もともと平には荷が重く
「…あの、ルッシェ君は本当に鋼剣以外持った事がないんですか?」
俺が他の武器を知らない事が予想外だったのか護衛騎士の一人が申し訳なさそうに尋ねてくる。
「お恥ずかしい話しでありますが、私は城の外側出身でして子供時代に使っていた狩り道具も射程のない手製の小弓くらいしか触る機会がなかったのであります。」
スラム育ちは自給自足に近いから弓とかは自分たちで作ったの物なら経験があるが…。、
モリや槍なんかも無いことはなかったけど、子供の力じゃ獲物がとれないから、遊び(・・)がないスラムの子供連中が秘伝とかいいながら作る唯一の遊び道具…オモチャみたいなもんだ、それでも近くなら水の中の川魚を撃ち抜くくらいの威力はあったけど子供の作る小弓の経験を今後貴族様に深く関わるであろえ人様に教えるなんて冗談じゃない。
今でもたまにアレを持って友人と遊び(狩り)に行ったりするが、色々拾った物で飾り過ぎて知り合い以外の前にだせねえのよ。
ちなみに友人達は俺の物より見た目が…地球なら中二病とかいわれそうな小弓を毎回持って来ている。
スラム育ちの持っている物なんて威力が似たり寄ったりだから見た目で勝負みたいな所があるから仕方ないんだが、やりすぎはよくないって話しだな。
「そうでしたか…。」
「ええ、そんな事情がありまして、他の武器の鍛錬に関して私には経験がありませんし、素人が教えた所で成長が見込めるとはおもえません。
後は優れた指導者に任せるのが一番だと思われます。いかんせん私はそう言った情事に疎くございますから、騎士様のほうが私より名高い使い手に記憶があるのではないかと。」
「そうですか、そのような事情であればあの方々も納得されましょう。騎士隊にそれぞれの武器に精通した者がいますから当面はそちらで師事を仰ぐ形となりますがよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます、そうしていただけたならば彼らならば私などより高みへ至る事でありましょう。」
多少慇懃に見えるかもしれないが、実際基本ができてないと修練が出来ない。
それに、俺にお鉢が回って来たのは、平兵士を当て馬に基礎を学ばせて力をつけた所で気分よくサヨウナラといった話なんだと思われる。
いけね、まだ負けた事ねえや。まぁ勇者とはいえ素人だから一週間じゃ俺が負けなくても仕方ないよな?
ウチの教官が言っていた面倒を見ろとやらはどこまでが範囲内かは解らないが、スラム育ちに解る程度の見解は教えたつもりだからここらでキリとしても問題ないだろう多分。
教官から直々に罰を受けるなら甘んじて受ける覚悟はあるが。
「そんな、今日はやらないんですかっ!?」
騎士様との相談が終わった所でミナミが焦ったような声をあげた。
いや、お前何を聞いてたんだよ、お前の武器なんか土台からして組み手なんか無理なんだぞ。というかボウガンを組み手の距離でよけたなんて話し聞いた事もねえよ。
しかし、何事も労いの言葉位はかけとくのがケジメだよな。
「きをつけっ!」
四人が反射的に姿勢を正す。
毎回見ている護衛騎士もなぜか姿勢を正しているがあえて触れないでおく。
「よくきけウジ虫共。」
『いえすサー。』
いきなりウジ虫とか罵倒するとかなに考えてんだと思われるかもしれないが、これから俺が言うセリフはスラムに昔から伝わるごっこ遊び(・・・・)の一環であるから仕方がない。
「貴様らは、特訓が気持ち良いとほざくマゾヒストかっ!
『ノーサー。』
「苦しい(鍛える)のが気持ち良かったかっ!」
『ノーサー。』
「本当は気持ちが良くて仕方のないド変態だろうっ!」
『ノーサー。』
「いい返事だ!これを持ってチャンバラごっこはお仕舞いとするっ!解散っ!!」
『ガンホーガンホーガンホー。っ!!』
ちなみに、ごっこ遊びを開始する時には全て『サーイエスサー。』で答えるというもので、最後のガンホーの意味が俺には全く理解できない、伝えたらしき大人達も意味は解らないそうだ。
オニグンソーごっこが果てしなくノリだけで勝負しているのを否定できない。
絶対祖先(?)に軍オタかなんか混じってると太一達は言うんだが…。
「それじゃ、空きが出来たから街に遊びに行くぞー。」
「「っシャーッ!!」」
『!!』
なんていったら男子二人から予想外に気合いの入った声が上がってちょっとビビった。
騎士と女子も俺みたいに驚いてた。
遊びたい盛りだからしかたないか?
誰だって、この年になればごっこ遊びより遊び(・・)に行きたいわな。
夜の街の歩き方は騎士にでもコッソリ教えてもらえよ?




