グレイス⑦
「ゴートは現在、何をしている?」
「クルアン王国で孤児院の院長をしています。セイウンはそこで育ったようです」
「孤児院の院長か……善人にでもなったつもりか?」
「さあ、そこまでは……」
「まあいい。ゴートについては、今は放っておこう。とりあえずセイウンの反乱軍の面々を聞いておく」
「他はクルアン王国で騎士として働いていたバルザック=ドミムジーとデュマ、ガストーがいます」
「奴らとセイウンの接点はなんだ?」
「練兵場で意気投合した仲だそうです」
「そうか。だが、意気投合した程度で、わざわざ反乱にまで加担する必要はないだろう。そいつらがセイウンに同行した理由は調査したか」
アラリアはしばらくの間、セイウンがクルアン王国で受けた仕打ちについて詳細に報告して、バルザック達がセイウンを守るために同行したのを説明した。
聞き終わったラジム二世は納得したらしく、首を縦に振っていた。
「バルザック達のことも、セイウンがクルアン王国を出た理由も分かった。他にはまだいるのか?」
「南方のパルテノス王国の富豪の息子でセングンという男がいます」
「そんなに遠くからも反乱に加担しているのか?」
「はい。セイウンに元々、目をつけていたらしく反乱の立案者も彼のようです」
「まだいるか?」
「セイウンの妻もいます」
「奴は妻帯者なのか?」
「つい最近、結婚したみたいです」
「セイウンは何歳だ?」
「十七歳です」
セイウンの年齢を聞いた途端、グレイスが冷ややかに笑った。
「あの程度の小僧が、もう結婚か。やれやれ、結婚した女が可哀そうだな」
「おっさん、俺は逆にうらやましいよ。俺は十九にもなるのに、彼女さえいないんだぞ。あんな奴でも好きになってくれる女がいるんだな。うらやましいぜ」
「貴様の場合、女が寄らないのは頭の悪さが原因だ」
「おっさん、俺、そのこと結構気にしているのだけど……」
「それは悪かったな」
それを聞くと、キールは吹き出してしまった。
ブランカも気色の悪い声を出して笑った。
シャニスは笑うのを耐えているのか、顔をむずむずとさせていた。
さっきまで殺伐としていた空気が、この二人の会話で一気になごんだ。