side睦月~生徒会のお仕事
放課後の生徒会室では交流会についての話し合いが行われている。
話し合いと言っても、僕が独断で決めた交流会の内容は決定事項であり、単なる確認作業なんだけど。
去年はパーティー形式で行われた交流会だけど、今年はガラリと趣向を変えた。
理由は幾つかある。
一つは僕があんなちゃらちゃらしたパーティーが嫌いだってこと。
ほんと、あんなパーティーに何の意味があるんだろう。
見たくもない女の本性を見せられるこちらの気持ちも考えてほしい。
もう一つの理由。
それは今後の生徒会運営のため。
去年までの生徒会はとにかく強固だった。
そりゃそうだろう。
先祖返りが二人もいたんだから。
だから生徒会に反抗しようとする者はいなかった。
やる気のない晴可はともかく、彬は完全に学園を掌握していたから。
けど今年はそうはいかない。
先祖返りのお二人は揃って大学に進学した。
今年の生徒会長である僕は在校生の中では最強ということになっているけど、僕には彼らほどの力はない。
一対一だったら勝てる自信はあるけど、ある程度の数が集まればそれを抑えることは難しいだろう。
それにまだ公表はされていないが、来年に合併が予定されている学院との合同行事も控えている。
だからこそ今のうちに危険分子をあぶりだし、学園の基盤を強固にしておく必要がある。
内側から崩れるなんてご免だからね。
そのための鬼ごっこだ。
エサになる女の子たちには申し訳ないけど、なるべく危険のないように僕たち生徒会も対応するつもりだしね。
エサに喰らいついた馬鹿にはとっておきのお仕置きを用意してある。
先祖返りの本気を見たら、あいつらどんな顔するんだろう。
彬はめんどくさそうにしていたけど、色んな意味で面倒見のよい前会長はきっと協力してくれるはずだ。
「生徒会役員も逃げるんですか?」
そう言ったのは配ったプリントに目を通していた朝霧ちゃんだ。
僕が無理矢理押しつけた生徒会の仕事なのに、嫌々ながら逃げもせず参加してくれる律儀な同級生であり、人外最強である晴可の伴侶。
その目の下にうっすらと隈が出来ているのを僕は見逃さなかった。
「うんそう。逃げるとは言っても、現実にはお目付け役かな。お痛をする馬鹿がいるといけないからね」
「お目付け役」
「ああ朝霧ちゃんは捕まった子の名簿作成の仕事があるから、体育館に残ってね」
「はあ」
ちらりと朝霧ちゃんが僕の目を見た。
その目に浮かんでいるのは、それが晴可の横やりなのかどうなのかという疑問。
残念ながらちがうんだな~。
朝霧ちゃんが体育館に残るのは僕の発案。
だけどきっと晴可はそれすら許さないはずだ。
多分、朝霧ちゃんは交流会当日、何らかの理由で学園を欠席することになる。
僕の知っている晴可ならそうするだろうから。
朝霧ちゃんを全てのものから守ろうとする晴可は、僕から見たら全てのものから朝霧ちゃんを遠ざけようとしているように見えてしまう。
伴侶というのはそれだけ大事なんだろうけど。
問題なのは朝霧ちゃんが晴可の腕に収まっていられるような女の子なのかって事だ。
まあいい。
朝霧ちゃんと晴可の問題に首を突っ込んでいる暇はないんだ。
夏休みには学院との交流試合が待っている。
それまでに学園の態勢を盤石なものにしておく必要がある。
空いている書記の席も埋めなきゃな。
あぁ忙しい。
あ、でもこれだけは言っておかなくちゃ。
「夜はちゃんと眠れてる?」
朝霧ちゃんだけに聞こえるように囁くと、一瞬で朝霧ちゃんが耳まで真っ赤になった。