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ロウマのいなくなった後②

 王宮はいつも通りの朝を迎えるはずだったが、今日は違った。


 レストリウス王国の国王ラジム二世は、手紙を読んでいた。ロウマが自分にあてた手紙だった。内容は今後の政事方針についてだった。


 右宰相としての期間はたったの二年だったくせに、偉そうに今後の政事方針かとラジム二世は苦笑した。


 だが、形式的でロウマらしかった。


「これが余にあてたものか?」


「左様です」


 キールは答えた。仮面を付けているため、表情は分からないが、声の感じから悲しんでいるとラジム二世は察した。


「お前への手紙はあるのか?」


「ございます。お読みになりますか?」


「いや、お前のものだ。余が読むのは間違っている。大事に持っていろ」


「ありがとうございます」


「ところで、この手紙にある今後の政事方針としては、右宰相の役職はしばらくの間、空席にすることになっているが、異存は無いな?」


「微塵もありません」


「ほう、なぜだ?」


「私とロウマでは力量に差があります。私では力不足です」


「昔のお前だったら、絶対に右宰相の座に就こうとしただろうな」


「そうかもしれません。いえ、確実にそうしたでしょう」


 キールは一礼すると、王宮から姿を消した。彼は今日も調練があった。


 ラジム二世は深い溜息をついた。これからどうすればいいのか、本当に考えなければいけない。


 側近はロウマにシャニス、キール、ゴルドー、グレイス、その他数名の廷臣であるが、その中で最も優れているのがロウマだった。


 ロウマがいなくなると、それまでの体制が崩れてしまう。彼は去る前にそれぞれの部署にも、今後の方針を書いた冊子を送ったそうだが、果たしてそれに記してあるやり方が、いつまで持つだろうか。


 それに、ロウマのいない隙をねらって攻めて来る国が出るかもしれない。東方のクルアン王国が進攻する可能性は大きかった。


 あの国とは父王の時代から絶縁状態である。


 財政の悪化した国など、相手にしても無駄な資金を要求されるだけであるというのが父王の考えだった。


 確かに父王の考えは間違っていない。結局、クルアン王国は現在、南方のパルテノス王国に資金を要求していた。


 パルテノス王国は資金をしっかりと提供していた。一体何を考えているのか分からない国である。

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