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side晴可~閉じ込めたい

 雅ちゃんを腕の中に囲い込んで、その可愛らしい耳朶にくちびるを寄せる。


「そっちはベッドルームやで?誘てるん?」


 思わずそう囁くと彼女は一瞬で顔を真っ赤にした。


 なんて可愛いんやろ。

 その反応の一つ一つが可愛らしすぎて本当困る。

 

 雅ちゃんは押しに弱い。

 必死に突っ張っているが押せば簡単に折れることを俺は知っている。

 だからほんの少し申し訳ないと思うけど、いつもの通りに俺は強引に話を持っていく。

 すると雅ちゃんは心底困ったような顔をしながら頷いてくれた。


 この春に高校を卒業した俺は、本来学園の寮に残ることは出来ない。

 本音を言えば今すぐにでも籍を入れて、雅ちゃんを俺の家に連れて行きたい。

 高校なんて辞めてしまえばいいとさえ思っている。

 けどここはある意味雅ちゃんにとって一番安全な場所なのだ。

 ここから連れ出して、どうする?

 一生雅ちゃんから目を離さず生活していくのは不可能だ。

 俺には大学もあるし、雅ちゃんには雅ちゃんの夢がある。

 それを無視して雅ちゃんを安全な場所に閉じ込めてしまえば、きっと雅ちゃんは壊れてしまうだろう。

 

 けどなあ~。

 大学に行けばやることは山積みだ。

 勉強はもちろんのこと、雅ちゃんと結婚して彼女を幸せに出来るだけの経済力をつけること。

 雅ちゃんに害をなすであろう虫を退治しておくこと。

 そのためには避け続けてきた社交界に顔を出すことも増えるだろう。

 そうなればどうしても会える時間は削られてしまう。

 将来のため、我慢することも必要だろうとは分かっている。

 けど俺の場合、我慢が限界を超えると暴走してしまう予感がするのだ。

 暴走した挙句きらわれるなんて、絶対いやだ。

 ならば暴走しないように雅ちゃんを補給する方法を考えるしかない。

 俺はあらゆる手立てを使って彼女の部屋に潜り込む許可を勝ち取った。

 多少強引だったのは反省しているが。


 同室とは言ったけど俺がこの部屋に帰ってくるのは深夜だけになるだろう。

 言葉を交わすこともなく、ただ雅ちゃんの寝顔を見るだけになるかも知れない。

 でもそれでいい。

 雅ちゃんの温もりを感じることができたら、俺は安心していられるのだから。


 ……でも勝手に雅ちゃんのベッドをダブルサイズに交換したって気が付いたら、怒るやろなあ。

 言いくるめる自信はあるけど……。


 きっと寝室は別だろうと思っているであろう雅ちゃん。

 こんなずるい男でごめんな。


 柔らかいその体を腕の中に納め、手触りのいい髪を撫でながら俺がそんな事を考えているのを、きっと君は気付いていない。

 


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