ロウマのいなくなった後④
この手紙をもらった日は、自分の誕生日だった。なぜ誕生日に神木まで行かなければならないのか当時のナナーは意味が分からなかった。
結局、腹が立ったので行かなかった。
もう一度、手紙に目を向けた。書かれている字を読むだけで、自然と神木まで足を運びそうだった。
しかし、ロウマが神木で何をしようとしたのか見当がつかなかった。
ふと、机上のオルゴールに目を向けた。ロウマが別れ際に渡したものである。
ナナーは、はっとした。もしかしたら、彼は毎年自分にプレゼントを渡すために、神木まで呼んでいたのではないだろうか。
あり得る話だった。だとしたら、毎年それを断っていた自分は、とんでもないことをしていたことになる。ロウマの心をひどく傷付けていたはずだ。
ナナーは体が震えていることに気付いた。なぜ自分は震えているのだろうか。
ロウマがいなくなったからだろううか。そんなことはなかった。あんな男いなくなって、清々しているはずだった。それなのに震えている。
そもそも自分がロウマを嫌っていた理由はなんだろうか。頭の中で思い返してみたが、答えは出なかった。
考えるな、考えるなと自分に言い聞かせることにしたかったが無駄だった。余計考えてしまう。
手と頬が触れた瞬間、驚愕した。
涙である。目に触れて再度確認すると、確かに流している。なぜ自分は、涙を流しているのだろうか。
ナナーの頭の中に、去り際のロウマのセリフがよぎった。
「本当の涙は嬉しい時に流すもの」
だが違う。これは嬉しいから流しているのではない。悲しいから流しているものなのだ。
だけど自分は、どうして悲しんでいるのだろうか。
少し気持を落ち着けるために、ベッドに横たわったナナーだったが、ドアをノックする音で飛び起きた。
涙をぬぐったナナーは、急いでドアを開けた。
父のクロスだった。
「ナナー、いいかな?」
「はい、お父様」
ナナーは部屋にクロスを招いた。クロスがナナーの部屋に入るのは、数年振りだった。
クロスは何かを渡した。
手紙だった。
「右宰相からだ。中身は婚約の破棄と謝罪だ。婚約破棄の原因は、病気と記してあった」
「病気?」
ナナーは首をかしげた。自分の手紙に、そのようなことは一字一句も記してなかったはずだった。なのに、なぜ父の手紙には記していたのだろうか。




