表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/177

客人⑤

「そんなある日のこと、新入りとして来た女がいた。それがミリアン殿だった。クリスト殿は早速、ミリアン殿に挨拶代わりのスカートめくりを一発おみまいした」


「うわあ……人として最低ですね」


 エレンがセイウンの方を見ながら、ぽつりと呟いた。


「なんで俺を見るの?」


 尋ねたが、エレンにあっさりと無視された。


「普通の女はそこで悲鳴を上げるのだが、その日は違った。ミリアン殿は、クリスト殿の顔面に拳を一発、入れ込んだ」


「素晴らしいことです、院長。私としては拳一発どころか、骨の二、三本は折ってもよかったと思います」


 エレンが、にこやかな表情で拳を握っていた。


 横にいるセイウンは、ぞっとした。今度自分に同じことをしたら、そういう目にあわせるという意思を送られている感じがした。


「クリスト殿はその場に昏倒してしまい、しばらくして、起き上がったのだが突然とんでもないことを言い出したのだ」


「なんて言ったのですか、院長?」


「『ほれた』だよ、エレン」


「馬鹿を通り越して、ただのアホですね。本当に誰かとそっくりですよ」


「おい、エレン。その『誰か』って、俺のことか?」


「さあ、どうかしら。想像に任せるわ」


 エレンは、そっぽを向いてしまった。


「確かに、ただのアホだ」


 ゴートも言った。


「しかし、アホだが強かった。また頭領としてもよくできていた」


 急に語気を変えた。クリストという存在がいかに大きかったか伝わる迫力だった。


 セイウンとエレンは、一瞬だったが、別人のようなゴートの雰囲気に呑まれた。


「まあ色々紆余曲折はあったが、その後クリスト殿とミリアン殿は結婚したというわけだ。めでたし、めでたし。そして、セイウンが生まれたのだ」


「そうですか……」


 なんだかあまり聞きたくない両親の話だったと、セイウンは思った。


「その後クリスト殿は負けて、ここが落城する際に、わしにお前を預けた」


「俺はそのまま、院長のもとで育った。けれど、父さんに呼ばれて、この城に来た」


「……らしいな。セングン殿から経緯は伺ったよ。人生とは分からぬものだ。まさか、息子のお前まで、ここに来るとはな」


 ゴートは溜息をついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ