side晴可~甘いくちづけ
雅ちゃんの反応が悪い。
生徒会室で写真を撮ってもらう時もそう。
基本無表情な雅ちゃんだが、今日は一段と表情がなかった。
それでも初めてのツーショット写真に俺は浮かれていた。
「なあなあ。雅ちゃん~?こっちおいでよ~」
本来なら個室に置かれるはずの雅ちゃんの勉強机は、俺が無理矢理押しこんだダブルベッドに追いやられリビングの一角に置かれている。
寮に戻った途端、彼女はその机に向かい黙々と勉強しだした。
定期テストが近いのは分かってる。
けどなぜだろう。
その背中に拒絶感が滲みだしているような気がするのは気のせいか?
確かに雅ちゃんの勉強時間は減っている。
俺との時間が増えればその分勉強時間は削られる。
だから勉強に集中する気持ちも分かるんだけど。
俺は折角一緒にいられる時間を無駄にする気はさらさらなかった。
「なんで俺のこと見てくれへんの?」
すとんと雅ちゃんの勉強机に腰を下ろすと彼女の頬をするりと撫で上げる。
瞬時に頬を赤くした雅ちゃんが勢いよく顔を上げる。
ひゅっと息を呑み、彼女の表情が固まった。
「久しぶりに会うたのに、そんな態度とられたら、俺自信失くすわあ。もう俺のこと嫌いになったん?」
そう言うと雅ちゃんの指からシャープペンシルがぽろりと落ちた。
「い、いや。えっと、そのですね。晴可先輩?」
赤くなった雅ちゃんの顔が青くなる。
それでも俺は解放してやるつもりはない。
「淋しいんは俺だけなん?」
雅ちゃんの頬を撫でながらそう言うと、彼女は視線を泳がせながら困ったようにつぶやいた。
「分かってること、聞かないでください」
ああ可愛らしい。
そのくちびるを親指でそろりと撫でる。
空いている方の手を雅ちゃんの髪に掻き入れて後頭部をしっかりと固定する。
俺は吸い寄せられるように、雅ちゃんにくちびるを寄せた。
その柔らかい極上の感触を楽しんでいると雅ちゃんが俺の首にするりと手を回した。
その行為に煽られてくちづけが深くなる。
君は分かっているんやろうか。
こんなに俺が君に溺れていることを。
失うのが怖くて怯えていることを。
腕の中に雅ちゃんを抱き上げながら俺は彼女に溺れていった。




