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前へと逃げろっ!  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 不思議な能力 ――クリハスト地方――
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第7話 敵兵の出現

 【クリハスト地方】


 ハーベスト平原を北に抜けるとクリハスト地方がある。この地は氷覇山の西に位置する。蒼いクリスタルのような世界。ここは幻想的な所でもあった。

 美しき氷の結晶群。適度な風。降るのは少量の雪。見る者を引き込む世界であった。……寒くなければの話だが。


「……少し、ううん。かなり寒くない?」

「そうか? 俺は平気だけどな」


 装甲服で全身を覆っている俺が言う。俺は装甲服のお陰で別に寒くない。だが、灰色をした普通の軍服を纏ったケイレイトは……。

 俺の装甲服は黒地に紫色のラインが入っていた。財閥連合軍特殊部隊の装甲服だ。これは銃弾などの物理攻撃を緩和するだけでなく、衝撃もある程度は吸収する。内部の温度もある程度は調節され、常に戦闘に支障をきたさないようにしている。


「あなたはそうかもね! その装甲服のお陰でね!!」

「まぁまぁ、ここを抜ければホープシティだ。そこで温かいメシでも頂こうぜ?」

「ご飯食べる前に死ぬかもしれないけど」


 そんな事を言いながら先に進んで行く。静かな世界で立ち止まっているヒマはない。俺たちは少しでもテトラルシティから離れたかった。

 クリハスト地方を進んで行くと、1人の男性を見つける。その男性は胸から血を流し、横たわっていた。服装は一般の市民と似た服装だが、汚れがひどかった。なんだコイツは?


「おい、大丈夫か?」

「…………」


 俺の呼びかけに返事はない。彼は既に死んでいるようだ。よく見れば左胸から大量の血が出ていた。誰かに射殺されたようだが、誰に殺されたんだろうか……?


「動くなッ!」

「両手を上げて投降せよ!」

「テトラルの生き残りだな!」


 俺が男性を調べている時だった。突然、氷の影から国際政府の兵士が現れる。彼らの装甲服から特殊軍の兵士である事が分かる。

 そうか、分かったぞ。国際政府の命令でテトラルシティから逃げ出した市民を狩っているのだろう。この男性もきっとこの兵士に……。


「え? え? なに?」

「ヤバそうだな」

「安心しろ、すぐに“楽”にしてやる」


 楽にしてやる、か。つまり殺して楽にしてやるという意味だな。――死んで楽になれ。

 ケイレイトとよく似た灰色のコートを纏った将校のような男が兵士2人に合図する。その合図を受けた2人兵士はアサルトライフルを持ち、俺たちに近づく。


「……殺されるな」

「どうする?」

「殺られる前に殺り返す!」


 そう言うと俺は素早く1人の兵士の顔面を殴り、その場に倒す。彼は悲鳴を上げて、その場に倒れ込む。


「貴様ッ!」


 兵士の1人がアサルトライフルの銃口を俺に向ける。


「やめろッ!」


 ケイレイトがブーメランを投げる。それは激しく回転しながら兵士のアサルトライフルを叩き落す。アサルトライフルは凍った地面を滑る。


「う、うわっ! お前、どっちの味方してるんだ!」


 アサルトライフルを叩き落とされた兵士はケイレイトに早足で近づくと、素早く彼女をその場に蹴倒しす。


「うッ! クッ……!」

「テメェッ!」

「お前の相手は俺だ!」


 俺はケイレイトを蹴倒した兵士を倒そうとした。だが、俺の行動はさっき殴り倒した兵士によって封じられる。彼はアサルトライフルで俺を射殺しようと発砲する。それも何発も。

 俺は銃弾が飛ぶ瞬間、素早く横に飛び、銃弾を回避する。そして、自らはハンドガンを取り出し、発砲する。ハンドガンの弾は兵士のわき腹に当たり、血を噴き出させる。


「ぐェッ!」


 一方、ケイレイトは側にいた兵士を蹴り飛ばす。不意を疲れた兵士はバランスを崩して倒れる。そのチャンスを逃さず、素早く立ち上がる。そして、ブーメランを拾い、素早く投げた。ブーメランは素早く回転しながら宙を優雅に舞う。


「な、何だ? こんなブーメランごとき……」

「喰らえっ!」

「…………!?」


 ケイレイトはその兵士がブーメランに見とれている間に、さっきブーメランで叩き落としたアサルトライフルを拾い上げると、躊躇なく発砲した。

 激しい銃撃音と共に、大量の銃弾がその兵士の体を貫いていく。氷の地面に火花と共に赤い血が飛び散る。その兵士はその場に倒れた。


「ケイレイト! 大丈夫か?」

「うん! メタルメカは!」

「何ともない!」


 お互いの無事を確認し合うと、隊長と思われる男の方を向く。残る敵は1人、灰色の防護コートを羽織った特殊軍の将校だった。


「フォフォ……! まさか国際政府特殊軍の兵士を2人も倒すとは恐ろしい……。しかも、ケイレイト。お前は国際政府特殊軍の――」

「死にたくなかったら道を開けた方がいいんじゃない?」


 隊長のセリフが終わらぬ内にケイレイトが言う(もうちょっとだけ待ってて欲しかったぞ)。


「そうか。……俺は特殊軍のブリザード大尉! “ナネット総督”の命令で貴様らを処分する!!」


 そう言うなり彼は俺たちに襲い掛かってきた。相手は政府特殊軍の将校だが、俺も財閥連合の特殊部隊員だ。簡単には負けない。そして、ケイレイトは国際政府特殊軍の軍人。この戦い、勝てそうだ。

 ただ、俺は戦いよりも、ケイレイトのことがやっぱり気になっていた。国際政府特殊軍の――なんなんだ……?

◆ブリザード

 ◇28歳男性。

 ◇国際政府特殊軍大尉。

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