第10話 大隊攻撃機フォボス
出口まであと僅か。後1つ広場を抜ければ脱出できる。ホープパークから脱出すればホープシティ市街地に抜けれる。
ホープシティ市街地は、ホープパーク内よりかは安全だろう。ホープシティはテトラルシティを遥かに凌駕する大都市だ。こんな短時間で市民の非難が終わったとは思えない。人ごみに紛れれば、逃げ出せるかも知れない。
だが、俺たちの進路は突然、阻まれる。
[ピピッ! ターゲットを確認!]
「…………!」
俺たちが走っていると、突然パークの奥のほうから大型の軍用兵器が現れる。それは大型のサソリ型軍用兵器“大隊攻撃機フォボス”だ。
サソリ型軍用兵器といっても大きさは普通のサソリの大きさではない。巨大なサソリであった。頭部だけでも2人の身長の1.5倍はある。
政府特殊軍の軍用兵器は大きく4つに分けられる。1つはアサルトやバイオ・ボールの様な補助型攻撃機。主に兵士と一緒に行動する。
1つはサポート機。自動で回復弾を撃ったり、シールド魔法を張ったりなど、戦いのサポートをする。これも主に兵士や自律式攻撃機と行動を共にする。
1つは自律式探査機。探査機にもいくつか種類がある。攻撃出来るものも存在するが、あくまで探査なので戦闘能力は非常に低い。
そして、最後の1つはフォボスのような自律型攻撃機。これはコンピューターが戦況を自分で解析し、判断して行動する軍用兵器であった。
「クソッ! 最後の最後で……!!」
「でも、コイツを倒したら……!」
[戦闘を開始します。フォーメーション:ガンマ]
大隊攻撃機フォボスは腕の先端に取り付けられた巨大なチェーンソーを振りかぶって襲い掛かってくる。俺たちは素早く後退して避ける。
「やるしかない!」
「…………!」
俺とケイレイトは連続で大隊攻撃機フォボスにダメージを与えていく。ケイレイトは風魔法で。俺は持っている武器で(全部拾ったヤツだ)。だが、大隊攻撃機フォボスも反撃をする。
大隊攻撃機フォボスの顔の頭部から魔法の冷凍光線が発さられる。それは俺の肩に直撃する。彼はその場に倒れ込む。うわっ、めちゃくちゃ冷たい!
「大丈夫っ!?」
「気にするな!」
俺は魔法発生装置を使い、自らの傷を癒す。だが、それが終わったときには次に攻撃が始まろうとしていた。冷凍光線を放った頭部から今度はロケット弾が放たれる。俺がそれを確認したときにはもう遅かった。
間一髪直撃は免れたが、爆風で俺たちの体は僅かに後方に吹き飛ばされる。無論、僅かながらにダメージを受ける。
「クッ……!」
「このッ!」
ケイレイトは小さな竜巻が発生させ、大隊攻撃機フォボスを巻き込む。だが金属で出来た体とこの大きさ。いくら強力な風魔法でも浮かせることは出来ない。僅かに傾いたぐらいであった。それを見た俺はあることを思いつく。素早くそれをケイレイトに伝える。
「……なるほど、ね」
「んじゃ、頼んだぞ!」
「任せて」
ケイレイトは大量の魔力を集中させる。一方、俺はホープシティ市街地で買ったバッグに、拾ったハンドボムを詰め込んでいく。一方、俺たちの行動を待つ義務などない大隊攻撃機フォボスは腕のチェーンソーでケイレイトに襲い掛かる。
「させるかよ!」
俺はアサルトライフルでその腕を射撃する。射撃に気づいた大隊攻撃機フォボスは、標的を俺に変更する。フォボスはチェーンソーで俺を斬り付ける。舞い上がる血。広場の一部分に血の水溜りが出来て行く。チェーンソーも赤く染まる。
「ぐッあぁッ……!」
「メタルメカ……! 後、少しだから……!」
「ぜ、全然、効かねぇ……」
無理をしたのは一目瞭然だろうな。斬られた胸から大量の血が流れ出す。思いっきり喰らわなかったから死なないで済んだが、このままだと出血多量で死んでしまう。その前に死ぬほど痛い。意識が飛びそうだ。
「メタルメカ!」
「よ、よ…しっ……!」
ケイレイトが大隊攻撃機フォボスに手をかざす。その時、頭部の穴が光る。強力なレーザー光線を撃とうとしているらしい。さすが、「一個大隊を一度に相手することができる軍用兵器」だな。
飛ぶ光り輝くレーザー光線と猛烈な風魔法。僅かにケイレイトの風魔法の方が早かった。それが勝負を行方を左右した。
「喰らえッ!」
全ての魔力を使い、今までの風魔法よりも更に強力な風魔法を放つ。その威力はとても高く、全く持ち上がらなかった大隊攻撃機フォボスの体が浮き上がる。
レーザー光線は狙いがズレ、パーク内に飛んでいき、観覧車に直撃する。観覧車は凄まじい音を上げながら砕け、一瞬で崩壊する(なんてヤツだ)。
「これで、終わりだ!」
俺は最後の力を振り絞ってバッグを投げる。投げた先は浮き上がった大隊攻撃機フォボスの真下。数秒の間浮き上がっていた大隊攻撃機フォボスは下に落ちる。そして、バッグを踏み潰した。その瞬間、地面を割り壊すような爆音。大隊攻撃機フォボスの下から炎と煙が上がり、また浮き上がる。
あのバッグには大量のハンドボムや弾薬などといった爆発物が大量に詰め込んであった。僅かに浮きあった大隊攻撃機フォボスは炎上しながらまた地面に叩きつけられた。しばらくの間、動いていたが、やがて力を失い、その場に倒れた。
「やった!」
「こ、これでっ、脱出できるな……!」
俺はケイレイトの力を借りてなんとか立ち上がる。そして、出入り口に向かって歩き出そうとした瞬間だった。新手の敵が現れたのは――!
◆大隊攻撃機フォボス
◇国際政府特殊軍が所有する攻撃型軍用兵器。
◇一度に一個大隊を相手にすることが出来る。
◇開発・製造メーカーは実は財閥連合。




