グレイス③
あさましい父だとゴルドーは思った。戦にしか興味がなく、家族を顧みない奴なんて父ではなかった。母も同じだ。息子が特殊能力者だからといって忌み嫌う。そんな子供じみた考えでしか行動できないなんて、息子として恥ずかしかった。
自分は絶対に父母のようにはならない。この先結婚することがあっても、父母の徹は踏まない。ゴルドーはずっと心に誓っていた。
グレイスとゴルドーは、王宮に向けて歩き出した。二人とも速足の癖があるらしく、歩くたびにかかとを引きずる音がしていた。
「おっさん、俺達は勝てるだろうか?」
「また質問か?」
「ああ。ちょっと不安になってな」
「なぜだ?」
「ロウマがいなくなってから、仕事の量が半端じゃなくなったから気付いたよ。あいつは一人で大変なことをしていたのだと」
「今頃気付いても遅い。あの人がどれほどの気持で、働いていたのか理解を示してあげることができなかったお前達には重い責任がある」
「達」と言うところから、おそらくシャニスもキールも入っているのだろう。そうだった。自分達は常にロウマに頼りすぎていた。
昔から側にはいつも彼がいてくれて、なんとかしてくれた。ゴルドー達にとってそれが何よりも頼もしかったことだろうか。
だが、「頼もしさ」はいつしか、とんでもない「甘え」に変わっていた。あいつさえいれば大丈夫。
愚かな考えを自分達は抱いていたのだ。ゴルドーはうつむいた。
うつむきながらも、歩くことはやめなかった。
すまない。
ゴルドーは心中で素直に謝った。