残党の村⑨
時間はそれほど、かからなかった。ハイドンはすぐにデュマから遠ざかった。
「デュマさん、もしかして喉が痛くないですか?」
デュマは驚いた。当たっていたのである。確かに今朝から喉の調子がおかしかった。
「図星ですね。もう一ついきましょう。お腹が空いているでしょう。それも極度に」
「当たっている……」
確かにさっきからデュマの空腹は頂点に達していた。しかし、どうして分かったのだろうか。
ハイドンは不気味な笑みを浮かべると、さらに追い打ちをかけた。
「肉が食べたいと思っているでしょう」
「なんでそんなことまでわかったんだ?」
「だから言っただろう。ハイドンの人相見は絶対に当たるのだよ」
バルザックは、にやにやしていた。
「ははは、肉は適当ですよ。なんとなくそう思っただけです。でも、その前の二つは当たっていると断言できます」
声も出ないデュマだった。人相見なんて大したことないと今まで思っていたが、その考えが間違っていたことを、この場で証明させられた。
「デュマ、ハイドンの人相見は俺が太鼓判を押すほどだ。信じろよ」
「おう。信じる、信じるよ……」
「大げさな奴だ。ところで、ハイドン。お前はこんな所で、何をしていたんだ?地図を見ていたと言っていたけど」
「本当に地図を見ていただけです。これからどこに行こうか迷っていたのです。そういうバルザック殿こそ、ここで何をしているのですか?あなたはクルアン王国で将軍をしていると耳にしていたはずです。どうして敵国であるレストリウス王国にいるのですか?」
バルザックとデュマは、顔を見合わせた。二人はしばしの間、目で会話をした。やがてこの男なら言っても大丈夫だろう、とお互い結論を出した。
バルザックはこれまでの経緯を詳細に語った。
聞いている間、ハイドンはまったく質問しなかった。ただ、黙って耳を傾けているだけだった。
「俺から話すことは以上だ。何か尋ねたいことはあるか?」
ハイドンは首を横に振った。
「納得してくれたのなら結構だ。ならば今度はこっちから質問する。お前は今まで何をしていた。俺の屋敷を叩き出された後、闇商人になったという噂は耳にしていたが……」
「分かりました。話しましょう」
今度はハイドンから語り出した。




