霧が氷結し時折霙みぞれ混じりになるが彼らにはどうでもよかった。

今は誰もが霧吹きから吹き出るようにコップを満たしていく真水から視線をそらせない。


スラム街の子供達は、生活のためにいくつかの魔法を覚える。特に水魔法が重要だ。

スラムは城壁の外周にある。

街の中心に引き込まれた川がスラムに流れて来る頃、見た目は綺麗にみえなくもないがスラムの住人はその水を煮炊きしたり飲むには使う気にはなれない。。

何しろ、地下に張り巡らされた下水道が城壁手前で流れ込むように整備されているからだ。


スラムが出来た頃は、それを飲食に使用していたために多くの人が病気に悩まされ、多くの家族を奪われた。


だから、飲食に使える水を生み出せる水魔法は絶対に覚える必要があった。

だから、スラム街の子供達は適性がなくても(‥‥)コップ一杯の水だけは生み出せるようになるまで近所中から指導される。


スパルタすら生易しい日々を過ごしやっとの思いで生み出した一杯の水、皆に囲まれ歓喜の涙を流しながら飲む者も少なくない。


「…出来ました!」


テーブルの上には満たされたコップに少年は宣言した。スラム街史上最も効率の悪い方法で生み出された水。

しかし間違いなく水でコップは満たされていた。


「…どれどれ。」


儀礼的な服を身に纏った女性が、ちょんとコップに指をつけたその冷たさに驚いたが、付着した水を口にして満足げに微笑む。


「さぁ、若人よ両手で杯を掲げてみなにみせてさしあげなさい。」

さっきまで見守ってくれていた幼なじみ達が慌ててコップを手に取る。


少年は今し方自らが生み出した水の入ったコップを天高く…室内ではあるのだが、雲より高い天に向けて掲げた。



「水のシャーマンが、これより成人の儀を始める。

お集まりの皆様のお手を拝借いたします。ご唱和ください。そ~れ…」


『そ~れっ!!若人のちょっといいとこみてみたいっ!一気!一気っ!ググッと一気っ!一気っ!!』


集まっていた住民の手拍子と合わせ新人コンパか宴会ムードの中彼らは一気に飲み干した。



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