表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/177

女の戦い⑧

「よくできているだろう。その義手は、ルミネ姉さんが作成したものだよ」


「ルミネが?」


 ロウマがルミネに目をやると、ルミネは屈託の無い笑顔を向けた。


「ルミネ姉さんは、昔から手先が器用だから、こういうのはお手の物だ。早速だが、はめてみろよ」


「どうやって、はめるのだ?」


「姉さん、手伝ってやってくれ」


「いいよ。ロウマさん、義手を私にください」


 言われるがまま、ロウマは義手をルミネに差し出した。


 ルミネは義手を受け取ると、ロウマの斬られて無くなった左腕の切断面に押し当てた。一瞬、ひんやりとした感覚がロウマを襲ったが、すぐに失せた。


「はい、これでいいですよ」


 ルミネが言った。


 義手に目を向けると、完全に切断面にくっついていた。くっつけた痕跡する残ってなかった。


「これは……」


 試しにロウマは、義手を動かしてみた。


 動いた。


 動いたのである。本物の腕と変わらなかった。まるで義手が切断面から生えてきたようだった。


「一体、どういう仕組みになっているんだ?」


「駄目です、ロウマさん。それは教えることができません。私だけが知っている特別な製造法ですので」


 ロウマはロバートに目を向けた。


生憎あいにくだが、俺も知らない。昔から姉さんは不思議なものを作るのが得意なんだよ。とにかく、その製造法は誰も知らない。たとえ家族であっても教えないよ」


「いいじゃない、ロバート。自分だけが知っているのも気分がいいわよ」


 ロウマは苦笑した。この屋敷に来てからは色々な人々に驚かされてしまった。


 温和であるが威厳に満ちた長女のライナ、ロウマに苦手意識を持たせているディナ、元気満点のイメール、ロウマの病気の進行を一時的であるが止めているレイラ、不思議な義手を与えてくれたルミネ、自分を救ってくれたロバート、使用人のピルトン。


 極め付けは「勝手」に弟子入り志願をしたばかりか、「勝手」に結婚まで企んでいるシャリー。


 実に面白くもあり、恐ろしくもある人達だった。こんな人達がこれから付いて来てくれるとは、自分は幸せ者だった。


「ありがとう、ルミネ」


「いえいえ、お構いなく。また体の一部を失ったら相談してください。すぐに作りますから」


「何回も切断はごめんだ」


 本当にやりかねないと思いロウマは身震いした。明日はレストリウス王国に出発しなければならない。ここで過ごすのも今日が最後だった。


 楽しいこともあったし、辛いこともあった。けれども、自分の人生の中では一番楽しい日々だったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ